化物の背後から
クララは出会ったトカゲに、集落に来て暮らさないかと誘いをかける。
「何だあれは?」
展望台の上から声をあげたのはクララだった。
クララが伸ばした指の先、地平線の彼方から何者かがこの建物目指して近づいてきていたのだ。
それはトカゲたちよりもはるかに巨大な化物であった。
「今日はなんか事件が多いな、まったく!」
そう言う名も無きトカゲはどちらかといえば楽しそうだった。
ずっとここに1匹でいたからこういう事件的なものに飢えていたのかもしれない。
「こっちだ、俺についてこい!」
そう言うと、名も無きトカゲは小走りで展望台を降りていった。
トカゲは1階まで降りていき、そこからさらに通路を歩いていった。
すると突き当たりにさらに下へ降りる階段がのびていた。
「地下へいけるのか?」
クララが尋ねた。
「もちろん!地下通路をぬけて建物の周りのありとあらゆる場所に出ることができるのさ!俺がクララの背後に回ることができたののもこの地下通路を利用したからさ。」
クララはトカゲの案内で地下通路を進んで行く。
狭い道を進んでいくと、やがて分かれ道に出た。
しかし左の道は瓦礫で埋まっていて封鎖されていた。
トカゲは右の道を指差していった。
「こっちだ。この道を進んで、それから上に上がると丁度あの化物の背後に出ることができる。隙を見て攻撃するんだ。」
クララはふさがれた道が少し気になったのでトカゲに尋ねた。
「こっちには何があるんだい?」
「よくわからないんだ。瓦礫を取り除こうとも思ったけれど一つ一つがでかく重い上に延々と道が埋まってみるみたいだからね。とても僕だけの力じゃどうにもできなかった。さあ今はそれよりあの化物だ…」
トカゲはクララの腕をつかんで先へ急がせた。
クララも例の化物の方が気になったのでといあえず今は道を急ぐことにした。
その後も何度か分かれ道に行き当たったが、トカゲは迷うこともなくずんずん先へと進んでいった。
そして不意にある場所で止まった。
トカゲが首を上に向けているのでクララも頭上を見た。
するとそこには外への出口があった。
側壁の取っ掛かりを伝って上へ行くトカゲを真似てクララも上へよじ登っていった。
外に出ると、丁度そこは化物の背後であった。
しかもおあつらえむきに大岩があって身を隠すことができている。
多分トカゲはそういうこともちゃんと計算にいれてここから地上に出ることを選んだのだろう、とクララは思った。
「おいクララ。」
「なんだ?」
「近くで見ると予想以上に強そうだ。まともにやっても俺たちでは適いそうにない。」
「悔しいがそのようだな。」
「だから俺はあいつを罠にはめて生け捕りにしようと思うんだがどうだ?」
「お前に全て任せるさ。」
トカゲが言うにはこの近くに罠が仕掛けられた洞窟がある。
そこにあの化物を誘い込み、仕掛けを外して洞窟を崩せば瓦礫で奴を生き埋めにできるとのことであった。
「クララ、お前には洞窟の仕掛けを操作する役目を果たしてもらいたいんだ。俺があいつの前に躍り出て挑発し、洞窟に誘いこむ。そしたら機会を見計らって仕掛けを外してくれ。」
「待て、それじゃああんたはどうなるんだ?一緒に生き埋めにされてしまうんじゃあ?」
「大丈夫、洞窟には丁度俺だけは脱出できる程度の抜け穴が開いているのさ。崩れる前にそこから抜け出すさ。」
「何から何まで、用意周到なんだな…」
改めて驚嘆するクララに謙遜するようにトカゲが答える。
「いやあ、全部元からここにあったものさ。」
「ようし、じゃあ始めるぞ…今だ、それっ!」
そう言うとトカゲは勢いよく化物の背後へと躍り出ていった。
「おいお前!」
声をかけるとその化物は振り向いた。
ものすごく怖い顔をしている。
「なんだよ、お前。むちゃくちゃ小さいな。」
「小さくたってお前にみたいに鈍くさくないし、頭だっていいぜ?悔しかったらこっちまで来てみやがれ…」
「なんだと!?僕を馬鹿にする奴は許さないぞ!」
その化物はトカゲを追いかけてきた。
意外にもその化物は足がはやく、徐々にトカゲとの間合いは詰まっていった。
しかしつかまる直前になんとかトカゲは洞窟にもぐりこむことができた。
化物はにやにや笑って叫ぶ。
「馬鹿だな!そんなところに逃げ込んで。出口なんてどこにもないぞ!」
洞窟の入り口脇で待機していたクララは機会を見計らって石を一つ取り除いた。
すると洞窟はがらがらと崩れてその化物は生き埋めになった。
トカゲはなんとかぎりぎり小さな抜け穴から抜け出すことができた。
「ふう、危なかった。こいつ意外に足が速いんだなあ。」
トカゲとクララが一息ついているとその化物はなんとか顔だけ瓦礫の中から出していった。
「おい、なんなんだよ。お前らは。一体僕がお前たちに何をしたっていうんだ?」
トカゲはそれに答えてこう言った。
「別に、見たこともない怪しげな奴が自分のすみかの周りをうろうろしていたら誰だって警戒するさ。話をするにしても急に襲い掛かってこないとも限らない。だからとりあえず身動きが取れないようにしたまでのことさ。」
「ひどいことをするなあ。別に襲ったりなんかしないよ。だから出してくれよ。」
「それは話を聞いてからだ…」




