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ストレス  作者: AI子
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せっかくの飲み会を断った。

家の近くで、会費も良心的で、気の合う奴等がたくさんいる飲み会だったのに、だ。

昨日の雨が悪い。寒いずっと外回りしていたのが悪い。

長湯してすっかり冷えたお湯の中にいたのが悪い。

仕事のトラブルで少しもめたのが悪い。


普段なら、雨が降ろうが外回りだろうがなんでもないんだ。

もめて、ストレスになって、そのストレスを風呂で洗い流してやろうと長湯して、体調を崩した。

パソコン画面から窓に目線を移し、昨日とはうって変わっていい天気の外を睨む。雲が多いが比較的温暖で朝はエアコンをつけなくても平気だった。

世間は行楽シーズンで、街中でも観光バスを目にするようになった。チェックのネルシャツとアースカラーの帽子、何年物のくたびれたズボと何が入ってそんなにパンパンなのか謎のリュックを背負った制服集団が眼下を通り過ぎる。おっと、これは決して悪口ではない。ろくに紅葉も見ることができない煩雑さに心を蝕まれているだけであって通常は心穏やかな青年だ。そのつもりでいる。ただ、決められているのかってくらい同じ服装をしている集団が目につく。学校制服や職場の制服ならまだしも、本当はそれも嫌だけれど、周りと合わせて主義主張をしない、出来ない、やりたくないって格好が嫌いなだけだ。

ああ、ストレスでどうにもイライラする。イライラするからストレスが溜まっているのか、ストレスでイライラするのか、卵が先かヒヨコが先かで悩むようなものだ。



「佐東さん、今ちょっといいですか?」

 ストレスの原因が声をかけてきた。椅子をクルリと向ける。目立たないスーツ、無難なネクタイ、注意されないギリギリのぼさぼさ頭。周りに合わせることをよしとする集団の一員だ。

「なに?」

 窓から外を見ていた手前、忙しいとは言えない。仕方なく返事をした。

「昨日の件なの、ですが、やはり、難しいと言う結論が、話し合いで出たのですが。」

 歯切れの悪い喋り方だ。聞いていてますます苛立つ。

「あのさぁ、難しいから出来ないじゃなくて、難しいけれどどうやったらやれるのかを考えて欲しかったんだけど?」

 ついつい語気が荒くなる。話し合いって言ったって近くの机の奴等で雑談していただけだろ。原因ばかりに目を向けて解決策が出てこない烏合の衆め。

「どう、やったら、やれるか、ですか。」

 目線がどこを向いているのか分からない。

「地元商店に協力を仰ぐとか、チラシをポスティングするとか、他の課にも声をかけてみるとかいろいろ出来ることはあるんじゃないのか?」

 こんなこと、自分たちで考えて欲しかった。

「商店は今まで、あまり関わりが無かったのですが。」

「そんなの今から、買い物行って天気の話でもなんでもしてくりゃいいじゃないか。」

「そんな事からでいいのでしょうか?」

「まずは、顔を知ってもらう。初対面の相手よりも顔馴染みの方が話し聞く気になるだろ。」

「チラシは、どうやって作ったらいいでしょうか?」

「プレゼンの資料があるだろ、あれをもっと大衆向けに要点だけ捉えたものに直せばいいじゃないか、それこそ隣の課のデザイナー捕まえて相談すりゃあいいんだよ。」

「はあ、」

 資料を持ったまま目も合わせようとしないストレス製造機。もとい、新人の川元。新人って言ってももう1年は過ぎているのだが、同じ課にまだ川元よりも新しい人が入っていないのでいつまでたっても新人扱いだ。

まったく、ため息をつきたいのはこっちだ。頭は痛いし、体もダルイ。パソコン画面が注視出来ないくらいに弱っている。ああ、ヤバい。眩暈まで起こしそうだ。

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