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闘病履歴138
ねえもう一度遠吠え聞かせてよと、子供は言った。
凱旋するようにMの無意識に入った四人は、各々歓喜をMの夢に託し形造た。
Mの心が喜びに満たされて行く。
そんなMの心をどこからか覗くような感じで子供の笑い声が上がった。
聞き耳を立てて黒が呻く。
「うん?」
黒の声に呼応するかのように笑い声がもう一度上がった。
四人の歓喜が戸惑いに変わる。
白が言った。
「何、この子供の声、敵なの、それとも味方?」
化身の術を解いた生き霊が首を捻り言った。
「分から…ない」
生き霊の声に答えるように子供が言った。
「僕ひとりぼっちで寂しいんだ。犬の遠吠えもう一度やってよ?」
第三の目が尋ねる。
「君は誰、どこから来たの?」
姿の見えない子供が答える。
「そんな事どうでもいいじゃないか。ねえ、ねえ、犬の遠吠え、もう一度聞かせてよ。お願いだから」
子供の登場にMの心は戸惑い一色となり、喜びは消えて失せて行った。




