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老後転生~異世界でわしが最強なのじゃ!~  作者: 空地 大乃
第四章 アルカトライズ編
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第一一四話 計画

 マオと名付けられた幼女は、ニコニコと嬉しそうであった。

 これまで妙に気を使ったような喋り方が目立っており、見た目に反して子供らしさに欠ける感もあったが、コロコロと転がしたような笑顔でようやく女の子らしさが出てきたようにも感じられる。


「喜んでもらえたみたいで良かったわね」


 ミャウも釣られたように笑みを浮かべながら、誰にともなくそんな事を口にする。


「まぁそうやな」


「きっとマオちゃんも記憶が無くて不安だったと思うんでさぁ。だから名前が決まっただけでもやっぱり嬉しいものなんだと思いまっせ!」


 そう言ったキンコックも、岩が砕けたように破顔した表情をみせる。


「はい! とても嬉しいです。本当にありがとうございます」


 マオは改めて一行に頭を下げる。


「まぁ名前がついて喜んどるのはえぇけど、このままってわけにはいかんやろな」


 ブルームの発言に、ちょっと! とミャウが目を尖らせる。

 やっと明るくなっったマオの顔にも再び影が落ちた。


「なんや? 本当の事やろ。それをごまかしていてもしゃあないわ。まぁとは言え、今はそれにあまり構ってもられへんけどな」


 ブルームの発言に、今は? とミャウが首を傾げる。


「そうや。何せ――」

「はいはい。固っ苦しい話は一旦おいておいて、飯でもどうかな? 良い肉が入ったんだよぉ。腹ごしらえも大切だからね」


 皆の会話に割りこむように料理の乗った大皿がテーブルに置かれた。

 運んできたのは、つい今しがたまで、厨房で作業していた男である。


 更に全員分のライスも運ばれ其々の目の前に置かれていく。


「そうやな。確かに、森に入ってから碌なもの食べて無かったやろ? これからのためにも腹ごしらえは必要や。詳しい話は食ってからやな」


 ミャウはそのなんとも言えない口ぶりに、一瞬眉間に皺を寄せたが、盛りつけられた料理から流れてくる香ばしい匂いには勝てなかったようで。


「ま、まぁ仕方ないわね。先に食べちゃおうか」


 そう言って料理に目を向け、他の皆も其々小皿に食事を取り分けていく。


「はい。ゼンカイ様」


「おお、すまんのうミルクちゃん」


 ミルクがゼンカイに装った料理をちらりとミャウがみた。

 何かの唐揚げとハンバーグのようである。


「じゃあ、私もっと」


 言ってミャウも小皿に料理を取っていき、先ずは唐揚げに口を付けた。


「ふむ。ほう、これは柔らかくて脂も乗っておる。ジューシーでよい肉じゃのう」


 そう言ってゼンカイが顔をしわくちゃにして喜んだ。


「そやろ? しかし今日は【ラードラット】の肉とは奮発したもんやなぁ」


 ブルームの発言にミャウの指がピタッと止まる。


「ラー、ド、ラッ、……ト?」


 黒目が一気に広がり、猫耳もピンっと逆立った状態で、ミャウが尋ねた。


「うん? どないしたんや?」


「あ、の。ラットってあ、の? ネ、ズミ、の?」


「そや。脂のノリがよくてのう。この辺りじゃ高級食材じゃ」


 ミャウは口元を手で押さえ、顔も青ざめていく。


「なんや。おまん猫の癖にネズミが苦手なんか」


「そういう問題じゃないわよ! てかあんたデリカシーの欠片もないわね!」


ミャウが歯をむき出しに怒鳴るが、ブルームは肩を竦めて食事に戻る。


「全く……もうこのハンバーグだけでいいわよ」


「おう。マーブルワームのハンバーグやな。そっちもうまいで」


「…………もう私ご飯いらない」


 そう言ってミャウが皿から手を放した。


「ミャウちゃんや。食べてみると中々美味しいものじゃぞ」


「そうだぜミャウ。この唐揚げもすっげぇ旨い」


 パクパクとラットやワームの料理を口に運んでいく二人を、信じられないと言った顔でみやるミャウ。


 ちなみにマオもキンコックも美味しそうに料理を食べている。

 が、ミャウと同じように全く食が進んでいないのがもう一人。


「なんやヨイちゃん。食べへんのかい?」


「あ、い、いえ! わ、私は!」

 

