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現代お茶人作家のつれづれ日々帖  作者: 久慈柚奈
2025年12月

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15/92

初めて抹茶を飲んだ時のこと

小学生の頃、私は「お茶」と名のつく飲み物がどれもだめだった。苦すぎるように感じられた。

飲み物はいつだって水。あるいはリンゴジュース。水は飲めば軟水か硬水が今でも分かるほどだし、断然、軟水派。今年の初めに無防備に関西へ泊まりに行ったら、向こうで売っているミネラルウォーターがこぞって硬水で、密かに辛い思いをした。いい思い出。


そんな私は、当初抹茶に対しても「苦さの極地」みたいな印象を持っていて、飲む機会もなかったし、あえて飲もうと思ったこともなかった。


初めて「抹茶」というものを飲んだのは、小学4年生のことである。

当時私が通っていた市では「一日職業体験」みたいな催し物が年に1回開催されていて、市内の小学生が参加できた。会場になんらかの「仕事人」がきて、仕事体験ができるというもの。移動式キッザニア……と行ったら大仰だろうか。


どういう直感だったか忘れたのだけれど、その時私は「和菓子職人」の仕事を選んでいた。

参加者である小学生たちに用意されていたのは、ねりきりの中にあんこを包むという作業体験。私は「ねりきり」というお菓子を見るのも、名前を聞くのも、触るのも初めてで。確か、原料はあんこだということは聞いたはずだけれど、白あんであるゆえに小豆っぽくない色をしたねりきり(整形前)は、いっとう柔らかい手触りの粘土にしか見えなかった。


ちなみにこの時「生地にあんを包む」という動作を教わったから、私は今でも「丸いパン生地に具を詰める」系の動作が上手い方だと自負している。えへん。


作ったねりきりを、では実際に食べてみよう! という時間が設けられていて、その時ねりきりを食べるに当たって出されたのが抹茶。

講師の方が抹茶もお湯も入れてくれ、点て方だけみんなに教えてくれて自分たちの手でやったと思う。

前述の通り苦いお茶を受け付けない私は、あからさまには嫌な顔をしないまでも、内心警戒していた。

粉としての抹茶は明らかに苦そうな濃い黄緑色(鮮やかな抹茶色)をしているし、先生が入れたお湯の量は、お抹茶碗に比べて少なすぎる(抹茶の作法としては正しいが、小学4年の私がそんなことを知るはずもなかった)。

こんなの飲んだら、明らかに苦いじゃん……嫌だなあ、嫌だなあ。


講師の方によれば、まずはお菓子を食べて、二口目以降にお抹茶を飲むとのこと。

周りのみんながその通りにしているので、私もしぶしぶ従う。

自分であんを包んだねりきりは、ねっとりと濃厚に甘い。それまでケーキとチョコレートを愛好し、和菓子といえばせいぜいどら焼きくらいしか食べたことがなかった私にとって、さすがにちょっと重めの甘さだった。

それからお抹茶を少し口へ……。

目を開かれた思い。

口に残っていた重めの甘味が、すっと洗われて胃の方へ消えていく。

しかも喉を通過する抹茶は、甘かった。

ねりきりの甘みとは違う、さわやかな甘みだった。


パンやお米をたくさん噛んでいると甘みが出てくるように感じられる。

お砂糖の入っていない甘み。あんな感じ。


私は「え!?」と抹茶を眺め、また飲んでみた。

二口目は、苦さを増して感じられた。

和菓子のおかげなんだろうか? と思って、ねりきりをもう一口食べてから、またお抹茶。

うん、最初の感動ほど劇的ではないけど、味の感じ方が変わる。

それまでの半生にない感覚だった。



その後、私がすぐに和菓子好き・お抹茶好きになったかというとそうではなく……笑。



お茶が平気で飲めるようになった、というか飲まずにはいられなくなったのは、中1で「黒執事」にハマってから。緑茶党になったのは最近のことで、主に紅茶派で通してきた。


ただあのワークショップ以来、一貫してねりきりは好きだし、ねりきりを食べる時にはぜひともお抹茶を合わせたい……と思ったところから、私の茶道への興味は始まっていた気がする。

あの時私たち自身が抹茶を点てさせてもらえたことで「抹茶は自分で点てられるものだ(お店に行かなければ美味しいお抹茶に出会えないわけではない)」ことを体験させてくれた講師の方は、本当に偉大だったと思っている。


もしこの短文によってねりきりとお抹茶に興味を持たれた方がいたら。

ねりきりはぜひ和菓子屋さんで買ってください。せめてシャトレーゼに行くことをお勧めします。最初はぜひともそれなりに美味しいものを食べて、ぜひねりきりを好きになってください。

いつかお抹茶をお点てします。

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