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本題。



 やっぱりお金かい? と、そう聞かれて、私は少し感動してしまった。


 おぉ、おぉ、いやらしい所を付いてくる人だ。そう思って感動した。


 答えにくい質問をズバッと切り込めるこの人は、視聴者にとっては「それ! それが聞きたかった!」となる人なんだろうな。


 さて、質問されたので答えましょう。


「いえいえ。まぁお金は欲しいですけど、テレビに出なくても何とかなりますから。ほら、私はDMの再生数が凄いことになってるので」


「おっほぉ、それ正直、どれくらいになったの?」


「頭が八で、九桁です」


「………一、十、百、千、……………えっ、は、八億っ!?」


「はい♡」


 さすがに驚いた正田さんは目を見開き、他のキャストもみんながマジかよって顔をしてる。動画一個で八億円はさすがにね、驚くよね。


「え、じゃぁマジでなんで? 有名になりたかった?」


「それも、もう既に有名になっちゃってますし」


「あー、そうね。そうだよね。……じゃぁなんで?」


「テレビに出る事で、私に利点があったからですね」


「ほーう? それってどんな? 聞いても大丈夫な奴?」


「えっとですね……」


「教えてよぉ〜! 教えてくれないと、おじさん気になって夜しか眠れなくなっちゃうよ〜!」


 おおー、これがテレビのトークですか。凄いなぁ、喋りやすい。


「簡単に言うと、マスコミ避けですかね?」


 発言内容がアレなので一応、司会さんの人に確認の視線を送る。すると親指を立てて良い笑顔が返ってきた。お手本見たいなサムズアップだ。


「まず、ですね? 皆さんに大前提として知って頂きたいのは、私の危険性です」


「……危険性? それは、レベルアップとか覚醒で手にした力のことかな?」


「いえ、それは些細な事です。能力はあくまで道具。使う人が正しく使えば良いだけですから。お巡りさんだって銃を持ってますけど、普通は危険だなんて誰も思いませんよね? 同じ事です」


 ふむ、ちょっと話す内容が難しいな。


 私が話し方を間違えると、ダンジョンアタッカーの人が全員迷惑するような風潮が生まれるかもしれない。


 それは避けたいので、慎重にお話しを進めよう。


「皆さんの中にも、私の動画を見て下さった人はたくさん居ると思います。そしてご存知の通り、私は銅級ダンジョンを攻略しました」


 本来のバラエティ番組べしゃりステージに有るまじき緊張感が発生するけど、許して欲しい。


 私にとってはめちゃくちゃ大事なことなんだ。


「その途中、と言うか序盤も序盤で、私のナイトは死にました」


 少しずつ語って行く。言葉がみんなに染み入るように。


 ここに居る人達はバロメーターなんだ。お茶の間の人々に私の言葉が届いてるかどうか、この場にいる人達のリアクションを見て判断するしかない。


 ここで世間に私の味方をして貰わないと、対マスコミ防御壁になってもらわないと困るので、テレビなんて慣れない場所だけど頑張ろうと思う。


「ナイトが死んで、私は覚醒者になりました。蒼炎を手に入れて、ナイトを殺したモンスターに、とにかく復讐したくて、たくさん暴れました」


 マナちゃんと吉田さんは動画を思い出しているのか、既に涙ぐんで袖を目に当てている。ナイトの死を悲しんでくれてありがとう。


 演技がどうとか、疑ってごめんねマナちゃん。でもその涙も演技だったら、私は結構ガチでキレるからよろしくね。ナイトの不幸に嘘の涙とか要らないから。


「それから三ヶ月、私は自分の心が壊れないように、モンスターを殺す人形になりました。じゃないと、背負ったナイトが悲しすぎて、多分私は生きる事を諦めちゃうから」


 ここまでくると、ステージはシンと静まり返り、正田さんも凄い顔で目頭を抑えて百面相してる。


「そんな経験を三ヶ月もずっとしてたので、私はもう、結構壊れてるんですよね。病院で目が覚めた時、すぐ来てくれたお医者さんの言葉がちょっと気に入らなくて、本気でその場で、その人を殺そうとするくらいに倫理が壊れちゃってます」


