大トカゲの迷い
トカゲは大量のトカゲを食らい、大トカゲとなった。鰐と大トカゲの2匹は来る日も来る日もトカゲ達を虐殺しつづけたが、鰐はそれに段々と飽きてくる。トカゲ達にも段々と変化が現れた。
トカゲ達は大トカゲと鰐から必死に逃げ回っていたが、当然つかまって殺されるものもいた、殺されなくても怪我を負って動けなくなってしまうトカゲというのがたくさんいたのである。
そういうトカゲ達は逃げる仲間の足手まといになりなくないからと言って、卵を生んでから死んでいくのが大半であった。
残されたトカゲは悲しみながらも形見であるその卵を持ってまた逃げるのであった。
卵から新たに生まれた若いトカゲはその若々しい肉体と頭脳を使って上手に大トカゲから身を隠し、逃げ回っていった。
老いたトカゲが傷つき、死んでいく一方で若いトカゲは徐々にその数を増やしていったのだ。
やがて、生き残ったトカゲの大半は新たに生まれた若いトカゲが占めるようになった。
そういうトカゲ達は本当にうまく逃げるので、段々と大トカゲもうまくトカゲ達を探して殺すのが困難になってきた。
トカゲ達が隠れていそうな場所に突っ込んでいたら大きな落とし穴が掘られていて、しばらくそこでもがき苦しんでいる羽目になった、などということも1度や2度ではすまなくなっていた。
そこで、大トカゲは鰐に相談をした。
鰐は例によって川べりでのんびりとひなたぼっこをしているところであった。
「なんだ、大トカゲ。」
「はい鰐様、今日は相談があってまいりました。と、言いますのも最近ではトカゲ共も小ざかしくなってまいりまして、1匹ずつちまちまと殺すのが難しくなってまいりました。なのでここらで私は一気に力を貯えた後に爆発させ、休まずに攻撃を続けてトカゲを滅ぼしたいと思っています。その全力攻撃に是非鰐様の力をお貸ししていただきたいと思っておりまして…」
「なるほどね。話はわかった。時に大トカゲよ。」
「なんでしょう?」
「果たして本当にトカゲは全滅させなくてはならないものなんだろうか?」
「はあ?それは一体どういう意味で?」
「確かに俺はトカゲの全滅に協力するといった。お前を見捨てたトカゲ達に俺もいらついたからな。お前のトカゲ達に対する復讐は最もなものだと思ったものさ。しかしだ、お前はもうこんなに巨大で力のある大トカゲになったじゃないか。もう数え切れないくらいのトカゲ達を殺し、食った。もう奴らはごくわずかしかいない。ほっておいても死んでいくような連中さ。これ以上やつらに復讐する必要もないんじゃないか?とまあ俺はそう思うんだよ。いやあ決してトカゲ達を殲滅するのが面倒くさいわけじゃないんだ…ただ俺はお前のためを思って…」
大トカゲはしばし目を閉じて考えた。
自分は今までなぜトカゲ達を殺してきたのかということを。
元々トカゲ達を征服しようと考えたのは蛇だ。
その蛇を鰐が殺し、そして鰐がトカゲ達を虐殺することを決めた。
しかし鰐は見たところトカゲの虐殺には飽きているようだ。
私はあくまでもトカゲを1匹残らず殺さなくてはならない、と考えていたが、そもそも私はそこまでトカゲ達を恨んでいただろうか?
確かにミズミに殺されかけた時は腹が立った、しかしトカゲ達を全滅させたいほどだったかと言えば…正直微妙だ。
実際、自分は蛇や鰐に対する恐怖心をトカゲ達への復讐心に変換させていただけだったのかもしれない。
だとすれば、もう虐殺はやめてもいいのかもしれない。
ただ今までずっと続けてきたことをやめるのは簡単なように見えて難しい。
だからとりあえず鰐の協力はあきらめ、自分だけでトカゲの虐殺を続けることにした。
「鰐様、わかりました。とりあえず私1匹で続け、それからどうするか考えたいと思います。」
「うん、それがいいよ。お前だけでやる分には全く構わないからね。ああ、それにしても天気がいいなあ…」
大トカゲは迷いながらもトカゲ達の虐殺を続けた。
しかしそんな覚悟では必死に生きようと逃れ、隠れているトカゲ達をなかなか殺すことはできない。
トカゲ達は隠れ、ひそみ、あちこちに罠を作り、また老いたトカゲは卵を生み、とにかく大トカゲに対抗するために役立ちそうなことは何でもやろうとしていた。
トカゲ達がどんどん手強くなっていく一方で、大トカゲのやる気はどんどん減少していったのである。




