表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代お茶人作家のつれづれ日々帖  作者: 久慈柚奈
2026年2月

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/92

君が土に還るまで--風化するうつわと保存する人間

ひいおばあちゃんから譲り受け、10年くらい使い続けてきた抹茶碗に、ピンホールが空いているのを見つけた。

ちょうど作家の銘が入っているあたりで、ただでさえ上手く読めなかった銘がますます判読困難になっている。

見れば一緒に譲り受けた他のうつわも、高台(こうだい)のあたりが荒削りみたいな質感を増してきているようだ。

縁あって私の手元にやってきた、他の古い抹茶碗も、いっそう荒削りな質感を持っていた。

「あ、君たち本当に土でできているんだな」と思った。


土を高温で焼いたら丈夫になると、最初に気づいたのはなんでだったんだろう。


私は高校の生物の先生から聞いた、「人類がどうやって使える火を発見したか」についての一考察が好きだ。

ある時、落雷によって森が火事になり、人間はひとまず逃走した。

鎮火した後日に森へ戻ってみると、逃げ遅れた動物とかが焼け死んでいて、何やら美味しそうな匂いがする。

試しにその肉を食べてみたらおいしかった! ……的なストーリーなんじゃないか、と。


いにしえの勇士が天の国から火を盗んできた神話と同じくらい、上の可能性が気に入っている。


「陶器」という発想も、こういう自然現象の派生として発見されたのかしら。


海辺を歩けば陶器のかけらやシーグラスが流れ着いている。

遠く海を渡っても角が削れるくらいの影響しか受けないのに、その陶磁器はもともと地球の土の一塊にすぎなかった。この不思議さ。

漆や釉薬という、これまた自然のものから発見されたものを塗りつけることで、海の荒波に負けない程の強さを手に入れた、土の一塊。

同時に、長い時を経れば、これは無防備な部分から土への回帰を始めるのだ--抹茶碗の場合、それは高台である。


土の風合いを生かした陶器がたくさん残っていることをすごいと思う。出土する縄文土器なんて奇跡じゃろ。

私の手の中にある茶碗もいつか、土へ還ることになるのだろう。

それまでは「茶碗」という一定の形を保ち続けるのだろう。

人間はどこまで形の崩れたものを「茶碗」として認識し、「使用するに可能なうつわだ」と判断するだろう。

器をゴミ捨て場に持っていくよりも、庭の土に埋めてしまいたい。小規模な貝塚になる。いつか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