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◆ヨハンの観察日記◆ 2

198,952日


 ここ最近、夕食が終ってからアマーリエさんはパンを作るのが日課だ。まだ練習中なのと言いながら、僕の目を絶対に正面から見ない。どうやら先は長そうだ。頑張らないと、いつまでたっても電気を引いてもらうことはできないよ?ご主人さまにとって、アマーリエさんの不満は糧となってるからかまわないんだけど、身近にいる僕の身にもなってよ。常に焼きたての香ばしい匂いをさせるパンが目の前にあるなんて、アマーリエさん。我慢できる?



198,959日


 おめでとう、アマーリエさん!やっとまともなパンが焼けたね。僕も嬉しいよ。これでやっとご主人様に睨まれなくてすむ……。(つまみ食いぐらい見逃して欲しいよ)



198,967日


 うわぁー、びっくりした。ご主人様に呼ばれてアマーリエさんの部屋に行ったら、アマーリエさんが浴槽で死にそうになってた!あんなに狭い場所で溺れるなんて、なんて器用な人なんだろう。いい具合に死に対する恐怖を撒いてくれたから、夜食には丁度良かったけど。今回ばかりはご主人様も仕方なさそうだったっけ。アマーリエさんの恐怖を和らげるにはあれが一番手っ取り早かったし。

 ……それにしても、ご主人様。いくら非常事態だとはいえ、問答無用に女性の部屋(しかも浴室)に入るのはどうかと思うけどなぁ。



198,973日


 本当にご主人様はアマーリエさんを気にいってるよね。人間は悪魔だと知ると大抵、媚びへつらうか、逆に恐れ慄く場合が多いのに。それなのにアマーリエさんはかみ付いてくるのだから貴重な人材だよ。単に、僕たちの存在をよく理解していないだけかもしれないけど。うん、多分そうだろうな。

 それにしても、あの二人。朝から元気だ。朝食の席であそこまで言い合えるなんて、仲がいいのか悪いのか。アマーリエさんはご主人さまを嫌っているようにしか見えないけど。ご主人様は……ああ、はいはい。珍しいペットを飼ってる気分ですか。はい、おかしな事は書きませんよ。



198,975日


 今朝は雪が積もっていた。仕事がお休みになったアマーリエさんと雪だるまを作って遊んだ。アマーリエさんがどこからか拾ってきたこげ茶色の落ち葉を雪だるまの目にして、ご主人様だと言って笑っていた。……楽しそうだから、まあいいか。

 ――なんだかアマーリエさんといると自分が悪魔だということを忘れそうになる……。



198,979日


 今日はアマーリエさんの仕事がお休みだった。地下におりる扉の前でアマーリエさんの気配を感じたけど、ずいぶん長いこと立ちつくしていたみたいだ。しばらくしてご主人様と一緒に地下へとおりて行ったけど。今まで地下には近づきもしなかったのに、どうしたんだろう。しかも戻ってきたアマーリエさんは随分青い顔をしていたっけ。あれは寒いだけじゃなかったんじゃないかな。ご主人様もだいぶ人間に感化されてるみたいだけど、気にいっている女性に無理をさせるなんて、まだまだだよね。っていうか、いくら長い間人間と接してきたからといって、人間に感化されて悪魔としての本分を怠るのは良くないです。最近のアマーリエさんは不幸な匂いが薄まってるし、ご主人様にはきちんと栄養を補給してもらわないと。使い魔としての僕の力も弱まるんですよ。気にいってるならさっさといただいちゃえばいいのに。それである程度の補給は出来るでしょ?



198,981日


 もう少しだけ様子を見る予定だったけど、予定変更。ご主人様のあの様子では、アマーリエさんをいただく気はないようだ。メレディスの血を引いているからといって、ここまで大切にしている人間は未だかつて見たことがない……。ご主人様は僕にどうして欲しいのだろう。今までどおり動いていいのか、それとも……。 

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