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初めに竜があった  作者: 最黒福三
トカゲの時代
68/78

クララは久しぶりに竜と会って話をする。自らの夢を嬉々として語る竜を前にして、自分がどうしたいとかということをクララは言えずにいた。





 トカゲ王の城の一室ではアタリとカンが向かい合って話をしていた。


「ふう…今回の調練は疲れたな。しかしその甲斐あってかなり兵たちを鍛えることに成功したぞ。カン、お前が中心になって兵を鍛えるようになってから見違えるように兵たちが強くなった。全くお前は自らが強いだけではなく、他者にその強さを伝える才能もあったのだな」


「いえ、私はまだまだ未熟者です。アタリさんが全体を見渡し、指揮をしてくれるからこそ兵は機敏に動くことができるのです。私など、少数の部隊と向き合って体の動かし方や心構えを教えることぐらいしかできません」


「それが凄いのさ…。まあいいさ。とにかく兵はあらかた強くした。もう戦いはいつ起きても問題ない。後はドロンさまの指示を待つのみさ。…ジジの奴は城にこもってでてきやしないからな。こっちから攻めていかないことには何も起きやしない。全くジジも腰抜けだ…」


 2匹はそんな風に笑いあいながら杯に注いだ水を飲み、皿に持った果実を食べた。

 部屋の置かれていたテーブルや椅子、壷や棚などは工房で作られたものの中でも最も出来の良いものであった。


 その時、部屋の扉がとんとんと叩かれた。

 立ち上がって応対しようとするカンを制し、アタリが自ら扉のところまで行った。

 誰か?ということを尋ねもせずにアタリはいきなり扉を開いて来訪者を迎えた。


「あんたは…」


 扉の前に立ち、ひとつ礼をしてから顔をあげたそのトカゲは、クララであった。



「まあ何もない部屋だが、くつろいでください」


 と、アタリが口を開く。

 丁重に迎え入れられたクララは椅子に座り、テーブルを挟んでアタリと向かい合っていた。

 クララが何も言わずにいるとカンがそっと立ち上がり、小声でアタリにこう言った。


「それでは、私はそろそろ失礼いたします…」


「ああ、すまないな。また調練で」


 小さく礼をして、カンはアタリの部屋を後にした。

 カンが出ていき、閉めた扉の方をしばらく見つめていてからゆっくりとアタリはクララの方を振り向いた。


「そういえばあんたとはいつか話をすると約束をしていたんだったな」


 杯に水を注ぎ、差し出しながらアタリが言った。

 クララは何も言わずにちびちびとその水を飲むばかりでなかなか口を開かなかった。

 仕方なくアタリが続いて話をした。


「祖父と知り合いだったということだが…あいにく俺は祖父のことはほとんど知らないんだ。私が卵から生まれる前に既に死んでしまったのでね。…父もあまり祖父の話はしてくれなかったからな…」


「あんた…母はどうしてるんだ?」


「もう死んだよ。苦労が絶えなかったからな…」


「…詳しく聞かせてもらえないか?お前の母のことを。ビンゴのことを」


「…あなたは私の祖父の友人だと以前言っていたな?父との面識はあったのか?」


「いや、ない。セイカが卵を生んだということすら知らなかったんだ。だから聞きたいんだ。あいつの子どもが一体どんな風に生きてきたのかということを…」


「…別に特に話すことはないさ。祖父母は卵を生んでから間もなく死んだ。それからその卵は墓から遠く離れた洞窟へ持ってこられ、そこで孵化した。そこから生まれたのが母であった…。母は毎日こき使われ、働かされた。ボロボロになって卵も生むこともできないぐらいにまで。…しかしある日空から光が降ってきて、あっというまに大地に草木が満ちた。母はそれを食べてなんとか体力を回復し、その変のトカゲと交尾して俺を生んだ…。特に珍しくもない、どこにでもある話さ。その後私は努力して自分の実力を認めてもらい、墓の中で重要な地位を占めるに至った。それが全てだ」


