BEANS入会試験編 ――参
お久しぶりです!漱助です!
更新が遅れてしまいすみませんでした…学校の色々が忙しかったのです…
これからは週一か週二くらいで更新していけたらなと思ってますので今後もよろしくお願いします!
それでは、本編をどうぞ↓↓↓
「……A、級」
ごくり、と唾を飲む。眼前の”魔”は未だ動き出す気配がなく、まるで獲物を見定めるかのように、ゆらりと首をもたげていた。
(大丈夫、……やれる)
水森は必死に自分に言い聞かせた。しかしその両足はどうしようもなく震え、目の前の”魔”に対する危険信号を発していた。
「”人魚姫”」
水森は、手に持っていた水刀刃の形状を変化させた。やがてそれは小型の刃、水剣へと変化し、新たに左手に水盾を創り出して、構えた。相手は格上、防御が必要だと判断したのだ。
――来るぞ。
”魔”がゆらりと動く。水森は盾を構え、回避姿勢を取った。
……そして、ここで攻撃しなかったことは、結果的に水森自身の命を救うことになる。
”魔”がゆったりと右腕を振り上げ、そして……。
「……ぁがっ!」
目にも留まらぬ速度で振り下ろされたそれに、水森は大きく吹き飛ばされた。
(完全に油断してた……!盾がなかったら死んでたぞ!)
そう、”魔”の動きがあまりに遅かったために、水森は無意識レベルで油断してしまっていたのだ。……しかし、その油断がなくとも、水森はきっと被弾していただろう。そのレベルで、相手が圧倒的に格上なのだ。
”魔”は瞬時に距離を詰め、強烈な蹴りを食らわせてくる。盾でどうにか防ぎ、
「はっ!」
気合一声に、水森はその脚に刃を突き立てた。
「……っ!?嘘だろ!?」
刃は、全くと言っていいほど通らなかった。まるで金属音のような音を立て、弾かれてしまったのだ。
その隙に、”魔”は右腕で水森の頭を掴み、
「……があっ!!」
その掌から強烈なエネルギーを発して水森を再び吹き飛ばした。
(……勝てるのか?俺は……)
そこで、水森はようやく、取るべき行動を取った。
胸ポケットにしまわれている通信機を取り出そうとしたのだ。
……しかし、
「なっ……!?」
当然と言えば当然、先程の猛攻で、通信機はどこかへ吹き飛んでしまっていた。
「っ!どこだ!?」
水森は慌てて周囲を見回す。そこへ、再び”魔”のエネルギー球が飛んできた。
慌ててそれを躱しながら、通信機を探す。
「あった!あれだ!」
ついに水森は、それを発見した。最初に吹き飛ばされた拍子に落ちていたようだった。
水森は急ぎ、通信機を取りに走った。次々に飛来する”魔”の猛攻をかわしながら。
しかし、
「……くっ!」
攻撃に合わせて”魔”も少しずつ接近していることに、水森は気づかなかったのだ。
そして、水森が通信機だけに集中していたことは、最悪の結果を産んだ。
「なっ……!?」
”魔”が通信機を踏み砕いたのだ。
「嘘、……だろ」
水森はその場にゆっくりと膝をついた。”魔”はまるで勝利を確信したかのように動きを緩め、膝をつく水森にゆっくりと近づいてくる。
(終わりだ。……俺はここで、死ぬ)
死を確信した水森。
《……力が欲しいか?》
(これは……。あの日の……?)
《翔太!》
《大丈夫だ、兄ちゃんが絶対助けてやる!》
《力でもなんでもいい!だから翔太を、翔太を……!》
助けてくれ!!
「っ!!」
水森は弾かれるように、その場に立ち上がった。”魔”も水森の気配の変化を感じ、やや姿勢を低くして構える。
(そうだ、そうだよな。しっかりしろよ、水森康志)
水森は己を鼓舞して、叫ぶ。
「俺は……っ!お前を倒して、強くならなきゃならないんだ!!」
そして、水森の体が徐々に変貌を始めた。
満を持して、叫ぶ。
「人魚姫……獣変化!!」
それは、能力者たちのすべてが持つ、最強の能力。
目の前の能力者以外の種族を殺し尽くすまで戻れなくなる代わりに、獣の如き力を手にする、能力者が「能力者」たる所以とも呼ばれる力。
能力者たちの切り札。……「獣変化」であった。
激しい水禍に包まれ、やがてそれが晴れると、中から正に「人魚姫」と呼ばれるべき姿をした水森が現れた。
顔立ちは中性的になり、両腕と両足に大きな鰭のような鎌がある。全体として人間とは呼べないような体色をした彼は、”魔”に向かって高らかに宣言した。
「今からお前を……倒すっ!!」
そして、音速を超える勢いで飛び出し、”魔”の右腕めがけて鎌で斬りかかった。”魔”もエネルギーを凝縮させて防御の構えを取る。
腕と腕が触れ合う刹那、先程のような金属音が高く鳴った。しかし先程と違うのは、水森がやや優勢である点である。
「いっけぇぇぇぇ!!!」
気合の声とともに、”魔”の右腕が……斬れた。
「よしっ!」
すぐに後ろに飛び退って、再び構える。
しかし、”魔”は一瞬バランスを崩したかと思うと、すぐに左腕を右腕の付け根あたりにかざし、瞬く間に右腕を再生してみせた。
「魔力が無尽蔵だから実質無敵ってことかよ、畜生」
”マーメイド”はぼやき、
「でも無限じゃあねぇんだろ?……だったらその魔力が切れるまで斬り刻んでやる!」
そう言って再び飛びかかり、今度は左腕から右足にかけて”魔”を袈裟斬りにした。
一瞬苦悶の声を上げる”魔”だったが、それも再生してしまう。
(再生の隙を与えるな!動き続けろ!)
水森は素早く動き続け、”魔”をあらゆる方向から斬り続けた。対する”魔”はなすすべなし、形勢逆転。
……かに見えた。その次の瞬間、
「が……っ」
(何が……起きた?)
”マーメイド”は”魔”の変化して刃と化した右腕に、首を貫かれていた。
(……こんどこそ……死ん)
”マーメイド”が完全に死を覚悟した、その瞬間だった。
雷鳴が轟き、”魔”の右腕を両断したのだ。
「っ!?」
”マーメイド”は宙に投げ出され、地面に激突する……寸前、柔らかなものに受け止められた。
「癒やして。……”女神”」
聞き覚えのある声が響き、水森の首は瞬く間に癒えた。ついでに何故か「獣変化」まで解けてしまった。
水森は一瞬咳き込んでから、言った。
「神守……」
「”コール”だよ、”マーメイド”くん」
声の主、……神守は静かに笑って、水森を見つめた。




