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初めに竜があった  作者: 最黒福三
竜の時代
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竜の誤算

竜は泣き止む。川や海ができる。太陽ができる。大地に雨が降る。

 

  竜は泣き止んだ。

 どれだけ悲しい感情も永遠には続かない。

 涙もいつかは果てるときがくるのだ。




 竜が泣き止むとあたりを見渡した。

 すると大地の様子は以前よりもさらに様変わりしてしまったことに気付いた。

 あちこちに山や丘ができて、谷には川が流れている。

 竜が初めに泣きじゃくったあたりには大きな湖ができている。

 沼も泥もあちこちにあった。





 竜はあまりにも大地が水浸しになってしまっているのでこれはなんとかしなくてはいけないと思った。

 だから空に向けて全力で炎を吐いた。

 炎は丸まって大きな玉となり、宙に浮かんだ。

 これが太陽となった。

 この熱と光で大地を乾かそうと思ったのである。




 初めは順調に大地は乾いていった。

 竜はその様子を見て安心して眠りについた。

 暴れて泣きじゃくって疲れ果てていたのだ。




 頬にあたる水滴の感触で竜は目を覚ました。

 竜の皮膚を打ち付けるものはまさに水だった。

 空はもくもくとした何かに覆われていて太陽は全く見えない。

 そしてもくもくとした何かから水がざーざーと降り出してきていた。

 雨だった。




 太陽の熱と光は川や海の水を蒸発させて雲にしてしまって、そこから雨が降り出したのだ。

 これは竜の大誤算だった。

 竜は水は乾けばなくなるものとばかり考えていた。

 しかしそれは違う。乾くとは単に形を変えるということにすぎないのだ。

 竜が本当に大地から水を無くしてしまいたいと考えたのなら飲み干すべきだったのだ。

 水、すなわち自らが流した涙を。




 しかし竜にはそんな気力は残っていなかった。

 ただ天に昇ってはまた大地に降り注ぐ水を見ていた。

 それはなかなか見ていた面白いものだった。

 何しろそれまで大地には変化がなかったのだ。

 少なくとも川は流れる。

 それに水面には太陽の光がきらきら反射してとても綺麗だ。

 雨は予想もつかないときに急に降り注ぐ。

 今までになかった刺激を竜は思う存分堪能していたのだ。

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