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闘病履歴14
助けてと真華は呻いた。
真っ黒い手の平に向かって闇の底まで落ちて行く。
夢が落下して回転しながら落ちて行く。
悪夢だ。
恐怖感しかない。
真っ黒い落下そのものとなり、真華は自分の真っ黒いだけの死をじっと見詰めている。
憑依された死のイメージが凝縮して行き、コンクリートのように固まり、悲鳴を上げる。
死の底の黒い静寂の中、真華はもがき、うめき声を上げた。
うなされている自分の高熱が、真華の身体をわしづかみにする。
その真っ黒い手が憎悪の声を上げる。
「死ね」
真華は呻いた。
そしてそのうめき声が電話の鳴る音に変わり、真華は瞼を開いた。
震えている手で電話を耳に当てる。
「マカロン、どうした?!」
拓郎君の声にすがるように真華が呻いた。
「…助けて」




