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初めに竜があった  作者: 最黒福三
竜の時代
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竜の話

アカの力を借りて地下の道を封じていた瓦礫を撤去する。すると奥から扉が現れた。それをあけて進んでいった奥には、自らを竜と名乗る化物がいた。





「そうだ、俺は竜だ…」


 まるで何かを確かめるかのようにその化物は言った。

 口から舌は飛び出し、息も荒い。

 まるで生きていること自体が苦しいといった風だが、それでもその竜と名乗った化物は生きていた。


「竜…ああ、そうだ!今思い出した!」


 と、赤蛙が声をあげた。


「なんだ、急に声をあげて。」


 と、クララが聞いた。


「この場所は竜の楽園という名前だった。蛙がそう呼んでいたことを今思い出したんだ。」


「それじゃあ、この馬鹿でかい建物を作ったのもこの竜とかいう化物だったのか…しかしまさか地下にこんな巨大な奴が住んでいたなんて全く気がつかなかったぜ。」


 と、名も無きトカゲが思わず呟いた。

 そのトカゲのことを竜はぎろりとにらんだ。

 光を失った目であったが、思わずトカゲは身がすくめてしまった。


「お前たちは何だ…?」


 竜はかすれた声でたずねた。

 赤蛙とクララとトカゲはそれぞれ自己紹介をした。

 3匹はその際に蛇と鰐のこと、鰐がトカゲの集落を襲ったこと、しかし大トカゲという英雄のおかげで鰐は撃退したことなども話した。

 竜は特に赤蛙の話を興味深そうに聞いていた。


「…というわけで蛙と黒蛙はその鰐って奴に食い殺されてしまったんだ。僕はなんとか逃げて、この見覚えのある楽園までやってきたというわけさ。」


「そうか…では蛙は殺されてしまったのか…」


「鰐はそれだけじゃない、トカゲの集落をも壊滅寸前まで追い込んだんだ。とんでもなく強く、凶悪な生物だった…」


 と、クララが付け加えるように言った。

 竜はじっと何かを考えているかのように動作を止めていた。

 じれたトカゲがこう尋ねた。


「なあ、俺らは話をした。今度はあんたの番だぜ。一体あんたが何者で、なぜここにいるのかということを話してもらおうか。」


 竜は改めて首を持ち上げ、3匹と向き直った。

 そしてこんな話をした。


「俺は長い話はできない…そんな体力は残っていないし、得意でもないからな。だから一部についてだけ話をすることにしよう。それでお前たちが納得するかはわからないがな。…俺は蛇と、蛙と、お前らの言う始祖のトカゲ、そいつら3匹の卵を生んだ者だ。そして話を聞く限りでは鰐と、赤蛙と黒蛙も恐らく俺が生んだ卵から生まれた。それらの内、蛇が引き取ったのが鰐になり、蛙が引き取ったのが赤蛙と黒蛙になったのだろう。」


「あ、あんたが僕を生んだんだって…?」


 アカは信じられないという風に聞き返した。


「俺は蛙にせがまれて頑張って3つの卵を生んだ。それらを蛇と蛙で分け合ったのならそうだろう。…俺はあの時蛙のことが可愛くてたまらなかった。奴の気を引くためならなんだってやったさ。しかしそのあげくに奴は俺をこんな地下深くの狭い部屋に押し込んだんだ。すぐに迎えに来るといってから、もう途方もないほどの時間がたった。…初めは確かに奴のことを恨んだ。どれだけ奴のことを愛しても、あいつは俺のことなんてなんとも思っていないんだ、とな。悔しかったさ。しかし俺にはもう自分から奴に会いにいく気力は残っていなかった。…だからもうどうでもよくなったんだ。…しかし、赤蛙の話を聞いて、少しだけ気持ちは変わった。…赤蛙よ、蛙は身を呈してお前のことを逃がしたのであったな?」


「そうさ、王様は自分のことなんて気にせずに、僕を逃がしてくれたんだ!」


「その話を聞いて、なぜだか俺も蛙を許してやってもいいという気持ちになった。蛙自身はここについにやってこなかったが、蛙がその身を犠牲にして守った赤蛙が偶然とはいえここまでやってきてくれた。それで、気持ちは晴れたよ。」


「そう?まあなんだかわからないけれどそれならよかったね…」


「…蛇は、俺は蛇のことは初めから嫌いだった。俺とそっくりで、傲慢だったからな。もちろん俺は初めは奴と自分が似ているということすら認めなかったさ。自分がいくら無茶をやろうとそれは傲慢ではない、と思っていたんだ。しかし今は違う。蛇は一番良く俺に似ていたんだということを認めることができる。俺の傲慢さを奴が受け継いだのだとしたら、奴が皆にかけた迷惑はもとはといえば私の責任とも言える。蛇にかわって俺が今ここで謝ろう。」


「あんたに謝ってもらったって仕方ないよ。僕たちをひどい目に合わせたのは蛇なんだから。僕は蛇に痛い目を見せてやらないととても満足することなんかできやしないよ。」


「…それも仕方のないことだ。しかし、クララよ、トカゲの集落に現れたのは鰐だけだったのだろう?」


「うーん、相当の昔のことになるからよくわからないんだ。しかし俺の知る限りでは蛇なんて化物はいなかったぜ。」


「蛇が鰐と行動を共にしていたならトカゲの集落に現れていたはずだ。いなかったということは、恐らく蛇は鰐に殺さたか…いや、奴はそんなに弱くはない。きっと致命的な怪我を負わされ、どこかへ放り投げられたのだろう。傲慢なものが受けるみじめな報いだ。俺の傲慢さは蛇に受け継がれ、そしてそれがまた鰐にも受け継がれた。そして蛇は鰐に滅ぼされた、これも元々は俺に責任があることなんだ。」


「気にくわないな、なんでも自分のせいにして。もちろんはそうするのは勝手だが、いくらあんたが自分をせめてもどうせ弱りきっててここから外に出ることはできない。つまり、責任があんたにあろうがあるまいが、問題には、問題に直面している奴が対処していかなければならない。そのことには変わりがないじゃないか…」


 そう少し声を荒げて言ったのはトカゲだった。

 

「それもそうか…。確かにお前たちトカゲは結果鰐を撃退したのだからな。すごいことだ。そもそも俺はトカゲのことなど見向きもしなかった。蛇や亀のことで頭はいっぱいだったからな。しかし奴は決して絶望せずに自ら道を切り開き、仲間を増やし、巨大な集落を作り上げたのだ。これは俺にも、蛇にも蛙にもできなかったことであろう。」


「あんたに褒めてもらってもねえ。」


 と、クララが言った。


「しかし、トカゲ達はあまりにもその数を増やしすぎたせいで個々の力は弱まっている。もう卵を生むことができないほどに。そして、鰐と大トカゲの襲撃によってトカゲの数もかなり減ってしまった、ということだなクララ?さっきのお前の話によれば。」


「ああそうさ。はっきり言って絶滅寸前だね。」


 それを聞くと竜はじっと黙り込んでしまった。

 何かを深く考えているようだった。

 アカとクララとトカゲはどうしていいかもわからずにその場にじっとしていた。

 すると、竜が意を決したようにいきなり体を起こした。

 改めてみると、竜の大きさは蛙やトカゲの比ではなかった。


 そして竜はさっきまでよりもずっとはっきりとした声で毅然として言った。


「俺を外に連れていってくれ…」

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