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練習の成果発揮!!

 勝った。


 え?それだけかって?


 これ以上言う言葉がないんだからしょうがないだろ。


 いや、僕としてもぜひとも僕の活躍を過大に、壮大に、誇張してお話したいものだが、あまりにも奴らのワンサイドゲームすぎて語るものがない。


 この惨状を生み出した犯人は、皆の予想通り龍騎と我が親友である颯人。


 試合の経緯を仕方なく説明しよう。


 試合開始とともに颯人がボールを少し持つと、いつの間にかゴール前に龍騎が走り込み、直接パスを通して後はミドルシュートで点数が決まる。


 相手ボールで始まるも、ふとした瞬間にボールをあの二人が奪い取り、同じような流れで点数が決まる。


 後はその繰り返しで、試合は圧倒的点差で我らの勝利であった。


「な、なぁ颯人。サッカー部ってみんなお前らくらい強いのか?」


「自惚れもあるかもしれんが、俺はまぁまぁ上手い方だと思うからそこまで気負う必要はない。と、思う。多分」


 この颯人とかいう男は全身を高スペックという名のハイブランドで固めているにも関わらず、謙虚の呪縛に絡まれている。


 そのため、こいつのまぁまぁ強いは、おそらくサッカー部の同学年でも1、2を争う強さと想定出来る。


 実際、応援テントに戻ると


「やっぱりサッカー部エースは違うなぁ」


「これなら次期キャプテン決定だな」


「いや別に上手いからキャプテンなんてルールはないからな。あの人がおかしいだけだ」


 そんのような会話をしている颯人が目につく。


「ん?だとしたら、颯人に合わせられる龍騎って……」


 そんな疑問が、まるで牙を剥くようにある惨状を生み出す。


「颯人君凄い上手でしたね!!サッカー部の方々と比べても遜色ありませんでしたよ」


「こ、小春!!ま、まぁ俺も今日のためにめちゃくちゃ練習してきたからな。練習の成果が発揮出来てラッキーって感じだ」


「それは素晴らしいですね!!下向きに努力する方はすごくカッコいいですよ」


「カ、カッコいい!!そ、そう言ってくれると嬉しいぜ。直向きに努力した……ん?」


 …………


「Hey グルグル。人 埋め方 コンクリート」


『トゥルン。まずは骨を溶かせる強酸を用意しましょう』


「うっし。殺るか」


「何ナチュラルに人を殺そうとしてんだ」


 クラスメイトからの賞賛の嵐を受け終えた颯人が帰ってくる。


「だってさ〜。あの役目って僕の立ち位置じゃないの?嫉妬で気が狂いそうなんだけど?」


「今日はしょうがない。明日活躍出来るよう頑張るしかないな」


「はぁ〜」


 あんな甘酸っぱい青春みたいな空気見せられると、なんで僕って好かれてるか疑問に思っちゃうな。


「そんな辛気臭い顔すんな。もうすぐお前の大好きな夏月先輩が女子コートで試合だぞ」


「何!!」


 ヤッベ、完全に忘れてた。


「行くぞ颯人、ボケっとしてると置いていくからな!!」


「忘れてた奴のセリフじゃねーな」


 全力疾走する僕の後ろを、颯人が追いかけ


「ちょっとごめん佳月さん」


「どうしたんですか?颯人君」


「龍騎と話してる時、少し会話が合ってなかったところがあったんだが、何かあったか?」


「どうして私が龍騎君と二人()()で喋っていたと?」


「ふーん……。いや、何でもない。時間取らせて悪かった」


「いえ、お気になさらず」


 ◇◆◇◆


