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第四十話 ギルドに戻って……

 ケネデル公卿とその後、後日の出発時間から大体の予定を確認し一行は再び馬車に揺られ、ギルドへと戻ってきた。


「じゃあ、俺たちは明日の為に英気を養うぜ。あばよ」

 ギルドに到着するなり、ムカイとその仲間二人は皆より一足先にその場を後にした。


「ねえテンラク。ちょっと疑問なんだけど。確か今回の護衛依頼に参加するのは五人パーティで三組だったよね? 私達とマンサのパーティはいいとして、彼等は三人しかいなかったんだけど――」


 ミャウは率直な質問を彼にぶつける。

 するとテンラクは、あぁ、と一言発した後。


「彼等の内、二人は事情があって一足先にもう話は終わってたんだ。だけど間違いなく彼等も五人パーティで挑んでいるんだよ」


「ふ~ん……て事はその二人がレベル20の条件をみたすってことなのね……で、どんな人物なの?」


 ミャウが更に質問を重ねると、テンラクは、う~ん、と顎をさすり。


「まぁ可もなく不可もなくといった感じかな。君たちの個性が強すぎだからちょうどいいかもね」


「うむ。確かにみな個性的じゃからのう。おかげでわしみたいな無個性の人間は存在感が薄いわい」


 足元で発せられたゼンカイの発言に、二人は呆れたように目尻に皺を残す。

 全くもって自分を理解できていない爺さんである。


「それじゃあ、ちょっと私も片付けなきゃいけない事があるから」

 そう言ってテンラクは二階へと上っていった。


 ミャウは、その上手くはぐらかされたような対応に、腑に落ちないといった感情がその表情に表れる。


 だがあまり深く考えても仕方ないと思ったのか、表情を取り直し、一旦カウンターへと顔を向けた。


「それでどうだった?」

 するとアネゴがミャウに訪ねてくる。

 今回の依頼の事は彼女もそれなりに気になっているのだろう。


「う~ん。とりあえずかなりの強行日程ね。明日も朝早くからの出発だし。ただ、そのくせ肝心の護衛相手の情報は詳しく教えてくれなかったんだけど」


「ふ~ん。やっぱそうだったんだね」


「テンラクは相手の情報は聞いてるのかな?」

 ミャウは何か知らないか? といった面持ちでアネゴに質問する。


「どうかな? 少なくともその辺の情報は私にはさっぱりだしね」

 右手を差し上げながら、アネゴは応えた。

 表情から察するに嘘は付いていないようである。


「せめてスリーサイズぐらい教えてくれてもいいのにのう」


「まぁもし聞いていたとしても、秘密厳守ならテンラクは絶対に情報を漏らしたりはしないだろうけどね。あいついい加減そうに見えてそのへんはしっかりしてるから」


「そっか。そうだよねぇ」


「もしくは年とか、芸能人で言ったら誰に似てるとか、そういったことを知っておくとこっちのテンションも上がるというものなのにのう」


「お爺ちゃんちょっと黙って」

「死ねくそ爺ぃ」


 一度はスルーしたにも関わらずしつこくどうでもいい事を述べ続ける爺さんに、二人の容赦のない言葉が浴びせかけられた。


「なんだその言い草は! ゼンカイ様は少しでも場の空気を和ませようと、あえてどうでもいいような事を口にしているのだ。そんな事もわからないのかい」


 ミルクが吠えるが、そんな事わかるわけがない。


「わしはわりと真剣に考えていたのじゃがのう。スタイルとか顔とか」


「いつでも真剣なゼンカイ様……素敵です!」


「……なんだかミルクちゃんの今後が心配になるわね」

 アネゴがため息を吐くように言った。


「ノンストップ! オールオーケーSA!」

 

