第一九七話 知力で勝負
一行は結局試練を受けないことには先に進むのが困難であることを悟り、長老のいう知識の試練に挑む事となった。
そして一度は村を追い出されそうになったが、結局再び村の中に戻ることとなり、そして敷地の中心に招かれ並び立つ。
目の前には儀礼用の杖に持ち替えた長老の姿。今までと同じ木製だがご神木を彫って作られたものらしく、先端には竜の顔、中程には女神のような姿が意匠されている。
どうやら女神は精霊神の姿のようだ。
そして長老以外のエルフは、エリンとエロフも含め村の全員が一行を囲うように並び、試練の様子を興味ありげに眺めている。
長老曰く彼らは見届け人らしい。
「それじゃあ準備はいいかな?」
長老が真剣な表情で確認してくる。それに全員で大きく頷いた。
「皆さん頑張ってください!」
「ふん。あいつらにこの試練を乗り越えれると思わないがな」
エリンが一向に応援の言葉を、エロフは相変わらずの憎まれ口を叩いてくる。
そして他のエルフも興味津々といった具合に試練を受ける者達を見つめ続けている中、長老から更に問いかけ。
「さてこの試練、相談は構わぬが答えしものは一人決めてもらう。さて、誰が答える?」
え、え~と、とミャウが顎に指をそえ考えてると。
「ミャウでいいんじゃない?」「だねミャウちゃんがいいよ」
「異議なし。めんどいし」
「ここはミャウちゃんが適任じゃな!」
「なんか皆面倒だから押し付けてるわけじゃないよね?」
猫耳をピクピクさせながら、疑いの目を向ける。そしてヒカルは間違いなく面倒くさがっている。
「で、どうする?」
再度の確認。ミャウは嘆息を一つ付き。
「仕方ないわね。私が答えるわ」
ミャウがヤレヤレといった具合に返すと、うむ、と長老がひとつ頷き。
「では! これより知識の試練を始める!」
長老の気合の入った声に周りのエルフも喚声をあげた。かなり盛り上がってきた。
元々娯楽の少なそうな村である。
こういったちょっとしたイベントでも、エルフの退屈しのぎに丁度良いのかもしれない。
そして長老がミャウの顔をじっと見据え、そして一旦考えこむように目を瞑り――直後、刮目するかの如く大きく目を見開き話す。
「ドキドキ勇者クイ~~~~~~ズ!」
「……え?」
ミャウ戸惑う。
「そもさん!」
「え? え?」
ミャウ更に戸惑う。
「ミャウちゃんや、そこはせっぱと返さんといかんぞ」
隣のゼンカイが腕を組み、諭すように述べた。ドヤ顔が腹ただしい。
「すまんのう長老さん。ミャウちゃんはわか、くもないのじゃがそういう事には疎いのじゃ」
「張っ倒すぞジジィ」
ミャウは年齢の事には敏感な年頃なのである。
「うむ仕方ないか、それでは改めて」
「ミャウちゃん今度はちゃんと返すのじゃぞ」
「わ、わかったわよ」
「それではいくぞ!」
再び真剣な顔を見せる長老。しかしミャウの顔は呆れたような戸惑い顔である。
「ドキドキ勇者クイ~~~~~~ズ!」
「そこからやり直しかよ!」
早速ミャウの突っ込みが炸裂した。
「そもはん!」
「せ、せっぱ!」
流石に今度はちゃんと返せたようである。
「それでは問題! 勇者ヒロシといえば! 常に彼のそばを離れず付き従う、メイド服の可愛らしい女の子が有名ですが、彼女の名前は」
「ピンポーンじゃ!」
「はい、お爺ちゃん早かった!」
「えぇええぇええぇえぇえ!」
驚きすぎて爪先を浮かし踵だけで体重を支え斜めにピン立ちするミャウ。耳もピーンと立ってるぞ!
「答えは――セーラちゃんじゃ!」
「ぶぶぅう~~~~!」
「えぇええぇえええぇええ!」
なんと不正解! これにはミャウも再度びっくりだ!
