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Distorted  作者: ロースト
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四章-10

「俺の計画を邪魔するなら、容赦しない」

 殺気が放たれるのが解った。MISSINGが動きだし、パラドックスの戦いも始まる。


「二年、僕は後悔した。ずっと、あれから何もかもが変わってしまったから」

 今でも夢に見る。二年前、僕がもっと早くジェミニにログインできていたなら、何かが変わったかもしれない。僕が、唯一変えられたとするならば、あの状況は最悪といっていい形の終幕だった。――悪夢に魘される、逃げても逃げても追いかけられる夢。

 急き立てられるままに、僕は戻ってきた。そして気づいた。何も変わっていなかったことに。それまでが、なんと怠惰の日々だったのか。一生懸命でいて目を逸らしていた。

「ヴィオを傷つけた!仲間を裏切った!」

 ――僕らの時間は真実だった。だが僕らは、彼らを意図的に傷つけた。悪意を持ってだ。

 それが偽善ならどれだけ良かったことか。それが偽悪ならどれだけよかったことか。けれど、それは悪意だった。悪意は人を捻じ曲げる。

「ロキ!君は何のために今いるッ!大切な人たちを傷つけるためか、そうまでして生きたいと願うのかッ!」

 答えは、無言だった。代わりに、剣先が上がる。

 その兇器を封じようと刃に絡めるが、あっけなくそれは姿を消す。刀身は無色、そして炎の色へと変化する。魔法剣の使い手、ロキ。それは僕とは一番相性の悪い、職業。


 刃から放たれた炎の弾丸。魔法が不得手なリスタは相殺するだけのものを放つのに時間がかかる。その間にロキは距離を詰めて、その兇刃は振るわれる。傷を負う。けれど、

「ッ!やられたままだと思うな!」


(邪魔をしたかったわけじゃない)

 最初は、ロキに協力しようと思っていた。

 姿形が変わり、その媒体が変わっても。人という存在でなくなっても“晩”という存在は変わらなければ、それでいいと思っていた。それまでに犠牲になる人たちのことを可哀想だとは思っても、それだけだった。僕は僕の意志で、僕の目的を果たそうと、晩という存在を再び欲しがった。

(――けれど、僕は出会ってしまった)

「僕は、守りたいから今ここにいる!」

 ここに来るまでに、僕は多くの人と出会った。世界に絶望し、嘆いた人――それでも希望は失わず、正義を貫こうとして、笑顔でいた。愛する人を失い、祈った人――それでも希望は失わず、強い意思で彼女を取り戻そうとしていた。愛する人を失い、怒った人――それでも人を導くように諭し、大切なことを教えてくれていた。世界に失望し、喜んだ人――それでも孤独を最後には他者と分かち合う勇気を持っていた。

「失いながらも、彼らは前を向いていた。今はもう、僕の大切な人たちだ!」

(そのためなら、僕はもう恐れない)

 願望は明確で、僕が何をすべきかも今なら断言できる。僕は晩を諦めさせなければならない。だが素直に死んでくれ、といったところで何の意味も無い。そんな結末じゃ、余りにも僕らの生きた時間が無意味。犠牲者の分だけの後悔があり、そして犠牲者も無価値になってしまう。だから僕はもう一つの答えを示そう。


 能力を行使し、魔法を駆使し、糸を四方に巡らせ、攻撃する。ジェミニで収集した、どんパターンよりも、どんなシミュレーションよりも、過剰攻撃(オーバーキル)。――空から飛来する武器。巨大な剣の崩落。魔法が飛び交い、刃がロキを襲う。絶対不可避。僕が経験した死の痛みをすべて流し込むように攻撃し続ける。


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