尋問
クララとトカゲは化物を捕らえることに成功する
クララとトカゲは瓦礫に体を埋め、顔だけかろうじて外に出している化物に向かって尋ねた。
「それで、まずお前は一体何者なんだ?」
「僕の名前は赤蛙。ある憎い奴に復讐するために旅をしているのさ。まあ、旅といってもいく当てもなく放浪しているだけだったけどね。へとへとになりながら歩いているとなんだか見たことのある土地にでたんだ。それで記憶を手がかりにして歩いていると、目の前になんとかつて住んでいた場所を見つけた!それがここだったんだ。僕はなんとか最後の力を振り絞ってここまで歩いてきたんだけどいきなり君たちに呼び止められて、ひどいことを言われて追いかけたらつかまって…というわけさ。わかったかい?とにかく早く出してくれよ…」
「えっ。お前はここに住んでいたのか!?」
「そうだよ、ずっとずーっと大昔にね。」
「やっぱりこの場所はずっと昔に出来たんだな。で、この場所は一体何なんだ?」
「何なんだ?と、改めて言われるとね。僕も生まれて気付いたらここにいたからね。誰がここを作ったのか?なんてこと気にしたこともなかったよ。」
「じゃあここの名前とかは知ってるのか?」
「うーん。なんだったかな…なんか何かの楽園とか言っていたな、何だったっけな…あとちょっとで思い出せそうなんだけど。」
「誰がここを作ったんだ?明らかにここは自然に出来た場所じゃないだろう?」
と、クララが尋ねた。
「そんなの知らないよ。」
「じゃあ、あんたの他には誰が住んでいたんだ?あんた1匹で住んでいたわけじゃなさそうだけど。」
「ああ、僕はね、蛙と黒蛙と一緒に住んでいたんだ。蛙の口ぶりではまだ他にも色々と住んでそうだったけどね。何しろここは広いからね。僕は蛙と黒蛙以外にはここでは誰にも会っていないよ。…ん?待てよ…。」
何か考え込むアカに聞きたいことだらけのクララとトカゲはどんどん質問を浴びせかけた。
「ところで蛙って何なんだ?」
「蛙って何?なんて考えたこともなかったよ…なんだろう、ええと、僕みたいな奴のことさ!」
「やっぱりあんたはトカゲじゃなかったんだな。まあそうだろうとは思ってたけど。明らかに僕らとは体の形が違うものな。」
そうクララが呟いた。
「へえ、君らはトカゲっていうんだ。そんなのもいたんだなあ。うーん。世界は広いなあ。」
「そんなのも、って。他にも俺たちやあんたともまた違う体をした奴がいるのか?」
そうクララは尋ねた。
「いるさ。…忘れもしないさ。さっき僕が言った復讐したいと言っている奴ら。それがそうさ。そいつらは僕の仲間である蛙と黒蛙を殺してしまったんだ!許せないよ。僕はあいつらを探して痛めつけてやるために旅をしていたんだ…」
「そいつらって誰さ?」
「君らに言ってもわからないかもしれないけど…蛇と鰐さ。」
「鰐だって?」
クララが大きな声を上げた。
「そうさ。」
「鰐ってあの、するどい爪と牙を持っていて、皮膚がめちゃくちゃ固い、手足の短いあの醜く凶暴な化物のことか?」
「ああ、全くその通りさ。なんで知っているんだい…?」
クララは、鰐がトカゲの集落を襲った顛末を話した。
「うーん。鰐は君たちトカゲ達に対してもそんなひどいことをしていたんだね。ますます許せないな。でも鰐を追い返すことができたなんてすごいね。こんなこと言っちゃなんだけど、そんなちっぽけな体で。」
クララはさらに、大トカゲという英雄が体を張って集落を守ってくれたことも話した。
アカはほろりと涙を流しながらその話を聞いていた。
「うーん。感動しちゃうな。その大トカゲってのは素晴らしい心意気を持った奴だったんだね。…自分を犠牲にして誰かを救うというのは素晴らしいことだよ。というのも僕自身が生きていられるのも、蛙様が自分を犠牲にして僕のことを逃がしてくれたからなんだ…」
クララは赤蛙の言葉には賛同できなかったけれど、とりあえずうんうんと頷いていた。
そして話しが途切れるのを待ってからトカゲに話しかけた。
「どうだろう、この赤蛙というのは悪い奴じゃなさそうだ。このままじゃ息苦しそうだよ。解放してあげようじゃないか。」
「ああ、そうだったね…」
「ふう、ひどい目にあった。それにしても話を聞く前にまず身動きを取れなくするとは、君たちもなかなか乱暴なことをするなあ。」
「まあそう言うなよ。俺たちはあんたみたいに力が強くない。だからその分知恵を絞らなくてはいけないのさ。」
「ふう、まあ誤解が解けてよかったよ。…ああ、ところで僕はこの楽園でちょっと休養をしたいと考えているんだけど、別にいいよね?」
トカゲが答える。
「ああ、もちろんいいよ。というか俺たちはここを離れようとしていたところだったんだ。」
「え、そうなの?どこに行くの?」
「俺が暮らしていた、トカゲの集落さ。まあ、色々あってね。」
と、クララが答えた。
「うーん。せっかく会えたのにもう別れてしまうのか。それはちょっと寂しいなあ。…ねえ、僕もちょっとトカゲの集落ってのに連れていってもらうことはできないかな?」
意外な質問にクララはちょっとだけ困った顔をした。
「え、うーん。どうだろう。トカゲ達は赤蛙のことを見たらびっくりしてしまうんじゃないかな…」
「大丈夫さ!確かに初めはそうかもしれないよ、でもすぐに仲良くなるさ!僕は誰かと仲良くなるのは得意だからね。きっと君たちの集落に行ってもすぐにそこに溶 け込むことができるさ。ね、僕も君の集落につれていってくれよ。トカゲってのがいっぱいいて賑やかで楽しそうじゃないか、頼むよ。」
困ったようにクララは名も無きトカゲの方を見てこう尋ねた。
「どうしよう?」
「いや、それは僕が決めることじゃないさ。その集落にとっては俺だってよそ者なんだから。まあ、俺は別に赤蛙がついてくるのは構わないけどな。」
「うーん…。まあじゃあわかったよ、連れていくよ。ちゃんと説明すればきっとわかってくれるはずだろう。」
「やったね!」
押しの強いアカに負けてクララは赤蛙をトカゲの集落に連れていくことを了解した。
一匹だけでこんな北の果てまで孤独に旅をしてきて、帰りはこんな賑やかになって帰るにことになるなんて、なんか不思議だな、とクララは思った。




