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老後転生~異世界でわしが最強なのじゃ!~  作者: 空地 大乃
第五章 ゼンカイの入れ歯編
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第一三六話 其々の目指す道

 レイドの一件も片が付き、一行は城で豪勢な食事を振る舞われ、広々とした寝室に通されふかふかのベッドで心地良い眠りについた。


 暫くはアルカトライズへの旅が続き、まともに眠れない日も多かった為か、次の日の朝は皆久しぶりに心地よい朝を迎えることが出来たという。


 ラオン王子殿下の言っていたとおり、その日の内に一行は、功績を湛える為と式典の間に集められた。


 豪華で踏み心地の良い赤絨毯の上に全員が居並ぶ。そこには一足先に来ていたテンラクとスガモンの姿があった。

 彼らは他の大臣と共に赤絨毯のラインに沿った外側に並び立っている。

 

 功績を讃えられるメンバーの中にはケネデル侯爵とジン・ロンドの姿もあった。

 一度は爵位や騎士の位を失いそうになっていた二人も、今回の件で汚名返上となり、今の位を保つことが出来そうである。


 一行の正面は階段になっており、その上った先に、この世界を創ったとされる創造神の像が設置されている。

 そして像の正面にはアマクダリ国王の姿があり、王を挟むようにして左右にラオン王子殿下とエルミール王女の姿もある。


アマクダリ王は此度の功績を称える言葉を皆へと贈った。

 それはとてもありがたい言葉であろうが、どこか淡々としているようにも感じられた。


 王は最愛の娘とされるエルミール王女が助けだされた事にも、感謝の念を唱え、賛美したが、その言葉にも喜びという感情が抜け落ちている気さえした。


 とは言え、思えば王は王女が攫われた直後にも、あまり感情的になっている様子は感じられなかった。


 それは第三者からみればとても冷たく感じられるかもしれないが、一国の王として考えれば、どんな時にも冷静沈着に物事を考えられる姿勢は、評価されるべき点なのであろう。


「お前たちが妾を助けてくれたという事じゃな。正直よく覚えてはいないのじゃが、よくやったと褒めてつかわすのじゃ!」


 エルミール王女に関してはすっかり以前の調子を取り戻していた。

 ただ、これに関してはどうやら攫われている間の出来事は綺麗さっぱり失念してしまっているらしいとの事であった。


 勇者ヒロシが連れ去られた事も記憶にないらしい。

 しかし、これらの記憶は寧ろ忘れてしまっていたほうが、王女のためだろうと、あまり詳しくは教えないという話で決着が付いたようだ。


 特にエビスが行った所為は聞くに堪えないものである。

 罪人となり処罰を待つだけの身となったレイドは、かつての恨みを晴らすため、エビスに殺さない程度に甚振るよう頼んでいたようなのだ。


 この栄典の儀に呼ばれる前にその話を聞いた一行は、レイドとエビスに重い処罰が下されることを心から願ったという。





 式も終盤にさしかかり、一行は王子と王女の手により勲章を授かった。

 王室から授かるソレは冒険者として考えればこれほど名誉な事はない。

 勿論、王国騎士であるジンやケネデル公爵からしても同じであろう。


 ただ唯一ブルームだけは、こんな勲章よりは金になるものの方がえぇのう、等と密かに呟き、ミャウに咎められたものだが。


 そして――。


「最後に何か望むものはあるか?」


 そう王から問いかけられた。これは功績を讃えられた一人一人に問われたものであったのだが、それに先ずミャウが先陣を切った。


「はい! アマクダリ王お願いがあります――」





「全くミャウちゃんの言った願いには、私もちょっと驚いたよ」


「ほっほ。じゃがのう、らしいといえばらしいかのう」


 式典の間での出来事を思い出したように、テンラクとスガモンが口にし笑い出す。

 

