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初めに竜があった  作者: 最黒福三
竜の時代
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蛇と蛙とトカゲの自己紹介

竜は3つの卵を産む。それらから蛇と蛙とトカゲが生まれた。





 3つの卵からそれぞれ蛇と蛙とトカゲが生まれた。



 竜は「どいつもこいつも俺よりもはるかに醜く、頭も悪そうだ」と内心思っていたが、それは表に出さずに竜は愛想よく子どもたちに話しかける。


「よく生まれてきてくれた、子どもたち。さあもっと近くにきて顔をみせてくれ。」


 竜は腕を広げて子どもたちを迎え入れようとした。

 まず真っ先にすりよってきたのはまん丸に太った蛙だった。


「パパ。僕はパパのもとに生まれてこれて本当によかったと思っているよ。」


「そうか、なかなか可愛いことを言うじゃないか。」


 亀は竜と蛙がじゃれあう光景を見て複雑な気持ちになった。

 自分は竜に子どもと認めてもらうためにあれだけ苦労したというのに…

 後から生まれてきたというだけであんなに得になるのなら、自分ももっと遅くに生まれてくればよかった、と亀は思った。




 次におずおずと擦り寄ってきたのはトカゲだった。

 トカゲも本当は竜とじゃれあいたかったが一番いいところを蛙が独占していたので近づくことすらできなかった。

 仕方なくトカゲは竜の近くに座って話しかけた。


「お父さん、この世に誕生させてくれたお父さんの恩に報いるため、私は一生懸命働きたいと思います。なんでも命令してください。」


「うむ、お前も嬉しいことを言ってくれる。是非俺のために働いてくれよ。」


 子ども2人に囲まれて竜はいい気分だった。

 なんだ、こんないい気分になるのだったら亀ももっと早く受け入れてやればよかったな

と竜は思った。

 亀は愛されない時間が長かったから、蛙のようにあざとく甘えてくることはなかったのである。





 竜は最後に一匹だけ自分の近くに来ずにあたりをうろうろしている蛇に話しかけた


「おい、蛇といったか。お前もこっちにこないか。」


 蛇は首だけこちらにぐりん向けてこう吐き捨てた。


「くだらないね。自分におべんちゃらを言ってくれる奴ばっか脇に集めてほくほくしている糞じじいのことなんか俺にはどうでもいいね。俺は俺で好きにやらせてもらう。あばよじいさん。せいぜい寝首をかかれないように気をつけるんだな。」


「な、な、な。」


 言うがはやいか蛇はものすごい勢いでどこかへ駆け去ってしまった。

 怒りの対象が見えなくなってからむしろ竜の怒りはめらめらとこみあげてきた。


「産んでやった父親に向かってなんだあの口の利き方は!この俺を虚仮にしやがって許さん!殺してやる、殺してやるぞ!」


 竜は蛙とトカゲを押しのけて翼をばっさばさはためかせて空を飛ぶ準備をした。

 荒い息を吐くたびに灼熱の炎が口から漏れる。

 勢いにまかせて腕を一振りすると巨大な岩が粉々に砕けて砂となる。

 竜の怒りのすさまじさに蛙はトカゲはがたがたと震えるばかりでどうすることもできないでいる。

 そんな怒りに我を忘れた竜に物怖じもせずに亀が近づきなだめる。

 竜も亀には一目置いているのでなんとか落ち着きを取り戻し亀の話を聞く態勢になる。


「まあ確かに蛇はかなり失礼なことを言いました。しかしだからといっていちいち怒っていたらお父さんの体力が持ちません。ここは亀にお任せを。きっと蛇を改心させ、ここに連れてきて謝らせてみせます。」


「うむ…確かによく考えてみれば子どものおいたのようなものだな。そんなのにいちいち怒ってはおられん。よしわかったこのことについては亀にまかせる。きっと奴をここに連れて来てみせろよ。」


「必ずや。」


 竜は蛇のことを亀にまかせるとまた元の通り座り込んでぐーぐー眠ってしまった。

 亀はそれを確認してから蛇を探すためにでかけていった。

 残された蛙とトカゲは竜が暴れて手がつけられなくなったらとりあえず亀に相談しようと心に刻み付けたのであった。

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