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初めに竜があった  作者: 最黒福三
トカゲの時代
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墓のトカゲ達

世界に草木が生え、トカゲ達の生活にも変化が訪れる。



 

 ドロンは相も変わらずにトカゲ王のために祈り続けていた。


 大地に草木が生え、トカゲ達がさらに繁殖できるようになったことはきっとトカゲ王に自分たちの祈りが通じたからだと信じて疑わなかった。


 ドロンはきっと何らかの形でトカゲ王は復活すると信じていた。

 今は地の底で眠っている。

 しかしいつか必ずトカゲ王自身が、そうでなければ彼の意思を受け継ぐものが現れ、トカゲ達を導いてくれる。

 そうなったらジジも自分も、いや全てのトカゲは等しく王のしもべとなるのだ。

 現在時々報告されている細々とした問題は全てトカゲ王が姿を現わせば全て解決することだ。


 あるいは俺自身が王の意思を受け継ぐものなのでは?という考えがドロンの頭をかすめることがないわけではなかった。

 しかしドロンはすぐにその考えを打ち消した。

 俺は墓守なのだ、あくまでも俺の役目はトカゲ王が帰ってくるまでこの墓を守り続けることだけだ…

 ずっと前に北へ送り出したクララもそろそろ帰ってくるのではないか。

 あいつは優秀なトカゲだ、だからきっとトカゲ王に関わる「何か」を持って帰ってきてくれるはずだ…それを待つのだ…


 ドロンは毎日そんな心境で祈っていた。


 木を材料にして家をたてる、というやり方はもちろん墓で暮らすトカゲ達も考えついたことだった。

 墓のトカゲ達は自分たちの心の支えでもある墓をもっと一目見て素晴らしいものにしようと頑張って増築したり改造したりした。

 その結果墓は遠くに見える城にも負けず劣らず荘厳で高くそびえたつものとなったのだ。

 ドロンは別に墓が広く、高くなっていくことには興味がなかった。

 ただ墓に一緒に住むことができるトカゲが増えるのでまあ良いことじゃないかと思ったぐらいだった。

 とにかくドロンにとっては、祈ることが全てだったのだ。


 しかし、他のトカゲはそうはいかない。

 とにかく多くのトカゲが暮らすのでごたごたはしょっちゅう起きる。

 ドロンに会って話しを聞きたいというトカゲは多く、ドロンも基本的にはそれを拒みはしない。

 しかしだからと言って希望するトカゲを次々とドロンにあわせていくわけにはいかない。

 それでは到底全てのトカゲにドロンの声を届けることはできないからだ。

 だからドロンは定期的に広い部屋、あるいは広場に行き、大勢のトカゲの前で話しをした。

 特にすごい話をするというのではなく、ただ今のトカゲ達の生活があるのはトカゲ王のおかげなので彼に対する感謝を忘れてはいけない…うんぬんかんぬん。

 その程度の話をするだけであった。

 しかしそれでも墓のトカゲ達はドロンの話をありがたく聞いた。

 一部のトカゲはドロンと面と向かって話すことがめったにできなくなって不満だったが、そんな者たちもドロンを慕っているというのには変わりなかった。


 ドロンが一般のトカゲ達には簡単に会うことができないような存在になってくると今度はドロンに会うことができるトカゲ達というのも尊敬を受けるようになってくる。

 一般のトカゲ達は様々な揉め事は一旦このことはその特別なトカゲ達のところへ持っていった。彼らはそれらを選別してドロンに知らせた方がいいと思うもののみドロンに知らせ、後の大多数の小さな揉め事は自分たちで処理した。

 だから問題を処理することのできる能力でないと特別なトカゲは務まらないという認識が段々と墓のトカゲ達の間でできてきた。

 それでも、能力はないがドロンには会いたいと言うトカゲもいないではなかった。

 しかしそういうトカゲはのけものにされ、最終的に墓から追放された。


 そういうわけでこういう状態が長く続き、自然とドロンに直接会うことができるトカゲは頭が良く、うまく他のトカゲに指示をすることができて、話のうまい者に固定されていった。

 それらのドロンに会う資格を持った何匹かのトカゲ達は自分たちのことを門番と呼んだ。

 墓守の部屋へ通ずる門の番をする者、ぐらいの意味なのだろう。


 トカゲの数が増えてくるに連れて門番の数そのものも増え、また門番の下にも特定の役目を持ったトカゲというものが増えてきた。

 こうなってくるとなかなか上の方のトカゲにはおいそれと話しかけるわけにはいかなくなってくる。

 建前とは別に、墓で暮らすトカゲ達の間にも段々と序列というものができ初めてきたのである。

 それはジジの城のところの序列ほどひどいものではなかったし、そのありようも大分違うものであった。

 しかし根本的なところではどっちも同じじゃないか、と思うトカゲが少なからずいたということは事実である。



 とにかく、墓のトカゲ達もこんな感じで独特の共同生活をしていたのである。

 もちろん墓の周りに家を作って暮らすトカゲも相当数いた…


-------------------


 門番の一員として、アタリというトカゲがいた。

 アタリは墓の中の広い一室で、あれこれ下っ端のトカゲに指示を出している。

 その部屋にズナという名前のトカゲが入ってきた。

 ズナも門番の一員であった。

 ズナはアタリに声をかける。


「アタリくん、準備は順調かね?」


「はい、ズナさん。護衛のトカゲも腕利きの者たちを集めましたし、万が一の時のための兵を隠す場所もちゃんといくつも見つけておきました。その他諸々、準備は万端です。」


「うむ。何しろ久々のドロンさまとジジさまの面会だ。何か騒動が起きてはいけないから準備はしすぎるぐらいにしていた方がいいんだ。…何しろ空から光の玉が降ってきて、世界に草木が生えた。そしてトカゲ達の世界は一変した、それから間もなく、定期的に行われていたドロンさまとジジさまの面会がぱったりと行われなくなった。それ以来の面会なのだからな…」


「トカゲの数はあれ以来とにかく増えました。ドロンさまもジジさまもそれまでとは比べ物にならないほど多くのトカゲを率いていかなければならない立場に置かれました。口にはあまりしたくはないことですが「墓」のトカゲと「城」のトカゲとの間で小競り合いのようなものもしばしば起きています。そういう状況ですから、本人の意思とは無関係によからぬことを考える輩が出てこないとも限りません…」


「そうだ。だから門番の中でも特に優秀で、若く有望な君をドロンさま護衛の責任者に任じたのだ。もちろん何か不備があるとは思っていないさ、君の有能さはちゃんとわかっているからな…」


「まあ、さすがに何かが起きることはないと思いますが…。そもそも今回の面会はジジさまの方から言い出したわけで。」


「いや、だからこそだ。…ジジさまのことを見くびってはいけない。あの方は目的のためなら手段を選ばないからな。私も元々は城で暮らしていたトカゲだった。しかしジジさまのやり方についてはいけず、こちらへやって来た。だからわかるのだ、それが得だと判断したならきっとジジさまはドロンさまを殺すことだってやりかねないと。」


「…まあ護衛がしっかりとしていればそういう気も起こさないでしょう。」


「その通りだ…アタリくん。だからしっかりと護衛を頼むぞ…」


 アタリは頭を下げ、部屋を出て行くズナを見送った。


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