 それにミャウは顔を紅くそめて返す。


 一行は栄典の儀を終え、ラオン王子殿下やエルミール王女と挨拶を済ませた後、ギルドへと戻ってきていた。

 そして話はミャウが願い出た報酬の件にまで及んだのだが。


「私もみてみたかったわね。一体その時みんなどんな顔してたのかを」


 アネゴがカウンターの中から言い、白い歯を覗かせる。


「それにしてもや。全く望む報酬が入れ歯やなんて、わい、腹抱えて笑いそうになったで。堪えるのに必死やったんや」


 そう言いながら、遠慮無くケタケタと笑い出すブルームを、むぅ、とした表情でミャウが睨めつける。


「悪かったわね。でもこっちこそびっくりよ。あんたのあのとんでもない願いにね」


 呆れたように腕を組んで発すその言葉に、ほうか? とキョトンとした顔を見せる。


「わ、私も、び、びっくり、し、しました」


「あぁ確かにね。アルカトライズを王国の管理下に置かず今までどおりの扱いで頼むなんてねぇ」


 テンラクも苦笑いを覗かせ言う。


「やけどなぁ、ラオン王子殿下も面倒な事いってくれたでほんま」


 ブルームはそう愚痴るように言いながら、ホウキ頭を擦った。

 だが、それも仕方ないかなと一行は思った。


 ブルームの願いでた件は結果的に全てを受け入れられる事はなかった。

 これは今回の騒動を考えれば致し方無い事とも言えるであろう。


 だが、そこでラオン王子殿下が自らの意見を発した。

 それも前に一度見せた真剣な口調で。


「ブルーム・ヘッド。私はもし貴方がアルカトライズの責任者として責務を全うして頂けるというなら、アルカトライズの街の自治権を認めても良いと考えている」


 そのような事をアマクダリ王のすぐ側で言い放ったのである。

 これには勿論参列していた大臣達もざわめき始め、栄光を称える儀であることも忘れ意を唱えるものもいた程である。


 結果的にこの話は当然、すぐに判断が下される事はなかったが、帰り際ラオン王子殿下はブルームの意志を確認し、彼もまたそれが実現されるならとしぶしぶ了承した。


「全く。わいは上に立つなんて柄やないんやけどな」


「てか、そもそもその許可が下りるかもわかんないだろうって」


 ミルクが鋭いツッコミを入れる。


「まぁでも、その事はケネデル公爵も協力すると言ってたしねぇ」


「でも、自治権を手にしたとしても流石にあんたもこれまで通りってわけにはいかないんじゃない?」


「うん? いやそんな事はないで。今までどおりわいの考えは裏は裏や」


 はぁ!? とミャウとミルクも素っ頓狂な声を上げる。


「まぁ言うても暗殺ギルドやら物騒なもんは当然無くすけどのう。ただわいが世話になったおやっさんはいつもこういうとった、俺達は裏の人間だ、だけど世の中は表裏一体、表もあれば裏もあるんだ。だからこそ、このアルカトライズは裏でしかいきられない人間の受け皿にしてやりたい、とのう。勿論裏には裏でルールは必要や。今はもうおらんくなったけど、わいはおっさんの意志は受け継ぎたいと思うとるんや」


「しかし仮にもギルドのマスターの前でよくそんな事が言えたもんじゃのう」


 スガモンは顎鬚を擦りながらいう。ただその顔はほころんでいて、どこか楽しげであった。


「当然や。わいは何も隠し立てする気はあらへん。こうなったら堂々と裏の道を極めてやるつもりやしのう」


 そう言ってケラケラと笑うブルームに、ミャウとミルクは呆れたと言わんばかりに両手を広げた。


「さて、ほなわいはもうそろそろいくかのう」


「ひゃんひゃ、ひゅうひぇひひゃうのひゃい?」


「あぁ。街のことも気になるしのう。街の再建についても皆と話し合わなあかんし、それにダークエルフとの再交渉やらヨイちゃんの願いやった神殿建設に必要な場所の検討やら色々やることも山積みや」

 

 そう言って高笑いするブルーム。隣に立つヨイが、な、なんか、もうしわけないです! とすまなそうに両目を瞑り言うが。


「何言ってんのよ。ヨイちゃんだって報酬は貰う権利はあるんだからね。別に謝る必要もないんだし」

 