「セイカのことについては母から聞いたのか?」


「いや…。ドロンさんが教えてくれたよ。もちろん事情については理解し、納得したさ」


「…本当か?ドロンさんは自ら卵を引き取って墓の中で育ててもよかった…。その程度のことをする責任ぐらいは…」


 クララがそう言うとアタリは勢いよく平手でテーブルを叩き、大きく音を立てた。

 目はまっすぐにクララの顔を見据えていた。


「何が言いたいんだ?ドロンさんは出来る限りのことはしてくれたんだ!…それにドロンさんは私のことをとても目にかけてくれている。…あなたがどういうつもりなのかは知らないが、私はこれからも何があろうとドロンさんを支え続ける。ただそれだけだ」


「怒らせてしまったのなら謝るよ。…すまない。ただ…」


「ただ?」


「セイカが今も生きていたらどうする?」


 それを聞くとアタリは一瞬目を丸くさせた。

 しかしその後ですぐに吹き出し、大声をあげて笑い始めた。


「ははは!そんなことあるはずがないだろう。一体どれだけ昔のことだと思っているんだ?…まあ、仮に生きていたとしてもどうも思わないよ。顔も知らないしな。…それに事情はどうあれ一度は爺さんはドロンさんにたてついたんだ。その意味では油断のならないトカゲ、と言うこともできる。私はドロンさまの忠実な配下としてまず警戒するね。まあそれだけさ。特に何も言うことなんてないよ。…それにしてもそんなくだらない話を、一体どういう意図を持ってあなたはしているんだ?」


「意図なんてものはないんだ。…ただ話をしたかった。それだけさ」


「そうか。…しかしそれなら悪いが私は疲れているんだ。そろそろ休みたいので話はまた今度ということにしてもらってもいいかね?」


「ああ。すまなかったな。ではまた今度…」


 そう言ってクララは立ち上がり、アタリの部屋を後にした。

 クララは外から扉を閉める時に軽く礼をしたが、アタリはクララの方を見もせずにただ手に持っている空の杯をしげしげと眺めているばかりであった。





「トカゲ王」


 と、呼びかけられる声でトカゲ王は目を覚ました。

 工房でトカゲ達に混じって寝入っていたトカゲ王を起こしたのはドロンであった。

 周りを見渡すと、まだ他の工房のトカゲ達は寝入っている。

 トカゲ王は半分ぼやけた頭でドロンに訊ねた。


「どうしたんだ一体?何か起きたとでもいうのか?」


「いえ、そうではありません。ただ…」


「ただ?」


「お話したいことがありまして」



 ドロンは王を城の片隅の物寂しい廊下まで連れてきて、そこで止まった。

 流石に王も怪訝に思ってドロンに訊ねる。


「こんなところで立ち話をするのか…?まあ別に構わぬが、部屋なんてその辺にいくらでも…」


 そう言うトカゲ王をさえぎってドロンはただ木彫りの象が立てかけられているばかりの壁に向かって一歩歩み寄った。

 そして壁にかけられている象をひとひねりすると大きな音をたてて壁が動き、たちまちそこに巨大な扉が現れた。

 唖然とする王を尻目にドロンは部屋の扉を開け、中へ入るように促した。


 中の部屋は小ぢんまりとしている上に薄暗かった。

 ちょっとした棚と椅子が置かれていて、奥の方は暗闇で何があるのか見定めることはできなかった。

 トカゲ王はドロンが勧めた椅子のひとつに腰を下ろし、口を開いた。


「ドロンよ。こんなところに連れてきて一体なんの話だというのだ?…こんな場所があるなんて知らなかったぞ…」


「申し訳ございません。これからする話は誰にも聞かれたくないことでございますので…」


 声をひそめてドロンは言った。

 その只ならぬ様子を見て、普通の話ではないな、とトカゲ王も悟った。


「まあ…それならわかった。話を聞こう。なんだ?」


「ジジとの戦いのことについてございます。…俺はもうはっきりといいます。戦いになるのは確実なことだと思われます。…ジジの城に忍び込ませておいた者の報告によれば、奴は配下のトカゲ達を、その命も顧みずに徹底的に鍛えているとのことです。そしてものすごい強さの精鋭たちの兵を揃えて戦いに備えているとのことです。…その闘志、殺気は山をも砕き、川をも干上がらせるほどの物であるとの報告です…。この状態でトカゲ王が出向けばまず戦いになるのは確実です」