「そ、そんな! 間違うだなんて!」
「ふん! 所詮やつらはこんなものさ」
エリンが両拳を握りしめ悔しそうにし、エロフはバカにするような目を皆に向けた。
「な! 納得いかんのじゃ! わしは間違ってないはずなのじゃ!」
「残念だが間違い。問題にはまだ続きがあったのです。いやしかし! 残念無念!」
「異議あり!」「いまのは無効だよ!」
ミャウが肩を落とし、なんともいえない顔をしてる中、ウンジュとウンシルが異を唱える。
「ふん見苦しいぞ。今のは明らかに間違いだ。いいわけできんぞ!」
「い~や! 大体答えるのは」「ミャウちゃんという約束だったはず!」「なのにお爺ちゃんの答えを聞くのは!」「明らかにおかしい!」
双子の進言に長老、むぅ、とひとつ唸り。
「確かにそういわれるとそうであったな。判った! では再度チャンスをあげよう!」
「むぅ運のいい連中だ」
「やった! ミャウさん今度こそ頑張ってください!」
「え? え、えぇ……」
なんとか助かったミャウであったが、戸惑いは膨れるばかりである。
「むぅ、やはりここはフィフティー・フィフティーじゃったか」
「お爺ちゃん、ややこしくなるからちょっと黙ってて」
「それでは気を取り直して再度出題する。しかしミャウちゃんや、別に早押し問題でもないのだからしっかり最後まで聞くようにな」
「わ、判ったわよ」
釈然としない様子を見せながらもミャウが真剣に耳を傾ける。
「それでは問題! 勇者ヒロシといえば! 常に彼のそばを離れず付き従うメイド服の可愛らしいプリティーキューティーな女の子が有名ですが」「なんか少し問題変わってない?」
しかし長老は構わず問題を続けた。
「彼女の名前は――セーラちゃん、ですが、さてそんな彼女のキュートな口癖はなに?」
キュートの部分だけやけに気合を入れ、長老の問題がついに解き放たれた!
「…………い、いい意味で?」
「…………ファイナルダンサー?」
「え!? ふ、ファイナルダンサー!」
「踊るのか」「踊るのだ」
「踊るのじゃな」
「てか最後の踊る人って何だよ」
そんな突っ込みが続く中、長老の暫しの溜め――そして。
「う~~~~ん――正解!」
「やったのじゃ! 流石ミャウちゃんじゃ~~~~!」
ぴょんぴょん飛び跳ねて嬉しそうに述べるゼンカイだが、ミャウはなんとも微妙な面持ちで、ありがとう、と返す。
「それでは第二問!」
「まだあるのかよ!」
「そのヒロシの従者であるスーパービューティーなセーラちゃんの、それすら可愛らしいと思えるちょっぴり困った欠点は何!」
「…………名前を間違える事」
「…………ファイナルランサー?」
「は? え、ファイナルランサー!」
「槍なのか」「槍なのだ」
「やり直しじゃな」
「てか、だから最後の槍騎兵って何だよ」
「う~~~~~~ん! 正解!」
「やったのじゃ! さすがミャ」
「はいはいわかったわかった」
ミャウはあまり嬉しそうじゃなかったのだった。
「ラストクエスチョン!」
「もう早くしてよ」
「さて泣いても笑っても最後の問題です!」
長老はやけにノリノリなのである。
「アレの従者にしておくには勿体無いほどの、スタイル抜群スーパーミラクルボディのメイドであるセーラちゃんの! 好きな食べ物はなに?」
「クレープ」
ミャウあっさり答える。
「…………それでOKかな?」
「ファイナルなんとかじゃないのかよ!」
「外してきたのか」「外してきたのだ」
「中々やるのう」
「お腹へった」
そんな思い思いの言葉がささやかれる中。長老がギロリと一行をみやり!
「う~~~~~~~~ん! 正解!」
「やったのじゃ~~ミャウちゃん試練突破なのじゃ~~~~!」
「……」
「やりました流石ですミャウ様!」
「むぅ! よもやあの問題まで解けるとは!」
そして周りのエルフたちも賞賛の拍手を送り、素晴らしい! と賛美する。
「よもやここまで勇者ヒロシ様の事を知っておられるとは。どうやら皆様の言葉に嘘偽りはなかったようですな」
「てか、問題全部セーラの事ばかりじゃないのよぉおおぉ~~~~!」
ミャウ吠える。そしてヒロシは寧ろ途中からかなりぞんざいな扱いになってたのであった。
とはいえ、これにて無事試練を乗り越えた一行であったわけだが――
「もう行ってしまわれるのですか?」
無事試練が終わり、神殿まで案内して貰えると聞いた一行は、早速村を出て神殿に向かう旨を伝え出入り口付近に集まっていた。
「はい。あまり時間もないですし少し急がないと」
「むぅ確かにヒロシ様の事を考えるとそれも致し方ありませんか。精霊神にはどうしてもあっておく必要がありますでしょうし」
試練後に聞いた話ではあったが、どうやらマスタードラゴンの住む山には、精霊神の封印も施されているようなのであった。
なので結局は一度神殿に足を運ばなければいけなかったのである。
「ふん。まぁヒロシ様の為ならば仕方ない。案内してやるよ」
「うぅ本当は私も一緒にいきたかったのに……」
ちなみに案内役はエロフが務める事となった。しかしエリンに関してはまだ小さいので同道は許されず。
しかし皆もこればっかりは仕方ないと宥め、また来るから、と笑顔で伝える。
「さて、それじゃあ出発すると――」
そしてエロフといよいよ神殿に向かおうとしたその時であった。辺りが急にざわめき出し。
「ちょ、長老、さ、ま、大変、で、ござい、ま、す――」
突如一人のエルフが、村の中に倒れこむようにしながら入ってきたのであった――




