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老後転生~異世界でわしが最強なのじゃ!~  作者: 空地 大乃
第四章 アルカトライズ編
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第九十四話 将軍と猫

「いやぁ、それにしても本当に久し振りだね。君に再会出来て私は本当に嬉しいよ」


 仲間たちと別れた後、レイド将軍と共にミャウが案内された部屋。将軍が一人で過ごすには十分すぎるほど広く、見た目にも高級そうな調度品が数多く配置されてある。


 ミャウは部屋に入って右側にあるテーブルの前に座っていた。木製で厚みがあり、表面は艶やかな赤銅色で覆われている。


 座る椅子も、凝った意匠が施されており、クッションは敷かれていないが、柔らかみのある材質が心地よさそうにも思える。


 だがミャウは、椅子に座ったまま、レイド将軍の言葉には特に何も返さず、俯き気味にテーブルの盤面のみを眺めていた。

 将軍は奥の食器棚近くで何か作業している。

 恐らくは、先ほど仲間の前で話していた、紅茶と焼き菓子の準備をすすめているのだろう。


 しばらくは静かな時間が流れた。僅かに何かを沸かす音だけが部屋をこだましている。


 魔道具の発達しているこの世界では、お湯を沸かすのもそう難しい話ではない。


 時が流れ、音が止むと、カチャカチャと音が鳴り響き、将軍がミャウの方に振り返った。


「うん。出来た。これはいい匂いだ。中々美味しそうだと思わないかい?」


 レイド将軍が奥から問うように声を発し、そしてトレイにティーポットとカップ、焼き菓子を盛りつけた皿を乗せ、ゆっくりと歩いてくる。


「お待たせ」


 一言述べ、カップに紅茶を注ぎ、そしてミャウに顔を向けニッコリと微笑んだ。


「さぁどうぞ。召し上がれ」


 レイド将軍はそういって――テーブルから焼き菓子とカップを床に移した。そして直立したまま、椅子に座るミャウを見下ろす。


 ミャウはそれを見て瞳を大きく身広げた。どこか呆然としてるような、それでいて諦めにも近いような、そんな表情をしている。


「どうした? 折角私が用意したんだ。まさかいらないとは言わないだろう?」


 どこか強制力をもったその声に、ミャウの両耳が小刻みに震えている。唇もだ。だが、彼女はそのまま口を開き。


「頂きます……」


 そう言って床のソレを手で掴もうとする、が――。


「違うだろうミャウ。君は、猫なんだから。そんな人間のような振る舞いをしてはいけないよ。ほら、以前に教えただろ? 食べ方を。忘れてしまったのかい?」


 レイド将軍が発したのは、静かで――冷たい声だった。


「さぁ、どうするか。やってみろ」


 ミャウは何も語らず、無言で椅子から腰をずらし、まるで這いつくばるような姿勢で、床に身体を移した。


 そして――。


 ピチャ、ピチャ――ピチャ、ピチャ――。

 