「それならばそれで仕方がないことさ。…できるだけ被害が出ないように応戦しつつ、なおも話し合いのきっかけを探る。それしかあるまい」


「…いえ、それは無理です。なぜなら俺の分析では奴らは命がけの訓練をした結果、我々のそれよりもはるかに強力な兵隊を作り上げてしまいました。まともに戦えば相手に配慮するまでもなくこちらがやられてしまうでしょう。ジジの兵は決して容赦はしてくれないでしょう。そうなれば傷つけられ、殺されるのは我々の方です」


「なんと、そうなのか…。アタリとカンが兵の調練はしているのではなかったか?」


「彼らも頑張ってはくれています。しかしアタリとカンは兵の体のことを気遣いながら、少しずつと段階を踏んで鍛えていっているのです。きっと将来のことを考えれば我々の兵の方が強くなることと思います。しかし現時点では兵の命のことを顧みず暴力的な訓練を施しているジジの兵の方が強い、ということです。それが俺の分析です」


「そうなのか…。ふん、まあそれなら仕方あるまいさ。俺だってただ黙って殺されるのは嫌だからな。せいぜい自分で作った道具を多いに活用して戦ってみるさ。これから形勢を逆転させることができるような道具を発明できないとも限らんわけだし…」


「一応、戦いには赤蛙さまも協力していただけることになっています」


「赤蛙か…。本当はあいつには戦ってほしくないな。これは俺たちトカゲの問題だからな…。しかしあいつは俺が嫌だと言っても協力してくれるだろう。あいつはそういう奴だからな…。あいつが戦いに参加したとしてもお前の分析では俺たちの方が弱いのか?」


「赤蛙さまの実力が詳しくはわかりませんので…。以前谷で見て、ものすごく強いということはわかっているのですが…」


「そうか…。まああいつの強さは正直信じられないほどだからな。旅の途中、危ないところを何度もあいつの怪力に救ってもらった。いくら相手の精鋭が強くても案外蹴散らしてしまうかもな」


 そう言ってトカゲ王は快活に笑った。

 しかしドロンは微笑むこともせずにじっとトカゲ王の顔を見据えていた。

 トカゲ王は笑うのをやめ、自らも真顔になってドロンに尋ねた。


「…それで、お前は結局俺に何を言いたいんだ?」


「…赤蛙さまが戦いに参加するとしても、確実に勝てるかどうかはわかりません。…こんなことを言うのは何ですが、アカさまはトカゲ王とクララだけを助けて残りのトカゲのことは見捨てる、ということをしないとも限りません。なぜならアカさまはあくまでもトカゲ王の友ですから」


「うーむ。まあ正直否定できないな…」


「…俺は王と、王のしもべのトカゲの命たちを失いたくはないのです。ですから、我々だけで確実に勝てるという保証が欲しいのです」


「お前はさっき、相手の兵の方が強いと言ったではないか」


「普通にやれば、ということです。…しかし俺には心当てがあるのです。いくら相手が強かろうと関係なく負かすことができる方法に…」


「お前は…」


 ドロンはここで一歩前に出てトカゲ王に顔を近づけ、言った。


「火を使うのです。あれを使えば大量の敵兵も、一気に焼き尽くすことが可能です!」


 トカゲ王は思わず顔を背けた。


「それは駄目だと言ったはずだ!あれは…生きている者に使うには威力が強すぎる!そんなことをすれば敵を全員焼き尽してしまうことにもなりかねないぞ!そんなんじゃ話し合いも何もあったもんじゃない。俺も火についてはこれまでかなり研究した…。あれはすごい技術だ。全てを黒焦げの、まさに灰にしてしまう。草も木も、生き物も何もかも…」


「それでよいのです!ジジの兵など、ジジなど、焼き尽してしまえばいいのです!奴はそんな目に合うのがふさわしいトカゲなのです!」


「なぜだ!ジジというトカゲが一体何をしたというんだ?奴は我々と同じトカゲではないか…」


「奴はトカゲ王を殺したのです!」


「何?何の話だ…?」


 ドロンはトカゲ王の問いには答えず、一旦王から一歩離れ暗闇の方へと歩いていった。

 そして何もない壁をこんこんと拳で叩いた。

 すると何もなかったはずの壁が開いて中から1匹の年老いたトカゲが姿を現した。

 そのトカゲは王に向かって1つ礼をしてから顔を上げた。

 トカゲ王は戸惑いながらもドロンに話しかけた。


「だ、誰だ?このトカゲは?」


 問いにはドロンではなく、そのトカゲ自らが答えた。


「私は名前を名乗る資格もない、罪深きトカゲでございます。…私ははるか昔。植物が大地に満ちるよりもずっと昔、ドロンさまやジジさまと共に先代のトカゲ王と戦っていたトカゲでございます」


