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現代お茶人作家のつれづれ日々帖  作者: 久慈柚奈
2026年1月

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一周回って薄茶の湯量が分からなくなってきた(困惑)

裏千家で最初に習うのは「盆略点前」というお点前。

これでは釜も柄杓も扱わず、風炉に沸かした鉄瓶から茶碗へ湯を注ぎます。

前提として目分量があるわけです。


趣味で薄茶を点てて10年。これまでずっと目分量でやってきた私だから、このことに不便を感じてはきませんでした。むしろ最近は風炉における柄杓の扱いがなかなか身に付かなくて、目下練習中というところ。

茶道って最初は茶室に炉が切られておらず、風炉スタートだったと聞きます。ってことはみんな一年中柄杓を取ったり、引いたり、置いたりしていたわけで。

最近の教室では、季節がら炉のお点前ですが、風炉に比べて扱いの簡単なこと。炉を切ってくれたひと、ありがとう。でも風炉もなんでもない顔をしてできるようになりたい!


閑話休題。


柄杓を扱うようになると、薄茶に注ぐ湯量は目分量の度合いを少し薄れさせます。

目安として、「柄杓いっぱいに汲んだ湯の半分くらい」というのがあるからです。

柄杓もサイズが厳格に規格化されているわけではないから加減が必要ですが、目安があれば微調整も楽というもの。あんまり難儀しないものです。


それに、多分私はこれから習うのですが、私が勝手に憧れる茶事の至高「夜咄」があります。

これは手燭の明かりだけで茶事を行うもので、視界が限られた室内で茶を点てる亭主には、五感を研ぎ澄ませることが一層求められるといいます。

だって、見えないから。

揺らぐ蝋燭の明かりは茶碗の中まで照らしてはくれない。茶杓でどれくらいの抹茶を掬い入れたか、柄杓から湯がどれくらい注がれたか。写真などで見る限り、燭台に立った蝋燭はヨーロッパのものほど背が高いわけでもなく。釜の内側や茶碗の中までくまなく照らしてくれる高さではありません。

だからこそ、普段から夜咄のことを想定して稽古しておくといいと、本に書いてありました。つまりは視覚以外の感覚も研ぎ澄ませておくということ。

柄杓から減っていく湯の重さ。手の感覚で、「茶碗にどれくらい湯が入ったか」を把握する。音で薄茶がおいしく点てられたか判断する。そういう感覚。

教室は煌々と明るいけれど、もし今が夜咄だったら………。急に夜咄の場で茶を点てることになったら………。

そう思いながら、柄杓が軽くなっていく感触を覚えこもうとしているのでした。


……していたら、今度は「目分量」がわからなくなってきたのです。


釜の代用としている鉄瓶(うちでは保温ポットだけど)は手の中にある。注ごうと思えば茶碗から溢れそうなくらいの湯だってそそげてしまう。

「柄杓の半分くらいのお湯」って、どれくらいだっけ?


これまで困難を感じたことのない部分に、にわかに障壁が立ちはだかってきた感覚。私は困惑しています。

人間って、こんなに簡単に感覚が鈍ってしまうものなのか………。


「鈍る」というより、視覚だけに頼らなくなった分「分散した」と言えばポジティブかもしれません。


盆略点前は一番難しい、と茶道の先輩方は言います。その意味がようやくわかってきたかも。

久慈庵として、商品として薄茶を提供させていただいている時は、湯量の目安を分量で決めているので迷うことはありません。そこは商品、しっかりしなければ。

しかしおうちで抹茶を楽しむ時はもう少し肩肘張らずにやっているので、湯量がわからなくなるわけです。


願わくば目分量でも、柄杓でも、迷わず揺らがず湯を注げるようになりたい。

新たな修行の目標ができたな。茶道が「道」であり、一生学び続けるものであるって真実だ。

その真実の一端を、若輩ながら垣間見た気がするのでした。

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