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第四話 いまそこにある獣耳

「酷いのぉ――」

 頭に出来た瘤を擦りながらゼンカイが言った。だが正直自業自得であろう。


「で? お爺ちゃんこれからどうする気なの? とりあえず私は王都に向かうつもりなんだけど……」


「王都!」

 ゼンカイの背筋がシャキーンと伸びる。しかし一々大袈裟な反応を示す爺さんである。


「王都というとあれかいのぉ! ギルドとか! 冒険者ギルドとかあるのかいのぉ?」


 ゼンカイは妙にこういった事に詳しい。生きていた頃は中々のゲーマーだったのだろう。 相当遣りこんでたに違いない。


「えぇあるわよ冒険者ギルド。てかやってきた大抵の人はそこに喰いつくわね」


「勿論じゃ! 冒険者はニホンジンなら誰もが夢見る職業じゃからのう」


 流石に誰もとは言い過ぎである。


「ふ~ん。じゃあ一緒に来る?」

「勿論じゃ!」


 ゼンカイは勿論即答であるが、散々失礼な事をされたのにミャウの心は広い。


「じゃあいこっか。この街道を北に進んでいけば王都につけるし」


「そうじゃのう、しかしのう、ところであれはあのままでいいのかのぅ?」

 

 爺さん積み重なっている悪漢達を指さし、そんな事を聞く。


 するとミャウは両手を広げながら、

「あぁ。別にいいわよ。未遂で済んでるし」


「未遂じゃと? ふむ。ところであいつらはそもそも何なのじゃ?」


 爺さんは意外にも彼等の素性が気になるようだ。

 一応は死闘を演じた相手だけに、このまま捨て置くのは忍びないと思ったのかもしれない。


「あぁ。多分あいつ等最近この辺りに出没してる、獣耳触り隊の連中よ」


「ほぉ、獣麒麟盗賊隊とは随分物騒な名前じゃのう」

「ぜんぜん違うわよ。一体どんな耳してるの? 獣・耳・触・り・隊」


 ミャウはゼンカイの耳元で声を大にする。


「獣耳触り隊?」


 爺さんが呆けた顔で確認した。

 

「そう獣耳触り隊」


 ミャウの再度の発言に、爺さんは腕を組み小首を傾げた。色々と疑問が湧いたからだ。


「その触り隊と言うのは一体何をしてる奴等なのじゃ?」


「うん? 名前の通りよ。通りがかりの獣耳を持った女の子の前に現れては、耳をムニムニと触りまくる集団」


「……触るだけかのう?」


「まぁそうね」


 ゼンカイはそっと重ねられた彼等の姿を覗き見た。

 元の顔がわからないぐらいボコボコにされ、服もどうやったかは判らないが焼け焦げていてかなり無残な状況だ。


 爺さんは思う。彼等の行為がただ獣耳を触りたいだけだとしたら、ちょっと酷いことをしたかな、と。


「ちょっとやり過ぎではないかのう?」


 て、思っていた。本当に思っていた。

 てっきりそんな事はどうでも良く自分の事しか考えていない爺さんと思いきや、そんな殊勝な気持ちもしっかり持ちあわせていたようだ。疑って申し訳ない。


「そんな事は無いと思うわよ」


「そうかのぉ……うむぅ、まぁそう言うならそうなんじゃろうのう」


 しかし意外とあっさり引き下がる辺りは流石である。


「じゃあお爺ちゃんそろそろ行くわよ」


「うむ。ところでのうお爺ちゃんというのはどうにも他人行儀じゃのう、じゃから今度からわしの事はゼンたんと呼んでくれていいからのぅ。わしもミャウたんと呼ばせてもらうから」


「呼ばないし呼ばんでいい」


「冷たいのう。いけずじゃのう」


 そんな会話をしながら二人は街道を歩き始めた。





「疲れたのぉ。王都はまだかのう?」


「いや。まだ30分ぐらいしか経ってないんだけど……」

 

