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初めに竜があった  作者: 最黒福三
竜の時代
35/78

決戦準備

大トカゲはトカゲ達を虐殺することに迷いを抱くようになる。






 トカゲ達はあちこちに潜み隠れ、大トカゲの攻撃から逃れていた。

 ある者たちは谷に潜み、ある者たちは洞窟に隠れた。

 しかし一番多くのトカゲ達が潜んでいたのは荒野の真ん中にあったとある地下空洞であった。


 この地下空洞はある若いトカゲの一団が隠れる場所を探して荒野をさまよっている内に偶然見つけたものであった。

 荒野にあいた穴から入って通路を進んでいくと巨大な空洞に出る。

 空洞からは入ってきた道以外にもいくつもの道が伸びている。

 トカゲ達はそれらの道がどこに通じているのか知ろうとあれこれ探検してみたが、どの道も果てしなく長くのびている上に途中で道が分かれたりもしているのでとても奥まで行き着くことができなかった。

 しかしだからこそトカゲ達にとっては隠れるのに最適なように思えた。


 また、空洞の真ん中にはトカゲの卵の殻らしきものが置かれていた。

 空洞や通路の中を色々探した結果他のトカゲの姿は見つからなかったが、かつてここにトカゲがいたことがあるという事実は、トカゲ達にこの空洞に親近感を持たせた。


 そういうわけでトカゲの一団はここで隠れ暮らすことに決め、そしてことあるごとに落ち延びてくるトカゲをここに収容していった。

 その結果、この空洞があたりで一番トカゲが多く集まっている場所になったのであった。

 他の場所に隠れているトカゲたちもこの場所の存在は知っていて、何かあれば会議をしにこの空洞までやってきた。

 ここはさながら大トカゲに反抗するトカゲ達の一大アジトのような存在になっていたのである。



 一方大トカゲといえば、その空洞からさほど離れていないある山の麓に陣取っていた。

 山は険しく、とても大トカゲに気付かれないようによじ登って背後から攻撃をしかけるということはできそうになかった。

 だからトカゲたちが大トカゲに攻撃をしかけようとすると正面きって向き合うしかなかった。

 だからなかなかトカゲ達は大トカゲに手を出すことができなかったのである。




 この空洞のトカゲ達を束ねるリーダーはドロンという名前のトカゲであった。

 力があって頭もよく、皆から慕われている良きリーダーであった。

 このドロンがある日、主だったトカゲ達を集めて会議を開いた。


「我々がこの空洞に潜んでもう随分長いことになる。その間我々は決して遊んでいたわけじゃない。日々過酷な訓練をし、地上にはあれこれと罠をしかけるなどして、大トカゲとの戦いに備えてきた。今はトカゲ達の士気も高い。どうだろうみんな、そろそろ大トカゲとの決着をつけるべきだとは思わないか?」


 それに答えて1匹のトカゲが言う。


「全く賛成です。我々はもう大トカゲや鰐から逃げていたころの我々じゃない。老いたトカゲは殺されていったがその分若いトカゲが生まれた。われわれ若いトカゲは何度も大トカゲへの攻撃に成功し、奴に目に物を見せることができている。今こそ総力をあげて大トカゲと正面対決をするべきです。きっと死んでいったトカゲ達の敵をうつことができますよ。」


 また別のトカゲは言う。


「大トカゲと戦うことは賛成です。しかし、正面対決というのはいかがでしょう。我々がいくら強くなったといっても奴との力の差は歴然です。大トカゲの後ろには鰐というもっと厄介な奴がいることも忘れてはなりません。やはり作戦をたてた上で奴に奇襲を仕掛けた上で、罠に誘い込んで大トカゲの奴をとらえるというのが一番いい方法かと思います。」


 さらにまた別のトカゲはこう言う。


「私は大トカゲと戦うのは反対です。大トカゲは昔ほど凶暴ではなくなっております。昔の大トカゲの姿を思い出してください、奴は我々と同じちっぽけなトカゲでした。鰐の命令で私たちの仲間を食らって巨大な化物のようになってしまいましたが、その実は我々と全く同じトカゲなのです。ここで我々が奴と話し合いをすればきっと大トカゲは私たちの仲間になってくれるはずです。いいですか、本当の敵は鰐なのだということを忘れてはなりませんぞ。」


