闘病履歴10
侵入され息を呑む真華。
空気が変わったのを真華は感じ取った。
背筋がゾクリとする。
閉まっているドアを抜け、黒い存在は重くのしかかる感じで真華の体に入り込んだ。
真華は急速に胸が重苦しくなり、身体が小刻みに震え出したのを感じ取り、咄嗟に息を吐き出すのと同時に口笛を吹いた。
だが呼吸するのが苦しく、肩にのしかかって来る重苦しさは変わらない。
真華は震えながら深呼吸して、入り込んだ存在の何たるかを探りに掛かる。
瞼を閉ざし、その存在を心の目で凝視し、全体のイメージが脳裡に浮かぶのをじっと待つ。
真っ黒く忌まわしいだけの存在。
それを感じ取り、真華は胸と丹田に手を当てて、口笛混じりの呼吸法を繰り返す。
白真華は身体の変調を感知していち早く黒真華の陰に隠れ、事の成り行きを見詰めている。
黒真華と自己同一性障害を統括制御する第三者の意識が対応策を講じるべく、対話をなして行く。
黒真華が言う。
「これは心霊の侵入だから、お前の領分ではないか。何とかしろ」
第三者の目が答える。
「結構パワフルだな。これは女の生き霊かもしれないな」
「分析などいい。早く追い出せ」
第三者の目が息をつき言った。
「拓郎に相談してみよう」




