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狩野の留守電

「童夢、いいか、落ち着いて聞いてくれ。


 あの後、織田真理について色々と調べてみた。あの女、とんでもねえぞ。


 まず行方不明になっているお前の同僚たちだが、調べてみたところ全員が不審死を迎えている。刺殺された二人はもちろんのこと、他の奴は山からの滑落死に風呂での溺死。飲酒運転の末にフェンスへ突っ込んで死んだ奴もいれば、線路に転落して轢死体になった奴もいる。


 どいつもこいつも不審死の前に織田真理と関わっていて、直前に大量の借金をしている。この前の二人は明らかに他殺だったから聞き取りがあったんだろうが、他のは言ってみれば事故死だ。警察も織田真理の存在には気が付いていないようだから、不審死とは言っても一件一件が関連のない事故死として処理されたようだ。


 織田真理のその後だが、歌舞伎町で豪遊する姿が目撃されている。聞き込みは自分でやった。俺も元歌舞伎町の住人だったからな。知り合い経由でコンタクトしたら色々と教えてもらえた。袖の下を渡してだが。


 それで彼女の写真を関係者に見せたらすぐにピンと来たようだった。なんでも派手に遊ぶので有名な女なんだそうだ。街ではマリアと名乗っていたそうだ。人呼んで豪傑のマリアだそうだ。ラノベのタイトルみたいな二つ名をしていて、実際には人殺しだけどな。……んなこたあどうでもいい。


 ただ、あの見た目だ。「珍しく名前負けしていない美女の太い客が来た」って、ホスト連中は喜んでいたらしい。特に彼女の担当ホストはな。


 それで豪傑のマリアはその異名通り、いっぺんにつきウン百万もするシャンパンタワーをたびたびやることで有名だったそうだ。


 よほど金持ちなんだろうと噂されていたそうだが、その金の出どころは誰も知らない。ホストに貢げなくなったら風俗勤めが黄金ルートってところだが、彼女にその店を紹介した奴はいないそうだ。ついでに言えば子供がいるなんて話も聞いたことがないってよ。


 おい、童夢よ。あの女が心優しきシングルマザーか。……どうやら俺たちはとんでもねえ食わせ者に出会っちまったようだぞ。


 今のは朝にも話したよな? 部分的にではあるけどよ。


 それで、昼間から最悪な知らせがきた。


 織田真理を張らせていたパシリがいたんだが、そいつが銃で撃たれた上に滅多刺しの死体となって発見された。最近連絡が取れないと思っていたが、真相は俺の知らないところで殺されていたっていうオチだ。


 死体の損傷が激しかったようで、人物特定に時間がかかったのもあり、俺への連絡が遅れたそうだ。さっき警察が来て、散々嗅ぎまわってから帰っていったよ。俺にも何らかの嫌疑がかかっているのかもしれないな、クソが。


 要はそういう事だ。お前もあの女には」


 次の瞬間、爆発するような音が響いた。耳をつんざく騒音に驚き、思わずスマホから耳を離した。ふいに録音が終わる。いや、強制的に終わらされた。


「おい、今のは……」


 疑いようもない。さっき聞こえたのは銃声だった。


 となると狩野は――


 背筋が寒くなる。ひとまず警察を呼ばないと。110――スマホのナンバーを押す。


 だが――


「繋がらない?」


 上部の表示を見ると、「電波のいい所に移動してください」とあった。場所を移動してみたが状況は変わらない。会社のWi-Fiも死んでいるようだ。誰かが故意に外との連絡手段を断ち切ったとしか思えない。まさかこんなところで金田一みたいな状況に追い込まれるとは……。


「うわああああああ!」


 あまりの絶叫に思わず振り返る。受電する大部屋の方から上司の悲鳴が聞こえた。


「……なんだ?」


 ひたすら嫌な予感しかしないが、このままここにいれば延々と得体の知れない気持ち悪さを抱えて残りの時間を過ごすだけだ。


 次々と色々な事件ばかりが起こるが、逃げているわけにもいかない。俺は大部屋へと戻ることにした。


 ――だが、すぐ後で俺はこの決断を死ぬほど後悔することになる。

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