 女子コートつくと、やはり大勢の人が存在するが、少し気になることがある。


「男子が多いな……」


 冷華の試合の時にはちょうど男女比が5体5だったが、僕の見る限り、この場所の男女比はおよそ9体1。


 妙だな……と青酸カリをおつまみにしていると、颯人が合流し、それと同時に試合が始まった。


「随分遅かったな」


「すまん。ちょっとした野暮用だ」


 そんな短いやり取りをした直後、大きな歓声が起きる。


 どうやら少し目を離した隙に、美桜先輩が凄まじいゴールを決めたようだ。


「夏月やっぱりすごいな」


「ああ。本当にけしからん」


「ボールが3個あるんじゃ、キーパーもどれを見ればいいか分からないからな」


「おっぱいしか勝たん」


 皆が美桜先輩のシュートに驚きを禁じ得ない様子だ。


「すごいな」


 颯人も感心するような声を上げる。


「僕もそう思うよ」


 同意を示す。


「夏月先輩は男子の枠にいても大丈夫そうだな」


「へ?……あ!!そ、そうだね」


 な、なんだ、サッカーの話かよ。


「女子にしては明らかにレベルが違う。いくら運動神経がいいといっても、あれは異常じゃないか?」


「そりゃーあの人は旬先輩の幼馴染だぜ?小さい頃から一緒に仲良くサッカーで遊んでたに決まゴハッ(吐血)」


「勝手に自滅すんな」


 幼い頃の仲良し二人の姿を想像し、ジェラシックダメージを受けてしまう。


 ちなみにジェラシックとはジェラシーと某パークを掛けて、恐竜ほどの大きなダメージを表している。


「だけど部長の顔、なんか辛そうじゃないか?」


 運営テントの下にいる旬先輩の姿は、まるで何かを耐えるように苦しそうであった。


「どうせお腹が痛いか、美桜先輩のウォーターメロンを見てしまい、昂った気持ちを周りにバレないようにしてるかのどっちかでしょ」


「実質一択だな」


 颯人もやはり、正解が後者だと察したようだ。


「案外、お前みたいに昔のこと思い出して自滅してたりな」


「まさか、かの御方が僕のような下等生物と同じようなことをしてるはずないでしょ」


 そんなこんなで美桜先輩の試合が終了した。


 内容をダイジェストで説明すると、バルンバルンで柔らかそうって感じだった。


「会長お疲れ様です!!」


 遠くにいる顔が少し青い旬先輩が『僕?』と指をさすが、同じく運営をしていた冷華が説明していた。


「ありがと、そー君。私の試合どうだったかな?」


「すごく胸にくるものがありました!!瞬きするのも惜しいくらい素晴らしい光景でした!!」


 僕の熱意に周りの皆もうんうんと頷く。


「えへへ。そう褒められると嬉しいな〜」


 後ろで手を握り、照れ隠しのためかモジモジと動く美桜先輩。


 その姿は一見あざといように感じるが、本質はそこではない。


 手を後ろで組むことによって、服が張り付き強調される、例のブツである。


「ところで美桜先輩。最初バスケするって言ってませんでした?」


 僕の質問に少し残念そうな顔をする。


「そうなんだけどねぇ〜。友達が旬君と同じサッカーにした方がいいって言って、いつの間にかこっちになってたんだよね〜」


「ふ、ふ〜ん、そ、そうなんですね」


 周りの人達が確実に外堀埋めてきてますやん。


「でもおかげで今回は多分勝てると思うなー」


「美桜先輩は優勝でも狙ってるんですか?」


「うん。まーねー。今回も賞品がいいから頑張るよー」


 賞品?


 クラスで優勝したら先生がお菓子でも買ってくれるのかな?