 シドロモドロに応えるヨイ。見た目にも食は細そうであるが、ブルームの話で更に食欲をなくしてしまったのかもしれない。


「食わず嫌いはだめやで。ほれ」

 

 そこでブルーム。ラットの唐揚げを指で摘みヨイに近づけた。

 その動作にえ? 目を丸くさせるヨイ。


 だが――覚悟を決めたように喉を鳴らし……口を開けた。


「ん?」


 今ヨイは、親鳥からの餌を求める雛の如く、口を開けたまま瞼を閉じ何かを待ちわびている。


 その姿にブルームは弱ったような表情もみせるが、そのまま摘んでいた唐揚げをヨイの口に持っていく。

 

 すると彼女の小さな顎が閉じられ、唐揚げとブルームの指の第一関節あたりとを一緒に可愛らしい口に含んだ。

 ブルームはその口からゆっくりと指を抜き、その後ヨイが咀嚼する。


「どや? 旨いやろ?」


 瞼を開け、ブルームの姿をみた瞬間赤面し、顔を伏せる。そして、は、はい、お、美味しい、です、と照れくさそうに返事する。


 その二人の姿をどこがぽ~っとした表情でみている一行。


 そして直後ミルクが、あ、あたしも! ゼンカイ様! と、あ~ん、を求めゼンカイも嬉しそうにそれに従った。


 そんなやりとりを見ていたミャウは……テーブルに頬杖を付き、やってられないわ、といった半開きの目で、そっぽを向くのだった。





「ぷはぁ~食った食った。もう満腹や」


 言ってブルームが少し膨れた自分の腹を擦った。


「うむ。わしも満足したのじゃ」


 ゼンカイも腕を組み一人頷く。


「でもミャウは結局食べなかったけど大丈夫かい?」


 ミルクが尋ねるが、手を振って私は別に大丈夫だからとミャウが返す。


「そんなんで持たなくてもわいは知らんで」


 ブルームの言葉に、ミャウの耳がピクリと揺れた。そして眇めた顔でブルームをみやる。

 言外に匂う何かを感じたのだろう。


「しかしのう。腹が膨れたら眠くなったのう」

「あ、で、したらあたくしと!」

 

 ゼンカイの言葉に、ミルクが興奮したような口調で言いかけるが。


「別に寝るのは構わんがのう。今夜行動に出るからその覚悟だけは決めておいて欲しいで」


 覚悟? とゼンカイとミルクが同時に復唱する。


「やっぱりね。何かあると思ったのよ」


 と、コレはミャウの言葉。腕を組んでやれやれとブルームをみやる。


「まぁのう。だけども当然やで。あんさんらかて、ここに来た目的は忘れてないやろ?」


「え? えぇそりゃあねぇ」


「やろ? だったら今夜が一番のチャンスなんや。調べは付いとるしのう」


「あ、あの、ブ、ブルームさん、そ、それじゃあ」


 ヨイがローブの中から大きな瞳を向ける。


「あぁ。そうや。今夜エルミール王女救出作戦を決行や」


 その言葉に皆の表情が引き締まる。


「いよいよですな頭!」


 話を聞いていたキンコックも両の拳を握りしめ、どこか決意のような物を覗かせる。


「……もしかしてキンコックさんも一緒に行動するの?」

 

 その瞳を丸くさせ、ミャウが疑問を投げかけた。


「そや。ただ一緒ではないがのう。けんど後から三人は合流するで。今回の作戦のキーとなる奴らやからのう」


 腕を組みながら一行に説明し、そしてこじ開けた右目を光らせる。


 するとキンコックが興奮したように身体を震わせ。


「さぁ! これであのエビスの野郎もお終いでさぁ! 今夜のクーデターさえ成功すれば! ですよね頭!」


 キンコックの言葉に、あぁ、とブルームが返すが、ミャウの表情がみるみるうちに変わり、思いっきりテーブルを叩きつけながら立ち上がる。


「クーデ、て、 はぁああ!? 何よそれぇえぇ!?」


 そして、興奮したネコのように叫びあげ、目を剥いた。


 


 

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