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ずれによるモテ  作者:
2/3

中編

「佐藤さーん!」

 うわ。何処のイケメンに声を掛けられたかと思ったら、お昼の彼か。ふふふ。どうよ、このこなれ感。あれ?使い方、違う?さくっと定時に仕事を終わらせた私は、帰宅途中というか、退勤したばかりで会社を出た所です。

「はい?」

 毎度、自分の動揺が一切出ていない様子に自画自賛する。ブラボー!

「これ、いつもお弁当分けて貰っているから!俺、好きなんだ」

 はいはい。お菓子が好きなんですね。分かってますよ。誤解しませんよ。でも、自惚れたい・・・。気を取り直して、お洒落―!高そうだし、きっと少ししかないけど、美味しいんだろうなっていう外側ですよ。やったー!!テンション上がるー!でも、また好きを織り交ぜてきたよ。これさ、好きな人に意識して貰いたい時に使う技の一つだよね。こういうのは良く知っているんだ。耳年増だからさ。成程ね。こう、使うのか。勉強になる―。いつか使わせて頂きます。

「ありがとうございます」

 有り難く戴きます。ははぁーとばかりに押し頂きます。はい。そこで、解散だと思うでしょ?私も思った。でもなんか、紅さんがもじもじしているなと思ったの。格好良い人が言い淀むと可愛いんだよ。知ってた?え?どういうことなの?何のマジック?と慄いている所だったんだ。

「あ、あのさ。今日、これから時間ある?」

「はい」

「晩御飯一緒にどうですか!?」

 中々の勢いで誘われた。思わず頷くよね。

「はい」

「!本当!!じゃあ、こっち、っていうか、俺の行きたいお店で良い?」

「はい」

「あ、そう?えっと、好き嫌い、無い?」

「ありません」

 紅さんの焦りが伝わらない鉄壁の回答の私。でも、「はい」しか言って無いし、かなりテンパってる。餅つきの返しに入っているような、怒涛の攻めだね。これを逃したら、私にこんな幸運ないかもと思うとついね。晩御飯だけなら、こちらからお金払ってでも良いよね。しかも、このご尊顔を正面に、いや横の方が良い?もしくは斜め?どうする?どうしよう?うん。がっついちゃ駄目だよね。席は紅さんにお任せだね。


 食事は二人で対面に座って、美味しく食べました。お昼も一緒に、一緒に?食べているから、慣れたものよ。はははー。ごめん。ちょっと、無理した。男性と二人で食事に行った事なんて、無いし。多分、私のこと気に入ってくれているとは思うんだけど、何故?その疑問がぐーるぐるですよ。

「美味しいです」

「本当? 良かった。あの、さ。俺、この前カフェにいる所を見て・・・」

 あー。はいはいはい。これは友達紹介してくれパターンか!うんうん。知ってたよ。私の自慢の友人達は外見も中身も極上だ。ちょっと、非モテには疎いけどね。私の事も自然に混ぜて考えてくれるくらいのズレは御愛嬌だよね。

「ええ。皆、今は彼氏いないって言ってましたよ」

「!ち、ちがって。俺、佐藤さん狙いです!」

 !!直球で、きたー!!聞いた?今、聞いた?本当に、そう言った?幻聴じゃない?夢も見てない?大丈夫?大丈夫だよね?賭けでも、ドッキリでも無いよね?

「ありがとうございます?」

「いいの?狙っていくよ!」

「はい。紹介は」

「あの、三人に?いや、それはちょっと・・・」

「え?お知り合いですか?」

 私はあの三人に紹介して欲しくなさそうな人を始めて見た。ちょっと好みが偏っているのかな?

「うん。小中と同級生なんだ」

「そうでしたか」

 あー。見慣れている方ね。隣の芝生は青く見えるってやつね。ええっ、私、青いかなー。自信は無いよ。皆無だよ。

「それで、外の友人から攻めないで、直接行けって言われたんだ。ちょっと、意気地なくてごめん」

 うん。あの三人に「私、狙い」だって言ったんだ。色々な意味で凄いな。攻めるね。私だよ?その他大勢に埋没する事は確実な私。でも、本人にとっては攻めてないのか?探りを入れているだけ?やったー。これで一気に信頼度が上がるよ。自分で言うのも何だけど、私達四人は滅茶苦茶仲良しだから。変な人間は近付けないよ!お互いにね。私も短い時間だけど、悪い人では無かったから、三人の誰かが好みだったら紹介しても良いかなとまでは思ったし。この間、会った時に誰も何も言っていなかったから、紅さんは純粋に好意を持って誘ってくれたんだっていうのは分かった。騙されている可能性はほぼ無いね。何事も絶対は無いけどさ。

「いえいえ。正直に言って頂けたので、嬉しいです。てっきりあの美人だし、性格の良い三人の誰かとお近付きになりたいんだと思って。こちらこそ、すみません」

「いや。俺、佐藤さんのことを聞けるチャンスだと思って。あの三人に佐藤さんは今、気になっている人がいないって聞いて、浮かれてて、端折っちゃったからで、謝る必要は無くって。・・・あの、俺と、関係を深めていってくれる可能性はありますか?」

「はい」

「やったー!!これから、よろしくお願いします」

「こちらこそ」

 ええっとさ。これは彼氏彼女の関係になったの?それとも、恋人?ねえ、誰か教えて。彼氏彼女の関係は恋人とは違うの?そこからだし、経験が無さ過ぎてさっぱりだよ。本人に聞く?無理。今は無理。何時かは聞こう。勇気出たら。この関係に慣れたら?それは無さそうだな。ずっと、ドキドキしているもん。私の心臓、大丈夫かな。

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