四章-13
仮想現実体感ゲーム・ジェミニが発売された六年前から世界は大きく変わった。社会経済の一部がゲームの中に移設した為、どこでもかしこでも世界中でジェミニがはやっている。その勢いはある種、世界征服。それでも学生は相変わらず学校に通い、授業を退屈に過ごし、放課後をゲームセンターで過ごす。だが、“僕”が帰国して日常は歪み始めた。
ジェミニで暴れる神“ナヴィア”“フェノーバ”“ゼブルク”“ザメロ”――神を倒すために立ち上がる組織ニケ。ニケのメンバーの一人、ルッツを意識喪失者として犠牲に出しながら神ナヴィアを倒したが、現実世界に再び出現した。現実世界の化物討伐組織パラドックスと協力しつつ、仮想世界でニケとともに神を倒してゆく。
なぜ、仮想の神が暴れるのか、そして倒したはずの神が現実世界に存在するのか。――すべては二年前に失踪したプレイヤー・ロキに集約されていた。
かつて、ロキは僕の仲間だった。だが、真理の扉と呼ばれる場所で仲間を裏切り失踪。当時の仲間はヴィオ一人を残し、全員が意識不明者となっていた。ヴィオとともに僕はロキを探す。現実世界で死んだはずのロキ、しかしその意識はジェミニの中で生きている。
神が倒される度に真実は開示され、そしてニケのメンバーは意識不明に陥ってゆく。
ジェミニの望むのはただ一つ、本来の機能である“現実投射”。それは死んだ人を生き返らせるという目的――ロキの復活だった。
繰り返される悲劇に僕の決意は揺らいでいった。ロキの失踪と真実。そして心の壊れてしまった少女・架火。彼女への贖罪に僕はロキを語っていた。ただ、ロキと架火を会わせるがために行動してきた。だが、犠牲を強いる望みは果たして手に入れたいと願ったものなのか。名前を騙り、戸籍を変え、すべてが嘘の塊である僕。真実の扉がすべて開いた時、最後の神“オルトロリカ”の罰に僕は対面する。ロキ――死者の復活という歪んだ現実に僕は決着をつける。