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現代お茶人作家のつれづれ日々帖  作者: 久慈柚奈
2026年2月

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「まあ、割れたら金継ぎすればいいんだし」--ときめくお皿を棚の肥やしにしないための知恵

大好きなお皿ほど、自然と丁寧に扱いたくなるもの。

だけど人間はミスをする生き物だから、いつ何時、そのお皿を割ってしまうかは分からない。


ヒューマンエラーはどうしても防げないものとして考えた方がいいというのは、工学系の本にも書いてあることです。モノや機械を設計するときは、ヒューマンエラーが起こるものとして考える。安全装置の取り付けや、重要な操作の手順など。説明書の書き方もね。


割れたお皿の不可逆性って、どうしようもないが故にものすごいストレスになりえますよね。時を戻したい………お皿が手の上に載っていた数秒前に。


そんなストレスを取り去ってくれるのが、金継ぎという素晴らしい技術だと私は思っています。

割れたお皿がまた使える形になる。しかも割れ目を繋ぐ金色(銀継ぎの場合は銀色)のラインは、それまでとは一味違った良さを、大好きなお皿に増やしてくれるのです。最高か。


時を戻すことはできないけれど、良さを増した状態で、大好きなお皿を使い続けられるようにしてくれる。これってすごいことですよね。


モノに溢れた現代なら「じゃあ、しょうがないから新しいのを買うか」ってなるところを。

きっと金継ぎが生まれた時代というのは今よりもモノが少なくて、新しいお皿を買うなんてなかなか考えられなかったのではないかと思います。

あるいは気に入ったお皿を割ってしまったんだけど、どうしてもそれを使い続けたかったから、なんとかならないかと思って金継ぎの技法を編み出した人がいたか。


「うっかり割ってしまっても、なんとかなる方法がある」

「失敗して割ってしまうことを心配しすぎなくても大丈夫」


そう思っていられる心の余裕が、お気に入りのお皿を棚から出して、どんどん使う背中を押してくれるんじゃないでしょうか。

私は気に入ったものを壊したくない、損いたくない気持ちが強く出てしまうから、好きな服とかをあんまり着ずにしまい込んでしまうことが多いのですけれど………。


使わないと勿体無いよね、どのモノも使われるために生まれてきたんだよね、とも知っているので、罪悪感に苛まれてしまったりします。


取り返しのつかない汚れがついてしまうかも、って服をクローゼットにかけておいたり。

粉々に割れちゃうかも、って一番気に入っているお皿を棚の一番奥にしまい込んだり。

落ちて壊れたら、もし地震が来て棚ごと倒れたら? って心配しすぎて、飾り物を飾らず箱に仕舞い込んだままにしておいたり………。


そうすればモノの安全は保たれるけど、「素敵!」って思って買ったあの瞬間の自分は、果たして報われているのか。

「素敵!」と思って買われたモノたちは幸せなのか。


考えていくと、首を傾げてしまう。


割れ物には、金継ぎがある。


それを知っておくことで、気に入っているものを手に取り使う勇気が湧いてくると思うのです。気に入ったモノと、長く一緒に暮らしていくために。

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