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現代お茶人作家のつれづれ日々帖  作者: 久慈柚奈
2026年3月

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モノは好きだけど、モノへの執着は手放していきたい

ここに告白しよう。私はモノが好きだ。

ミニマリストに憧れているけど、モノが好きだ。


日本の世間が洋風な生活を主軸としている昨今。海外でばかり日本文化がもてはやされている昨今。

リサイクルショップやフリマアプリを使えば、素敵な日本の品物が格安で手に入る。なんならおうちに届けてくれさえする。


昔の日本では、こうはいかなかったことだろう。千利休が茶の湯を大成できたのは、彼が豪商であり、茶の湯にお金と時間を注ぎ込む余裕があったから。

米を買うに困る戦後は、どれだけ気に入った着物でも闇市に持って行って米に変えねばならなかったことと思う。

そういえば今年81歳になるおばあちゃんは、闇市のことを単に「市場」と呼んでいた。当時の人たちにはその市場が「闇」か「正規か」なんてどうでも良かったのだろう。暮らしに必要なものが手に入れば。


これまでの歴史の中で、数え切れないくらい大勢の人が、「素敵なアレ」に憧れて、でも手が届かずに一生を終えていっただろう。現代だってそうだ。私だって欲しいものを全て手に入れられるわけではない。


でも、だからこそ、手の届く「素敵なアレ」を、一度手元に置いてみたい。所有するという体験をしてみたい。そう思ってしまうのだ。



同時に、「でも、モノに縛られるのも嫌だなぁ」と思う自分もいる。

一度はベッドも手放して、毎日布団を上げ下ろしする生活まで行ってみた私だ。(お昼寝するために布団が必要だったので、この生活は1ヶ月と続かなかった)すっきりした部屋、視界にノイズの少ない空間の心地よさを知ってしまっている。

自分のコンフォートゾーンを超えて増えたモノは、確かに心と物理的空間を圧迫する。管理・把握しきれないモノに溢れた空間で過ごすのはストレスをめちゃくちゃに積み重ねていく行為だ。ちょっと古いもの、レトロなものが好きな私は、自室がリサイクルショップの倉庫みたいにならないよう、全力で気をつけねばならない。(私は真剣だ)


茶道は「禅」の精神と結びついている。禅寺で坐禅を組んで考えることは、無であろうと思う。

というか「何も考えない」ことすら考えない。

自分を離れて、自分が持っているもののことも離れて、ただそこに「在る」ことをしようとする。


何を持っていてもいなくても気にしないということ。

……と、私は理解している。


茶道の道具組みは楽しいけれど、最低限の道具さえ持っていればできるのも茶道だ。

そもそも利休は、唐物がなくてもできる茶の湯として「侘び茶」を突き詰めていった。そこにはミニマリズムに通じる精神があると思う。

モノは道具(手段)であって、目的ではない。

珍しい道具を見せびらかすために茶会を開く大名がいるとすれば、その人はモノを目的にしている。

利休は「美味しい茶を点てるための道具」だけを揃え、大切な相手と語らう時間こそを目的に茶会をした。


私は「そのモノと暮らす・所有するという体験」をしてみたいから、モノを集める。

でも、「そのモノがなくなったら、私ではない」と思わされてしまうようなモノは、できるだけ持たないようにしようと心に留めておくようにしている。

自分を表現する方法はあまたある。

私にとって最大の表現は文章を書くことだから、極論をいえば紙とペンさえあれば私です、と言えるくらいでいたい。

モノに執着しすぎていないか? と気づいたら、「もしも今この瞬間、うちが火事になったら……」と考えることにしている。

火の手が迫っているとして、両手に抱えられるだけのものしか助け出すことができないとしたら。私は何を持ち出す?

炎の中に残していくものを、すっぱり諦めることができる?


あれも惜しい、これも惜しいと思うようなら、私は「惜しいと思ったもの」に執着しているということ。

逆に思考にも上らないものは、暮らしに馴染んでいるか、別れる心の準備がいつでもできているものということだ。


まだ「何も持たなくても大丈夫」なんて境地までは全然、至れない。両手に抱えられる範囲に収まっているかどうかも、怪しい日がある。

無理に減らそうとはしないで、目の前にある魅力的なモノたちを、ただ愛でる。

どうせ、死ぬ時は何も持っていけないのだ。

命ある間に、手元にある間に、精一杯大切にしていこう。

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