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Distorted  作者: ロースト
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二章-19


「柏。明日暇かな」

 明日に控えるのは創立記念、学校の休日だ。平日の夕方と土日をパラドックスの方に顔出しする学生としては貴重な時間。ならばこの機会に街を歩きたい。帰国してから日も経ったのにゲームセンターと架火の家以外何も知らないのも変な話だろう。――そういうわけで、気軽に声をかける。

「デートしよう」


「――な、」


 すべての注目が集まり、世界が停止したように静寂が満ちた。柏も何故だか停止している。何故だ。とりあえず、僕はぐるっと周囲を見渡して、なぜだか硬直している二人を視線に捕らえた。

「二人が嫌なら寿々原と来住も一緒に。もちろん、暇ならだけど」って提案してみたが、

「――ええええええ!!!」

 やはり、帰ってくるのはやけに大きなリアクション。なんだか意思の疎通が上手くできていないような気がする。

「……そんな驚く事?」

 僕は渡米していただけあって、日本語が不自由だ。いや、日本人生まれで日本育ちでこんなことをいうのも変だけれども、二年の間にすっかり日本語を忘れた。主にカタカナ。外来語は本場と日本で意味が全然違う。だから帰国してからも結構な確立で日本独自の意味を忘れてしまいがちなのだ。そんなわけで僕は横文字、カタカナが苦手なわけだけど。

「デートって二人で出かけること、であってるよね……?」

 おそるおそる尋ねてみる。確か、意味は変わらなかったはずだ。友人に言われていた。他人に自分の時間を侵食されるのは嫌だから断っていたが。あれ、と首を傾げる。

「……なんか、俺らが馬鹿みてぇー」

 ぽつり、と来住が呟いて、静止した空気は動き出す。やはり、何か勘違いを引き起こしていたようだった。なれていない言葉を使うのはよくない、ヨクナイ。けれど当事者を一人置いて一件落着、解決したようだ。



 そんな前騒動があって、今日。僕は来往とともに(何故か)ソファに座っている。

「何か、来住の雰囲気いつもと違うね」

 普段はワックスで作っている、ふわふわ癖のある髪が今日はさらさらと真っ直ぐだ。色も心なしか暗く見える。そうすると来住自体の雰囲気が落ち着いて見える。

「んー。これだとさ、背が低く見えんだよ。だから、いつもああしてるわけ」

 今日は示崎がいるし、いいかなーって。来住は柔らかに微笑んだがそれはつまり、僕の背が低いと?いや、事実だがなんともいえない気分だ。もう伸びないかな、僕は。

「それより、示崎はさ、お洒落とかしないのか?」

「……架火のコーディネイトは僕がやってるよ。それと髪も結ってる」

 自分のことじゃないけど、とりあえず主張する。架火はそれなりにお嬢さんだ。その欠陥的な部分から、本来は出ないといけないようなパーティーなどには遠慮するが、着飾らなければならない時というのはどうしてもある。髪を結ぶのは日常的なものではあるけれど、服に関しては出不精なので余りその出番も無いが、彼女の過保護な兄は贈り物として服を多量に送ってくる。もちろんそれ以外も。僕はその中から彼女に選んでやっているので、センスは僕ではなくその兄のものだけれど。もっとも、ホームワークな人なのでその姿を見れるのは限られた人間であって、その中には来往は入ってない。

「僕が着飾る時も、たまになら、あるよ」


「さ、気勢が削がれる前に遊ぶぞ!ジェミニ、登録してあるよな?」

 自分から振った話題のくせに特に執着もしないまま、話題転換をして拳を突き上げる来住が言う。当然のような言葉に、皆で苦笑した。目指すはひとつ、ってね。


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