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闘病履歴122
苦肉の策だねと拓郎君は言った。
生き霊は全身黒ずくめで目というのが殆ど無く、Mや真華の波長を感じ取り、盲目的に点から点へと移動しているに過ぎない。
だから視覚の訓練は無意味なものと言える。
その生き霊に冥界での移動を全て委ねている分身達は言わずもがなの状態だ。
黒曰く。
「緑がかった感じしか見えないし、喋る事も出来ず、ろくすっぽ身体を動かす事が出来ないのだから、訓練以前の問題だよな」
お手上げの状態のまま拓郎君と真華は善後策を話し合う。
拓郎君が言う。
「地雷を回避出来ないのならば、せめて地雷を踏まないように移動コースを変える事は出来ないのかな?」
真華が答える。
「点から点への移動を盲目的にしているだけなのだから、コース変更は無理だと思うけれど」
拓郎君が頷き言う。
「つまりいつも地雷原を移動しているのは間違いない事実なのだから、その愚かさを消去する意味で、点から点への線を念じて消すのは無理かな?」
真華が苦笑いして言う。
「ワープしろって言うの?」
拓郎君が苦虫を潰したごとく顔付きをして答えた。
「まあ、苦肉の策だね」