「先代の…あいつのことか…」


「鰐を撃退して先代のトカゲ王は傷つき、その場に倒れこみました…。しかしその時点では生きていたのです!ジジさまの部下として働いていた私たちは、ジジさまの命令を受けてまだ生きているトカゲ王を穴の中に放り込み、そして穴を埋めました…。ジジさまはその後平然と”トカゲ王は負った傷が原因で死んでしまった”と言ってのけたのです…。私はずっとトカゲ達を救ってくれたトカゲ王をこの手にかけたことをずっと悔やんでおりました…本当に申し訳ないことをしたと…」


 そう言うとそのトカゲは顔を手で覆って泣き始めた。

 トカゲ王は何を言っていいのかわからないという表情でそのトカゲとドロンの顔を交互に見た。


「しかし…ジジはなぜトカゲ王を殺す必要があったんだ…?」


「自分の上に立って命令する者を頂きたくないという、あさはかな気持ちからの行動でしょう。長く生きているだけあって知恵は働きますので…」


 と、ドロンが言った。


「む…。トカゲ王を殺した他の仲間はどうしたのだ?」


「みんな口封じのためにジジさまに殺されました。私は早めに姿を隠し、なんとか助かったのです」


「ふむ…。なあ、決してお前を疑っているわけじゃない。そういうわけじゃないんだが…お前の話が本当だという証拠はどこにあるんだ?俺はそもそもジジという奴に会ったことすらないんだ…いきなりそんなことを言われて、はいそうですかと信じるわけには…」


「ご心配なく。言葉を信じてもらうために、行動を起こすことができるトカゲでございます私は。今その証をご覧に入れてさしあげましょう」


 そういうとトカゲは脇の下から鋭利な刃物を取り出した。

 トカゲ王が声を上げる間もなくそのトカゲはその刃物で自らの首を切り、真っ赤な血で辺りを汚した後に床に倒れこんだ。

 トカゲ王が駆け寄り抱き起こしたが、すでに息絶えていた。


「こ…こいつは一体何をしたのだ?」


「自らの言葉を信じてもらうために命を賭したのです。…もちろん先代のトカゲ王に対する罪の意識にずっと悩まされていたということもあるでしょうが。しかしいずれにしても彼の言葉は信じてもいいと思います。ただジジを貶めるというそれだけのために果たして自分の命を絶ったりするでしょうか?…俺は少なくとも彼の言葉を信じます」


「いや、…確かに奴の顔つきは真面目そのものだった。…嘘をつくようなトカゲには見えなかった。…しかしいずれにしても俺はジジという奴とはまだ会ってすらいないのだ。姿形すら知らない奴のことについてはやはり何も言えぬよ…」


「いえ、それでいいのです。まず最初は会って話したいということを主張すればいいのです。その申し出を相手が受け入れてくれなかった時には仕方がないのです。戦えばいいのです。その万が一の時のために火を用意する…それすらにもトカゲ王は反対されるのですか?」


「うむ…」


「何も実際に使う必要はないのです。その威厳、その恐ろしさを見せ付けられただけで相手は降伏したいという気持ちになるかもしれないではないですか。それなら無用な争いを全て避けることができます!トカゲ王!もう一度だけ言います…我々は火を少なくとも用意しておくべきです。”一応”いつでも使うことができるように…。進言は以上です。後は王自らが決断なさることです…俺はもう何も申しますまい…。では俺は彼の死体を丁重に葬ってやらなければならないので…」


「うむ…まあ、前向きに考えてみることにするよ…」


 トカゲ王のその言葉を聞くとドロンはかすかに微笑んだ。

 そして自害したトカゲを抱え上げ、奥の部屋へと消えていった。

 それを見届けるとトカゲ王もその部屋を出ていった。





 クララは外の空気に当たっていた。

 考えなければいけないことは多いような気がしたが、いざやろうと思うと何について考えていいのかわからなく。

 部屋の中で椅子に座っていると気が滅入ってきたので、たまらず外に出てきたのだ。

 城の裏手の、少しじめじめした場所だった。

 そこはトカゲがあまりいないのでクララが好きな場所であった。

 クララはしばらくその辺りを散歩し、気分転換をしてみることにした。

 しかし…


「クララ、クララ」

 

