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迷宮事変。



 

 迷宮事変。



 のちに、そう呼ばれる大災害がその日、世界規模で同時多発的に発生した。


 直径十メートルほどの大穴が世界各所に穿たれ、穴の向こうに異界が広がり、そこから創作物の中でしか存在しないような化物が這い出してきた。


 魔物、怪物、化物、モンスター、クリーチャー、エネミー、ヴィラン。呼び方はなんでもいい。兎にも角にも人類の敵であり、未知であり既知である想像と創造の姿をした攻撃性の生命体である。


 それは人型で二足歩行。背丈は130センチほどで、肌はダークグレーに染まっていた。


 口は頬まで大きく裂け、口内には鮫のような歯が並び、吊り上がった双眸は存在の醜悪さを表現する一因となっている。


 頭髪は無く体毛も確認出来ず、体は筋肉質でありながら痩せこけ、見た者にアンバランスな印象を与えるだろう。


 一糸まとわぬ暗灰の化物は、すぐさまゴブリンと呼ばれ始め、その名は世界的に使われるようになる。


 どんな国にも例外無く発生した謎の穴とゴブリン。国々はすぐさま武力を投入した。


 だが恐ろしい事に、腰蓑すら付けずに素手で暴れるだけの小さな化け物であるゴブリンは、近代兵器の効き目が著しく低かった。


 最終的に重火器すら持ち出してやっと討伐出来る有様で、国土が広く軍の手が足りない国や、そもそも満足な軍事力を持たない国は壊滅的なダメージを受けた。


 具体的に言うとバチカンなどの軍を持たない小さな国は実質滅びた。他国の軍事支援が間に合わなかったのだ。


 穴から地上へのゴブリン侵攻は迷宮事変発生から丁度二四時間続き、ゴブリンの討伐に成功した国はすぐに謎の穴を武力によって封鎖した。



 ここまでが、五月六日に発生した迷宮事変の顛末の--。

 

 --半分である。



 迷宮事変。その大規模災害で最も注目された点は、現代兵器すら押し返すポテンシャルを持ったゴブリンでは無く、迷宮事変によって喪われた多くの命の数でも無く、とある動画サイトだった。


 ダンジョンムービー。


 迷宮事変発生と同時刻、ワールドワイドウェブ上に突然現れた一つの動画サイト。


 ダンジョンムービーと銘打たれたそのサイトは、世界各国がどれだけ手を尽くそうとも詳細は知れず、どこの誰が、どこから、どんなデバイスで作ってアップロードされたのかも分からない異常なサイト。


 ただ人知れず、経歴不明な謎サイトが世界にデビューしただけなら良かった。だが、ダンジョンムービーが取り扱う動画とは、まさに迷宮事変で発生した穴に関する物だった。


 世界中で突然空いた十メートルもの巨大な穴は、その発生時の崩落に巻き込まれた人々を穴の内部へと飲み込んでいた。


 ダンジョンムービーに映るのは、そんな不幸な事故に巻き込まれた、哀れな被害者達。


 完全リアルタイム生配信。


 崩落に巻き込まれ奈落へ落ちた人々は、ただ一人の例外も無くその様子を配信され、そしてどうやって撮影してるのかも分からない。



 これは、不幸にもそんな災害に巻き込まれてしまった、一人の女の子の話しである。



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