 突如、彼等の間に割って入るは、マンサとその出っ歯である。


「何なのよ突然?」

 ミャウが眉を顰め問う。


「マイハニー。ミーは今回の護衛の相手のことが判ってしまったのさ。存分に称えてくれたまえ! あぁミーのブレインがホラーナイト!」


「あんた本当に言ってることがだんだん難解になっていくわね」

 ミャウは呆れたように目を細めた。


「で、何が判ったのじゃ? カップサイズとかかのう?」


 ゼンカイはとかくおっぱいには目がないのだ。その証拠にこの間にもちらちらとアネゴとミルクのおっぱいを見比べている。


「イッツパーフェクト! ミーのシックスセンスによると、ガードプリンセスの正体は正しく! 王国のプリンセスだと思うのさぁ!」


「な! なんじゃとぉおおぉおお!」

 ゼンカイはオーバーリアクションで驚いてみせた。だが恐らく彼の言葉を理解していない。


 しかしそんなゼンカイの態度とは裏腹に他の皆の視線は冷たかった。

 思わずギルド内に冬が到来したのかと思わせるほどの冷ややかさだ。


「び、ビークール――一体どうしたんだいオールユーザー?」


「マンサに皆呆れてるのよ」

 プリキアが膠もなく言う。


「まぁそれぐらいはだいたい予想が付くしね」


「そうでないとわざわざ公卿が出てきたりしないだろうが」


 ミャウとアネゴがため息混じりに交互に述べる。


「まぁ詳細はわからないにしても、王族の関係者であることぐらいは僕にも判るさ」


「リーダー」「僕達も」「なんとなく」「そうかなとは」「思って」「いたのさぁ~」


「この二人ほんとう声が綺麗よね」

 アネゴが関心したようにいった。


「アネゴ! 俺もきっと護衛相手は王女とかじゃないかと思ってたんだ! でも俺の本命はアネゴだぜ! さぁおっぱ、ぐぼらぁあ!」


 何の脈絡もなく湧いて出てきたマゾンをアネゴが思いっきり床に叩きつけた。

 だが殴られたにも関わらず彼のその顔は幸せそうである。


「しかし王女様というのは、ミルクちゃんやアネゴちゃんよりおっぱいは大きいのかのう?」


「なぁこのクソ爺ぃ天国に送り返してもいいか?」

「馬鹿言うないいわけないだろ」

 アネゴの言葉を言下にミルクが否定する。


「てかお爺ちゃんいい加減胸からはなれなよ」


「そう言ってミャウちゃんは悲しそうな顔を見せた。きっと胸が平たいことを気にしているのだろう」

「気にしてないわよ!」


 ムキになったようにミャウが怒鳴った。

 しかし気にすることはない。ミャウにはそのかわいらしい獣耳があるではないか。


「ところで今日はこれからどうするんだい?」

 一旦話しの区切りもついたところで、ヒカルがミャウに尋ねた。


「そうね。とりあえずお爺ちゃんの戦利品とか売って装備も揃えないと――」


「あ、あのぅ」


 ふと可愛らしい声が皆の下に届けられる。


「かわいいのうめんこういのう。抱きしめていいかの?」

「抱きしめ――え!?」

 

 声を掛けてきたプリキアが、軽く慄く。


「あ、このお爺ちゃんの事は気にしないで」

とミャウが口にしたと同時にミルクが、ゼンカイ様にはあたしが――と抱きつき、鈍い音が聞こえてきた。


 だが、もはやいつものことなのでミャウは無視し、何かあったかな? と問いなおす。


「は、はい。あの折角明日一緒になるわけですから皆さんの能力とか詳しくしっておきたいなって――」


 少々戸惑いの表情を残しながらも、少女はミャウに考えを述べた。


 その言葉にミャウは顎に指を添え上目を見せた後。


「確かにそうね。一緒に行動するわけだし。あぁでもだったらあいつらにも聞いておくべきだったかな」


 ミャウが言うあいつらとは、先に返ったムカイ達のことであろう。

 だが、そこでプリキアはニッコリと微笑み、

「大丈夫です。あの方達の事は私が皆様が来る前にきいてますので」

と応えた。中々抜け目のない少女である。


 そしてプリキアは先にギルドを後にしたムカイ達の情報を教えてくれた。

 上に行けば能力の閲覧も可能なのだが一冊一冊閲覧するよりは聞いたほうが早い。


 プリキアの話によると、三人の内一人は名をムカイ・ナイスといいジョブはレベル10のモンクとのことである。


 彼等の内、ハゲの方は名をハゲールチャビンといい、ジョブはアーチャーのレベル12らしい。


 最後に痩せてる方の男だが、ガリガ・リリガクという名でメイジのレベル13との事であった。


 ミャウもゼンカイも三人とは一度戦っているものの、ムカイ以外の名前は初めて知った。

 確か彼等三人は最初に戦った時、ムカイが一番下みたいな事をいっていたが確かにレベルでいったらムカイが一番低いようだ。

 しかしモンクはジョブとしては中々使える分類らしい。


「そういえばあの三人レベル10近くまでジョブについてなかったそうですよ。勿体無いですよね」


 プリミアが三人に対して言葉を付け加えると、それを聞いたミャウが一人納得したように頷いた。

 最初に戦った時は全く手応えがなかった事を思い出したようだ。

 きっとあの頃はまだジョブについていなかったのだろう。


「プリミアちゃんもやっぱり後二人の事は知らないのよね?」


「あ、はい。私達が彼等にあった時も二人はいなかったので……」


 しゅんとした表情でプリキアが瞳を伏せる。

 その顔にミャウは、

「そ、そんな別に気にするような事じゃないんだから!」

と慌てたように両手を振った。


「そうじゃよ。いないものは知りようがないからのう。じゃがそれでもまだ悲しいというならわしの胸に――」

「お爺ちゃんは黙ってなさい」


 咎めるように述べるミャウに、いけずじゃのう、とゼンカイが眉を落とす。

 そのやりとりをみていたプリキアがくすくす笑いを見せた。


 その姿に、ミャウは安心したように胸を撫で下ろしていた。

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