 ティーカップに顔を近づけ、そして舌で中身を掬い取る。


「そうだ。やれば出来るじゃないか! そうだよ。君は猫なんだから。そうやって。舌を使って。器用に飲むんだよ。ふふっ、そうさ、それでこそ私のミャウだ!」


 将軍は、ニヤリと嫌らしく口角を吊り上げる。


「さぁ、焼き菓子も食べ給え。ミャウの好きなこれを。さぁ!」


 レイド将軍の命に従うように。ミャウはカップから更に口を移し、盛られてる焼き菓子に齧り付く。

 勿論。手などつかわず。獣のように。口だけで。そしてガツガツと、咀嚼する。


「いいぞミャウ。私のミャウ。可愛い。可愛い。ミャウ!」


 恍惚とした表情を浮かべ、半ば興奮したような口調で言う。

 そしてミャウの髪を撫で、そのままその耳に手を添え、キュッと強く握りしめた。


「ヒャン!」


 声を上げ、力が抜けたかのように身体が傾く。

 ガシャン――とその弾みにカップが倒れ。中身が零れ床を汚した。


「ミャウ。いけない子だ。こんなに床を汚してしまって。さぁ、綺麗にしなさい」


「ひゃ、りゃめ、みゅみ、みゅみを……」


「ダメだミャウ。このままだ。このままの状態で綺麗にするんだ」


 レイド将軍の口調は、まるで躾のようだ。


「……ひゃ、い」


 身体を震わせながら、床に顔を近づけ、舌で綺麗になるよう掃除していく。


「くくっ。最高だ! 最高だミャウ! なぁ? 私がどれだけ寂しかったかわかるかい? 全く。わざわざ君のためにあんな法案まで作ったというのに。強引にねじ込んだんだぞ? この耳もミャウも! 全ては私の物だったのに! あの、王子が余計な事を……おかげで私は楽しみが一つ減った! お前をここまで調教したのは、私だというのに!」


 耳を握る力が強くなる。それに呼応するようにミャウも目を剥き、口を開け、舌を伸ばし、そして……涎が床に滴り落ちる。


「また汚したね。悪い子だ。これはお仕置きが必要だね。さぁ、脱ぎなさい。君は猫なんだから。そもそも人間の服なんか着ててはいけないよ」


 ミャウには返す言葉が無かった。ただその代わり。身体だけが怯えた小動物のようにプルプルと震え続けている。


「どうした? 逆らうのか? いいのかい? 君の仲間に、その全てを話しても?」


 耳元での囁きに、ミャウの身体は更に大きくビクリと跳ねた。


「は、い」


「違うよミャウ。返事はにゃ~かにゃんか。そう、もう人語も駄目だ。これは罰なんだから。もう鳴き声でしか、ゆるさないよ。さぁ、わかったら、もう一度」


「にゃ、にゃ~」


 涙が一つ頬を伝い。それをみて楽しそうに将軍がわらう。表皮を剥がすミャウを見ながら、レイドは腰を落とし、涙で濡れた頬を舌で拭った。


「……ミャウは相変わらず成長しないね。でも、そこがいいんだ。この未成熟なまま、年齢を重ねる君の姿が、私にはとてもソソられる」


 耳をかみ、僅かな膨らみをみせるソレを掴み、小さな果実を指でつまむ。


「ヒャウン!」


「違うだろ? 猫だ君は。猫なんだ」


「ニャ、ウ、ン……」


「そうだ! かわいいよミャウ! やはり君は素質がある! なのに! なのに冒険者などと! 混血か何か知らないが! お目付け役などと! しかも自由をだと? お前を拾ってここまでしたのは私だというのに!」


「ニャッ!」


 その膨らみに指が強く食い込み、思わずミャウの声が上擦った。


「おっとごめんよ。痛かったかい? 思わず力が入ってしまったよ。でも君だって悪いんだよ。君は精々私のメイド程度に収まっておけばよかったんだ。そのために色々奉公だってさせただろ? 本当は心苦しかったけれど、私の出世は君のためにもなった筈なんだ。それなのに! それなのに!」


 ミャウの瞳は焦点が合わなくなり、ただ天井だけを眺め、荒い息を吐き続けていた。


「まぁいい――」


 レイド将軍は一言そう述べ、ミャウに笑顔を向ける。一見すると人優しそうな。それでいてとても、薄汚れた笑顔を。


「今日はたっぷりと時間がある。私もあの件は部下に任せて、わざわざミャウの為に時間を取ったんだ」


 ミャウの顎を、スリスリと擦る。そして――。


「ひゃ、ん、みゃ、ん」


 口の中に指を突っ込み。そして舌を弄んだ。ゆっくりと、じっくりと、ネットリと――。


「そうだよ。君にまた思い出させて上げよう。ミャウが一体どれだけ従順だったかを。君は私には逆らえないんだという事を」


 指を放し、口から抜き。透明なソレの絡みついた部分を、己の口にふくみ、そしてぺろぺろと舐めまわす。


「行儀の悪い子には躾が必要だ。行儀の悪い子にはお仕置きも必要だ。そして、行儀の悪い子には……調教も必要なんだ」


 レイド将軍が立ち上がり、そして何かを下ろす音が静かな部屋に広がった。


「さぁミャウ。ミルクの時間だ。たんとお飲み――」


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