着物で足袋を履き替える
着付け教室で習っていたとき、足袋は最初に履くものでした。
足袋を履き、それから肌襦袢や裾よけに取り掛かる。
そう教わったから従っていたという面もありつつ、当時から「最初に足袋を履いておく」ことへの実用的意味も見出していました。
和服で靴下や足袋、靴などを脱ぎ履きするのって、とにかく気を遣う!!!!
特に着付けを習いに行っている慣れないうちは、一層。
帯に動きが制約されて腰を曲げるのは難儀だし、まだ着物という服の形も把握しきっていないから「こんな姿勢を取ったら、着崩れちゃうんじゃない!?」と気が気でなかったり。
私はそういうことが心配でたまらず、足袋のこはぜを「外れてくれるなよ」と念を込めながら留めるのでした。
先日、お茶室に入る機会がありました。
茶室に入る前には足袋を履き替えるのがマナー。これは着物で伺っても洋装で伺っても共通です。洋装の時は白い靴下でも良いとのこと。
清浄な空間である茶室に入るにあたって、道中の汚れや現世の穢れを持ち込まない、という意味がある行動のようです。畳座で床と近い上、そこに膳を置いて懐石をいただく……のが茶事の流れですから、清潔に気を遣うという実用的な面からいっても納得です。
その時私は着物でしたので、何が何でも両手を足下に届かせて、足袋を履き替えなくてはなりません。
初めて挑戦しました。着物は全然着崩れませんでした。
「あ、大丈夫なんだ」と安堵すると同時に、腑に落ちたこともひとつ。
昔の日本人は着物が普段着だったのですから(着付けの仕方は時代によって変化があるにしろ)、「着物で足袋を替える」という動作が、できないわけはないのです。
それこそ今の私たちが、服を着たまま靴下を履き替えるのと同じように。
慣れないからこそ勝手が分からなくて躊躇してしまうだけで、冷静に考えたらできないわけがなかった。
よほど難しい動作なら、茶事の作法に組み込まれることはなかったことでしょう。
茶会に呼ばれる客がひとりだけのことだってあり、必ず周囲に手伝ってくれる人がいるとも限らなかったのですから。
そう気づいてから、ちょっとだけ着物での行動範囲が広がりました。
雨や雪の日は、雨用の下駄を持っていないから着物は無理かな……などと思っていたのが、「道中はブーツでいいか。着いてから足袋に履き替えれば、和装が完成させられるし」と思考を切り替えることも。
もちろん、下駄や草履と、靴では歩き方のコツも違いますから、足元が洋式だと裾が絡まりやすく感じたり、ついつい和服に合わない大股で歩きたくなることもあります。
それでも、前よりは天気に左右されず、着物が着れる。着ても大丈夫だと思える。
その心持ちの違いは大きいものです。