「頑張って下さい。応援してます」


「うん。ありがと。そー君の試合もちゃんと応援行くからね」


 ホワホワとした空気が流れる。


 やはり、美桜先輩といると先程まであった嫌な気持ちが無くな


「じゃあ約束があるから旬君のところに行ってくるね」


「グハッ……い」


 もはやここまでくると主人公タイプの旬先輩が竿役おじさんにしか見えなくなってくる。


 美桜先輩が去り、颯人が話しかけてくる。


「なんでお前泣いてんだ?」


「し、知らない。次は体育館行くからちゃんとついてこいよ」


 トボトボ体育館へと歩く僕の後ろを颯人が追いかけ


「すみません先輩。先輩って確か夏月先輩と同じクラスでしたよね?」


 近くにいた、サッカー部の先輩に声をかける颯人。


「ん?なんだ颯人。お前も美桜狙いか?」


「あ、いえ、少し聞きたいことがあって。夏月先輩って最初バスケだったのにどうしてサッカーになったんですか?」


「ん?それはだな……そういえばどうしてだっけ?」


 すると、一人の女子生徒が話に入り込む。


「美桜ちゃんをサッカーに推薦したのは私だよ」


「それまたどうしてですか?」


「そりゃ、美桜ちゃんと櫻木君は一緒の方が良くない?」


「そうですか……」


 少しげんなりする颯人。


「美桜ちゃんと仲が良い子もみんな言ってたから、それも後押しになったね。あれ?でも、実際言ってたのは私達だけだったかも?」


 その言葉に口角が上がる。


「……。なるほど、ありがとうございました。お時間取らせてもらい申し訳ありません。それでは先輩方、失礼しました」


 足速に去っていく颯人。


「不思議な子だね」


「普段は真面目な奴なんだけど、今日は珍しく変だったな。だけど、あいつのあんなに楽しそうな顔、初めてみたよ」


 ◇◆◇◆


 本日二度目の体育館。


 やはり、そこには人が集まって……なかった。


「卓球って人気ないのか?」


「お兄、それは色んな人を敵に回すからやめといた方がいいよ?」


 僕は今、無慈悲な空の見えない卓球会場にやって来ていた。


 流れ的に次は小春か真白と考えていた人もいるだろうが、残念。


 そんな常識ここでは通用しない時とする時がある。


 覚えておけ。


「おいバカ、誰もいないところに話しかけるな。俺のいないところでしろ」


「颯人さん。うちのバカな兄を止める方向に出来ませんか?」


「悪いな、雫ちゃん。俺にはもう、あいつを止められない。力不足ですまん」


「僕は止まらーー」


「気にしないでください。無理なことを頼んだ私がいけないんです」


 わぁ〜辛辣〜


「そんなどうでもいい奴置いといて、颯人さん、応援に来てくれてありがとうございます」


「いや、俺も雫ちゃんの試合見たかったから」


「あ、ありがとうございます」


 ふっ、これがてぇてぇってやつか


 うちの妹様は僕と違い美人さんに生まれたため、昔からお似合いの二人だと、皆に認められていた。


「おい颯人、僕の妹を口説くな。殴るぞ」


 皆と言っても僕が含まれているとは限らない。


「お前の嫉妬心ヤバいって。4股ガチシスコンとか救いようないぞ?」


「それに、私は颯人さんを尊敬してるけど、別にそういう関係じゃないし」


 そうなのだ。


 この二人は昔から先のような関係が続き、お互いに恋心はないだの付き合ってないだの言っている。


 だが


「怪しいからしょうがない」


 颯人は小さな頃から堅物であり、あまり女の子と遊ばないが、僕の妹とだけはよく遊びに行くし、妹も颯人に心を開いており、僕が呼んでもいないのに家にいたこともある。


「本当に付き合ってないの?」


 僕の言葉にジト目の妹様がため息を吐く。


「違うって言ってるじゃん。それに、私じゃ颯人さんに釣り合わないよ」


「そうか?雫ちゃん可愛いから俺の方が釣り合わないと思うが」


「そ、そんなことありませんよ!!」


 それから、お互いに謙遜と称賛を言い合う戦いが始まった。


 それはただのカップルの乳繰り合いのようであり、見ている方は普通にイライラする。


「なんで僕に付き合ったと言わないんだ!!そんなに僕を除け者にして楽しいか!!」


「い、いや」


「だから違うと」


 目の前で物的証拠を出しておいて否定する二人。


「じゃあ普段二人はこっそり会ってナニをしてるんですか」


「「それは……」」


 この話題になると、必ず二人は黙ってしまう。


 何も僕は本気で怒ったりはしていない。


 別に付き合ってたって言ってくれないのが寂しいのであって、それ自体はむしろ……


「はぁ、ほら雫。試合もうすぐだろ?はよ行け」


「う、うん。ごめんね、お兄」


 応援に来たはずが、むしろやる気を削いでしまったようだ。


「いつか話してくれるんだろうな?」


「ああ。必ず」


 男二人、ただ静かに試合を眺めた。




「あの子デカくない?」


「死ね」



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