 街道を歩き始めゼンカイが弱音を吐き始めた。しかしゼンカイのステータスでは体力値が馬鹿みたいに高かった事から、只の我儘であることがばればれである。


「もう無理なのじゃー! HPも1じゃー!」


「お爺ちゃんちょっとステータスって言ってみて」


「【ステータス】」


 ゼンカイは中々素直だったのだ。


Name :Seiryoku Zenkai

Level:1

sex :OldMan

Age :70

Job :Jobless

HP  :100%

MP  :100%

EXP : 40%

Con :Good


STR :F

VIT :A

AGI :G

DEX :L

INT :Z-

REL :X

LUK :C+

HCA :L+

MEN :V

CHA :B+


 因みに日本語と言わなかったので、通常の画面である。


「Z-……ぷっ」


「あぁ! 今また笑ったじゃろ!」


「き、気のせいよ。それよりHP全然減って無いでしょ。嘘だってばればれなんだから早く歩く」


 ミャウの言葉にゼンカイはしょぼくれた様子を示しながらも、とぼとぼと歩き出す。


 因みにどっちにしてもHPは疲れたからと言って減るもんではないらしい。


「ところでミャウちゃんや」


「なに?」


 30分一緒に歩いている間に、取り敢えずゼンカイはちゃん付けで呼ぶぐらいの仲には慣れたようだ。


「せめて疲れを癒やす為、その耳を触らせてくれんかのう? もにょもにょしたくてたまらんのじゃ」


「だ~め」


「なんでじゃ! それぐらいいいじゃろ! 減るもんじゃあるまいし! のう、のう」

 

 ゼンカイは一度や二度断られてもくじけない。 

 しかしその不屈な闘士はもっと別なことにむけれないものか。


「駄目。て言うよりやめておいた方がいいわよ」


 ゼンカイを振り向きながらミャウが意味深な事を述べる。


「それは一体どういう事かのう?」


「うんとね、この王国では【獣耳触れずの刑】というのがあってね。だから恋人同士でも無い限り、安易に獣耳を持った人に触るとそれだけで処罰されるのよ」


 何て事だ。そんな刑がよもやあるとはゼンカイも落胆の色が隠せない。

 しかし、ならばさっきの男たちがアレだけの目に遭ったのも理解できるというものか。


「そうじゃったのか……で、もし触ったらどうなるのかのぅ?」

「即効死刑ね」


 重かった! まさかそこまで罪が重いとは! これは驚きである。

 ゼンカイは頭を垂れ何かを考えているようだ。


 それもそうだろう。

 こんな理不尽な刑などあってたまるものか。 

 今そこにある獣耳を触ることさえ許されないとは、きっとこの国の王は相当な暴君に違いない。


 ならばゼンカイはどうする? そう今こそ立ち上がりそして――。


「それじゃあ仕方ないのぉ……」


 なんて事をゼンカイが思うはずが無かった。

 そう国家権力に逆らう等と無茶な振る舞い、この男がするはずがない。

 そんな事ができるぐらいなら、生前総理大臣のイスぐらい狙っていただろう。


「ところで王都までは後どれぐらいで付くんじゃ?」

 再び歩みを進めながらゼンカイが尋ねる。


「そうねぇ。お爺ちゃんの脚だと後2時間ぐらいかな」


「2時間!」


 ゼンカイがすっとんきょんな声を上げた。そして悲しい表情を覗かせながら。


「面倒じゃのう……のう? 何か街までひとっ飛びで行けるようなアイテムとか魔法は無いのかのぅ?」


 等と少しでも楽出来る方法を模索する。


「あるけどその魔法は私使えないし。移動が出来る転移石というのもあるけど、結構貴重だからね。悪いけど使わないわ。2時間ぐらい大した事ないんだし」


 2時間の距離をぐらいと言ってしまう辺りが彼女が冒険者たる故か。

 

「仕方がないのぉ。しかしあれじゃのう。ただ歩いているのも退屈じゃのう。何かこう魔物が現れたりしないもんかのぅ」


 ゼンカイの発言にミャウは呆れたように息を吐き出し眉根を寄せる。

 

「あのね。こんな明るい内から事件が起きるわけ無いじゃない」


 言われてみれば確かにという感じである。そう考えてみれはこの王国はかなり平和なのかも知れない。 


 なかにはさっきのような簾中もいるのかもしれないが、罪が重いとはいえやってることは痴漢などと変わらない。


 勿論それも犯罪には違いないが、それならば平和と言われるニホンでも似たような簾中はいただろう。


 何はともあれ暫くは特に何も起ること無く、更に1時間程二人は歩き続けたのであった。

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