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現代お茶人作家のつれづれ日々帖  作者: 久慈柚奈
2026年1月

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25/92

やわらかい湯の音、硬い水の音

英語では、軸足が「水(water)」に置かれている。


常温の水はwater、グラグラ沸いたお湯はboiled water、冷たい水はcold water。


「水」が、原型を残さない全く別の言葉「お湯」に変わることはない。



でも水が置かれている状況と、その在り方には確実に変化が生じていると思う。

例えば、音。

試しに、鍋やボウルに汲んだ水をお玉ですくい、ちょろちょろ注いで容器に戻すということをやってみてほしい。次に、同じことをお湯で。

この音が、違うのである。


茶室で耳をそば立てると、なぜか日常のどこかで同じことを試みた時以上に、違いがはっきり聞き取れる。


茶を点てるためにすくった湯は、柄杓の半分だけ使って、残りを釜に戻すことになっている。

その残り半分のお湯が釜に戻る時の、ちょっとやわらかくてまるい音。

お点前が終わり、水指(みずさし)から釜に水を足す時の、ちょっと硬い音。


さらには柄杓を飾るために湯返しをした時の、硬いとやわらかいが混ざったあいだの音。

全部違っている。


森下典子さん著の茶道エッセイ「日日是好日」(https://amzn.to/4qeOvoe)には、「季節によって雨音が違う、そのことに気づいた」というエピソードが載っているが、似たようなことが釜の周りで起こっているのではないかと思われる。微妙な気温の変化によって、「水」は「氷」と「蒸気」のあいだで、言葉のない状態変化を移ろっているのだ。

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