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梨乃ちゃんの報告

 ――夜中になって、本業が終わる。


 すかさずスマホを見る。梨乃ちゃんからの報告が入っている。すぐ目を通した。


 メッセージは小分けにして、少しずつ送られてきていた。画面を眺めていると、立て続けに梨乃ちゃんのメッセージが流れてくる。


「おつかれさまです」


「言われたとおりに真理ちゃんと話してみました」


「結論から言うとよく分かりません」


「他の話題だといつもの真理ちゃんで快活な感じでしゃべるんですけど、どうしてか童夢さんの話題になると黙ってしまいます」


「そのあとは話しかけても全く返事がなくなるので、あたしも正直こわくなりました」


「なんていうんですかね。見た目はかわいいけど目つきの悪い人形みたいになる感じです。こう、こきーんと固まって動かない感じ」


「こわいので試しに別の話題を振ってみると、まるで石化がとけたみたいに快活な真理ちゃんに戻ります」


「昔、大きな音を出すとおどりだす花の人形があったのをテレビで見ましたけど、あんな感じ?」


「戻ったのでいけるだろうと、関係ない話題をしながらサラっと童夢さんの話を引き合いにだすと、やっぱり固まって動かなくなります」


「固まった真理ちゃん。すごくこわいんです。ふつうの女の子ってこんな目しないよね?ってぐらい、ぎゅーってどこか遠くを睨んでいるんです」


「本人には言えないですけど、なんか悪霊でも憑りついているんじゃないのっていうか・・・」


「正直、あたしもすごくこわくなっちゃって、それ以上童夢さんの話を振れなくなりました」


「なんかこんな感じですいません」


 土下座するウサギのスタンプ。sorry――梨乃ちゃんの報告は以上だった。


 俺は「ありがとう。参考になった」と返信する。その場でしばらく物思いに耽る。


 たしかに梨乃ちゃんの報告は参考になったが、真理ちゃんが俺のことを蛇蝎の如く嫌っていることがはっきりとしただけの話だ。彼女にどうしてそこまで嫌われたのかは全く分からない。


 俺の心理を見透かしたかのように梨乃ちゃんから返信が届く。


「童夢さん、彼女になんかしました?」


 やはり第三者の考えとしてはそうなるだろうな。だが、俺が多重人格障害を抱えてそれに気付いていない限りはそんなことはなかった……はずだ。少なくともそこまで嫌われる何かをした覚えはない。


「特にやっていない。もしかしたらセクハラとか気に障る発言があったかもしれないけど、少なくとも真理さんを傷付けるような意図で発したものはないはずだ。自覚がないだけで、何かしている可能性はあるけど」


 長い返信になったが、俺の今抱えている気持ちをそのまま文字化した。


「なんなんでしょうね」


「何なんだろうな」


 二人で思い悩む。既読が付いて、数分が経過する。


「ひとまずあたしはまだ彼女と仲がいいですから、時間をかけてでも情報を引き出しますね」


「悪いな」


「いいえ。あたしだって童夢さんと真理ちゃんが仲悪いなんてイヤですから」


「ありがとう。頼んだ」


 ニコニコして親指を立てるウサギのスタンプ。今日の作戦会議はここまでだ。


 しかし同世代の梨乃ちゃんをしても急変した真理ちゃんの心理は理解出来なかったか。そうなると偽らざるオッサンの俺に真理ちゃんの気持ちなんて分かるはずがない。それは無理な相談というものだ。


 ……となると、知らぬ間にシンママにとってタブーとなる発言でもしたか。身に覚えが全くないだけに、そういったことを考えると怖い。自覚のない状態で踏んだ地雷は、その後も延々と踏み続ける危険性があるからだ。


 頼むぜ、梨乃ちゃん……。大事な局面だが、梨乃ちゃんにおおよそ丸投げだ。だが、俺が下手に動いたところで状況が良くなるとは思えない。それどころか悪化するのが関の山だろう。


 一体何があったんだ、真理ちゃん。頼むから教えてくれ。


 俺は何を間違ったんだ。一体何を……?

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