 もし本人がこの番組を見てたらビックリするだろう。殺される寸前だったんですよお医者さん。本当にごめんなさい。


「そして、それは今も治ってないんです。私は特定の条件が揃うと、多分簡単に人を殺しちゃいます。なまじ力があるので、それはもう簡単に、さっくり殺すと思います」


「…………おぉう。べしゃりステージ史上最も重い話しがぶち込まれた」


「ぇと、ごめんなさい。でも、大事な事だったんで、出来れば正直にお伝えしたいなと」


「いや、でもそれ、言っちゃって良いのかい? いま多分、お茶の間凍ってるよ? バッシングとか凄いことになるんじゃないの?」


「…………それでも、危ない人がちゃんと危ないって分からないのは、ダメだと思うんですよ。私は有名になっちゃったので、色んな人が私に興味を持つと思います。何も知らないまま私に近付くのは、凄く危険だと思うので」


 司会さんは唖然としてて、未だに良パスをくれるのは正田さんだ。本当にありがとう。めちゃくちゃ喋りやすい。


「えーと、それはつまり、フラムちゃんには近付かない方がいいってこと?」


「基本的にはそうですね。それと、私の取り扱いを間違えないで欲しいです。…………私も、人殺しに成りたい訳じゃ無いですから」


「……あ、そっか。自分で望んで殺す訳じゃないもんね」


「はい。……でも、その特定の条件を満たした人に対しては、殺したいって思っちゃうんですけど、でもだからって、積極的にダメな人を探して殺したいわけ無いじゃないですか」


「そりゃそうだっ!」


 ホントに助かる! 正田さんありがとう! あなたの出演する番組これからみんな録画するね!


「それで、私が普通の女の子で居れるように、助けて欲しいなってお願いがしたくて、今回ここにお邪魔しました。…………本当はもっと軽い感じでお伝えしたかったんですけど、上手く行きませんね」


「あーいや、それはこっちが煽ったって言うか、喋らせたからね。それはごめんね」


「いえいえ、喋るタイミングも分からなかったので、助かりました。正田さん、ありがとうございます」


「…………何この子めっちゃいい子じゃん」


 正田さんのおかげで、私が殺人鬼宣言みたいなセリフを吐いたのに会場の空気が温まってきた。ホントに助かるっ!


「それでですね、私の中の倫理というか、道徳心は壊れてまして。ダンジョンで過ごした三ヶ月がこびり付いてる私の心は、私の中のルールは、未だにダンジョンの中のままなんですよ。これは意識しても治せません」


「ルール?」


「はい。何があってもナイトの亡骸と一緒に、ナイトと一緒に家族の元に帰ること。それと殺されたナイトの復讐にモンスターを殺すこと。この二つが大きなルールなんですけど、未だに私の中にこびり付いてまして」


「…………すると、どうなるの?」


「私と家族を引き離そうとすると、私はその相手を殺します。家族は私の帰る場所ですから、帰還の邪魔をする存在は何があっても殺します」


「………………うん。なるほど」


「あと、家族に大きな理不尽が襲ったなら、その相手を殺します。帰る場所を壊す相手は絶対に殺します」


 気が付くと、私の毛先からチリチリと蒼炎が吹き出て、隣の芸人さんがガチめにビビってた。


「あ、ごめんなさいっ」


「ああいや、大丈夫だよ! フラムちゃんは辛いことがあったんだから、こんな小さな事でいちいち謝らなくて大丈夫さ! 気にしない気にしない!」


「ぇと、ありがとうございます」


 名前も知らないけど司会の相方さん良い人だ! 優しい!


 本気で怖がってるのに、本気で心配してくれてるのが分かるのでとても嬉しかった。良い人だなぁ。突っ込みも鋭いし、凄い人だぁ。


「えーと、それで、その事で物凄く困った事があるんですよ」


「ほうほう? それは、その殺したくなっちゃう感じの事で?」


「はい。私も人殺しになりたくなかったので、その困ったことを、ここで皆さんにお願いして、潰して貰えないかなと」


「……なかなか物騒な話しなのかな? さすがにお願いされたからって、誰かを攻撃するのはダメだと思うよ?」


「あ、個人に対する物じゃないんです。すごく単純な話しで、私が目を覚ましたせいでマスコミが家族に迷惑をかけてまして、もう少しで殺しそうなんです」


 そこまでやっと語って、会場が「あぁ〜、なるほど」って空気になった。


 この時点で、私は目的の殆どを達成出来た。あとは世間の好感度をなるべく落とさないで進めば良い。



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