 と、どこからともなくクララを呼ぶ声がした。

 辺りを見渡してみるが誰もいない。

 しかしさらによく探してみると近くの巨大な岩の陰に大きな穴が空いていた。

 クララを呼ぶ声はそこからしていた。

 クララは薄暗い穴の中を一歩一歩地下へ向かって下りていった。

 穴の一番奥で体を縮めて座っていたのは…赤蛙であった。


「赤蛙か…まあなんとなくそうだと思ったが。話をしたいなら城の中ですればいいじゃないか…」


「いやあ、誰にも聞かれたくない話をクララとしたいと思ってね」


「…なんだ?」


「クララ。僕はね、はっきりいってもうトカゲの集落というものにうんざりしている。僕は決めた。この集落を離れることにするよ」


「ああ…」


 クララはあいまいに返事をした。

 対照的に赤蛙ははきはきと話を続ける。


「もちろんその時はクララに一緒についてきてくれるよね?…だってクララはここへ戻ってきてからずっと浮かない顔をしている。結局のところここがあんまり楽しくないんだ。そうだよね?」


「…俺もここには未練はないさ。お前が出ていきたいというのなら俺も付き合うさ。しかしな…トカゲ王はどうするんだ?お前はもちろんあいつも連れていくつもりなんだろう?あいつは今更他のトカゲを捨ててすんありと俺たちについてきてくれるとは思えないぞ…」


「まあそのことについては僕も深く考えた。…そしてだね、なかなか良いと思えるような考えを思いついたんだ。…それでその考えについてクララと相談したいと思ったわけなんだね。聞いてくれるかい?」


「聞くから話せよ」


「いいかい?どうも近い内に大きな戦いがある雰囲気だね?ジジの城、というところに攻め込むんだろ?」


「まあ、おそらくはな。戦い、ということになるだろうな」


「僕はね、その戦いでまず率先して大暴れしてみようと思うんだ」


「大暴れ?」


「そう、大暴れさ。敵も味方も関係なしに蹴散らしまくるような大暴れさ」


「何でそんなことをするんだ?」


「決まってるさ。大混乱の中でどさくさに紛れてトカゲ王を連れて逃げるのさ!そしてまた3匹で旅を始めるのさ。トカゲたちのいない方角に向かってね。どう?いい考えだろ?」


「敵も味方も関係なしに、か…」


「そりゃまあ手加減はする。味方の命は奪わないよ。ねえ、トカゲ王だって本心ではきっとこの集落にはうんざりしている。きっと賛同してくれるはずさ!」


「うーん…」

 

 クララは実に難しい顔でうつむいた。


 アカは大賛同を受けると思っていた作戦が意外にも受け入れられていなくて困惑している。しかし困惑は段々と「何で理解してくれないんだ?」という苛立ちに変わっていき、ついには赤蛙を頑なな態度にさせてしまった。


「…まあクララがなんといおうが僕はやるけどね。別にいいよ。初めからクララなんかあてにしてなかったし。ただ何も言わずに勝手にやるのはまずいかなと思っただけだから」


 そう言うと赤蛙はそっぽを向いてしまった。

 クララはため息をつき、なだめる。


「…まあそういうなよ、誰も手伝わないなんて言ってないじゃないか。ただちょっと考え直してほしい点がいくつかあると言っているだけなんだ。とりあえずトカゲ王にこのことについて相談するのはやめよう」


「どうして?」


「あいつははっきりいってお前が考えている以上にこの集落に愛着を持っている。お前が大暴れして味方を傷つけることに賛成するとは思えない。…俺はまあ大体お前と同じ考えさ。この集落にはほとほとうんざりしていたところだよ。3匹で集落を離れて旅することが出来るならそれが一番だとそう思ってるよ」


「そうだろう?3匹で旅をすることより楽しいことはないんだ!でも前持ってトカゲ王に相談しないでおいてうまくトカゲ王を連れていくことが出来るかな?」


「ま、その辺の作戦についてこれからじっくりと話し合うことにしようか…」


 もうどうにでもなれ…という半ば投げやりに思いながらクララは赤蛙との話し合いを続けた。



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