 ミャウが悪戯っ子のような笑みを浮かべ、ヨイに近づき。


「この際だからしっかりブルームに甘えときなさい」

と耳打ちした。


 耳まで真っ赤にさせるヨイを、ミャウは可愛らしいマスコットを愛でるような目で見た。

 今にも抱きつきそうな勢いである。


 因みにヨイがお願いしたのはブルームの言うように、祈りを捧げることの出来る場所の設置である。


「アルカトライズに神殿とはのう」


 等と言っていたブルームではあるが、それほど否定的ではなく、そういうのもあっていいかなという雰囲気を醸し出していた。


 ただヨイは神殿とまでは言っていなかったので、少々面食らった様子ではあるが、結果的には善処して貰える形になったのである。


「み、皆さん、い、色々、お、お世話になりました」


 ある程度話が落ち着いてきたところで、ヨイが何度も頭を下げながら別れの言葉を述べてきた。


「まぁなんやったら、いつでも遊びにきてもえぇで。但しぎょうさん銭は持ってきてな」


 ブルームの言葉に、全くもう、とため息をつくミャウだが。


「まぁその内いくわよ。それにあの娘の事も気になるしね」


 ミャウが眉を引き締め彼に告げると、ブルームも若干真顔を見せ。


「マオちゃんの事やろ? まぁそっちはわいの方でも色々調べてみるわ。そういうのは得意分野やからのう」


 ミャウが、頼んだわね、と告げると、

「まぁ期待せんとまっとき」

と応え、二人はギルドを後にした。


「……さて、それじゃあ、あたしもタンショウを迎えにいくとするかな。頼むよマスター」


 スガモンを振り返りミルクが右手を振り上げた。

 それに顎鬚を擦り、そうじゃのう、と述べ。


「まぁタンショウの奴もわしの修行で随分力を上げとる。ダンジョン攻略にも耐えられるじゃろう」


「でも、やっぱミルクも行っちゃうんだね」


 ミャウが少しだけ寂しそうに告げる。


 するとミルクがゼンカイに近づき。


「あぁ――ゼンカイ様。本来ならあたしはずっと貴方様のそばにお仕いしたいのですが……今回の件で自分の未熟さを知りました――ですから、タンショウとアレを手に入れるため、あたしは行きます」


 瞳に涙を溜めるミルクは、まるで今生の別れを惜しむようでもあるが。


「ひゃいひゅうひょうひゃよ。ひゃうひゃん、ひゃひゅひゃひゅんひゅてひょひゅ、ひょっとひょとひょひぇる、ひゃひゅひゅひゅひゃんひゃひゃひゃ、ひゃっひょひょひゅひゅひゃひょひょ、ひょう!」


「ゼンカイ様! 私感動でございます! 旅立つ前にそのようなお言葉! ミルクは、ミルクは必ずお約束します! 今度戻ってくるときはゼンカイ様を守れる力を手にして戻ると!」


 言ってミャウがゼンカイをキツくキツく抱きしめた。当然だが、その時点でゼンカイの意識はどこか遠いところに飛んでいってしまう。


「てか、今のをよく理解できたね」

 カウンターからアネゴが、呆れたように目を細め突っ込んだ。


「それじゃあまたな」


 ミルクが言い、ミャウが頷く。そして固く握手し、スガモンと一緒にミルクがその場を後にした。


「それにしてもバッカスシリーズとは、また偉いものを探しにいくものだねミルクちゃん」


「えぇ。でもそれがミルクの望んだ報酬だしね」


 バッカスシリーズとは、酒の神とされるバッカスが愛用したとされる装備品である。

 酒の関連する装備といえばミルクもスクナビシリーズを愛用していたが、バッカスの装備はそれよりも更に数ランク上。


 ただ、それだけにソレの隠されたダンジョンは難易度が高く、バッカスの装備の眠るとされる最深部まで辿りつけたものは、未だひとりとしていないらしい。


 そして今回ミルクの望んだ報酬はこのダンジョン攻略に向かう手続きを取ってほしいという内容であった。

 

 何せそのダンジョンはネンキン王国の隣国であるサントリ王国内にあり、冒険者といえど簡単に許可の出るものではない。

 

 ただ酒の輸入などで国交は築いているので、王直筆の紹介状を書いて貰う形で、融通を利かしてもらう運びとなったのである。


「でも、これでとりあえずはお爺ちゃんと二人ね」

 

 そう言ってゼンカイをみやる。

 するとゼンカイがパタパタと手を振り。


「ひゃひゅひょ、ひゃひゅよひゃひれひゃ!」


 何かをせがむように言ってくるその姿に、そうね、と返し。


「とりあえずお爺ちゃんの入れ歯作りに行きましょうか」


 そう言って、二人もまたギルドを後にし、王国から紹介を受けた義歯を扱う店舗に向かうのであった。


 


 


 


 



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