 様々な意見が出たが、それらも参考にした上でドロンは1つの結論を出した。


「大トカゲは確かに最近は比較的大人しい。しかし奴には多くの仲間が殺されている。許すことはできない。しかしかといって正面から向き合って奴と戦って勝てるわけはないのは事実だ。だから奇襲をかけた後に罠でとらえるというのが一番良い方法に思える。しかしいい作戦が思いつかない。何かいい案はないものか。」


 一同腕を組み頭をひねって考えるがなかなかいい意見は出てこない。

 そこで1匹の老いたトカゲが手をあげて発言を求めた。

 それは若者が多いこの空洞の中では珍しく爺だったためにジジと呼ばれていたトカゲであった。


「ドロンさん。わしにいい考えがあるんじゃ。ちょっと聞いてくだされ…。わしは散歩が好きで、空洞から何本ものびている例の通路をよく散歩しているんじゃが…」


「おいちょっと待ってくれ。なんで今あんたの散歩の話なんか聞かなければいけないんだ?」

 

 と、1匹のトカゲが言う。


「いやあ話は最後まで聞きなされ。全く若いトカゲといったらせっかちでよくない。一番の回り道に見えるのが近道、ということもあるんじゃ、全く。」


「まあとりあえず最後まで聞いてやろう。文句はその後でな。ただしジジさん、できるだけ手短に頼むよ。ただでさえあんたの話は長いのだから。」


 と、ドロンが言ったのでみんなもジジの話に耳を傾けた。

 それを見てジジは改めて胸を張ってしゃべりだす。


「…まあある日わしは通路を散歩していてちょっと道に迷ってしまったんじゃな。それで下手に引き戻るよりはと思って1つの道をどこまでもどこまでも奥まで進んでいったんじゃ。すると段々と道は坂を上るようになっていっての。ついには手足を使ってよじのぼるということをしなければ先へ進めないというぐらいに坂は急になっていったんじゃ。そしてついに出口が見えた。その出口からは光が差し込んでいた。外につながっているんじゃな、とわしは思って最後の力をふりしぼって外に出た。するととてもいい景色が広がっていた。遠くの山並みや川まで見渡すことができたのう。風がひんやりとしていやあれは気持ちよかったわい。」


「おい、そんな感想はいいから早く本題に…」


「…ふん。まあ要するにわしは山の上に出ていたというわけじゃ。そして私は何気なく下を見下ろしてみた。すると何が見えたと思う?ぐーすかと間抜けに鼾をかいている大トカゲの背中が見えたのじゃ!」


「なんと!とすればその山とは…」


「そう、その道は大トカゲが背にしている山の上に通じていたんじゃ。それは攻撃するには格好の場所じゃった。あそこから精鋭のトカゲ達が飛び出して攻撃をしかければさしもの大トカゲとて大慌てにならないわけにはいかないだろう。」


「ふむ、そうして大トカゲを追いやって、そして罠に追い込んで捕らえれば…。よし!これならきっと大トカゲに目にものを見せてやることができるぞ!」


 大トカゲに勝利することができるかもしれない可能性が出てきて、場はにわかに盛り上がった。

 ドロンはジジの手を握って言った。


「いやあよくそんな通路を見つけてくれた。これもジジさんの散歩癖があったからこそだな。目的もなくあたりをうろつくなんてことは老いたトカゲしかやらない。いやあ老いた者も大事にしなくてはいけないんだなと改めて思ったよ。」


 そんなドロンを嗜めるようにジジは言った。


「まだ成功もしないうちからそんなに喜んでいてはいけない。礼なら大トカゲの奴をひっとらえた後でしてもらいたいものだ。全く本当に若い者はせっかちで困る…」




 トカゲ達は作戦の細部をつめて、それから大トカゲに実際に攻撃をしかける者たちを選別し、それから追い込む罠の候補をあげていった。

 ジジの先導で例の大トカゲの背後の山へと続く通路も下調べをし、確かに大トカゲの背中を望む山の上へとその通路が続いていることを確認した。

 後は実際に作戦を遂行するだけであった。


 待ちに待った大トカゲとの決戦を後にひかえて、トカゲ達の士気はかつてないほどに高まっていた。







 

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