2 指圧師、追放者パーティと出会う
言われもない言いがかりまでかけられて5年間も所属していたギルドを追放された……
指圧しかできなかったから……
でも俺はそれに磨きをかけてずっと頑張ってきたはずだったのに……
勢いで外に飛び出してしまったから荷物も何もない。
でも今戻ったら本当に殺されかねない……それもおかしな話なんだけどな。
はぁ……
これからどうしよう。
金も持ってないから宿に泊まることもできない……
今後のことを考えるって言ってもそんなにすぐに気持ち切り替えられないし。
武器は何一つ使えない。
魔法だって一つも覚えられない俺はギルドに所属したはじめこそお試しでクエストに連れて行ってもらっていたけど、いつの間にか全く頭数にも入れられなくなっていた。
非戦闘員だって言う自覚はあったからそれでも何か役に立とうと思ってクエスト前に出発するメンバーの指圧をやりだしたのが始まりだった。
当初はプットは指圧がうまくてそれだけでギルドにいる価値があるなんて言ってもらえたものだったけど、それももう数年言って貰えなくなっていた。
ギルドのやつら、みんな心のどこかでギルドリーダーと同じようなことを思ってたってことなのかな……
それがBランクの祝勝会だって時に運悪く爆発してしまったのかもしれない……
「あっ」
考え事をしながら歩いてたらいつの間にかクエスト受注の集会場の前まで来てしまった。
「なんか、懐かしいな……」
ここに来るのももう5年ぶりだ、変わってないな……
冒険者ギルドに憧れて16歳の時に飛び込んでから今や21歳か……
無駄な時間……になってしまったのかな……
「はぁ……」
ため息? 俺がしたんじゃない、一体誰が?
声がした方を振り向くと冒険者らしい鎧を纏った男2人とローブを着た女1人が肩をすぼめながら集会所を眺めてた。
「元気出そう……ギルドを追放されただけ、殺された訳でもないんだ」
「あぁぁ……俺達これからどうやって生きてけばいいんだ……」
「最後の思い出にここまできたけど、私達だけで達成できるクエストなんてあるのかな……」
この落ちこんでる3人組、俺と同じくギルドを追放されたんだ。
年齢も俺と同じくらいか……ついてないことだけど偶然ってあるんだな……
「一度くらいクエストを達成してみたいだろ? 最低ランクならクリアできるものがあるさ……きっと……」
「そんなクエストすら今まで連れて行って貰えなかったじゃないか」
「うーん……とりあえず依頼だけでも見てみようよ」
「そうだな、行けそうなのがあるかもしれないし」
実力不足でギルドを追放されたって感じか……まあよくある話だ。
それにしても最低ランククエストに挑むのすら躊躇するって、見た目の装備は割としっかりしてるのに慎重なんだな。
最低ランクですらクリアしたことがないような言ってるけど、俺じゃあるまいし、いくらなんでも弱すぎるだろ。
何か理由でもあるのかな。
同じ境遇のこの3人が妙に気になってしまった……
「こりゃひどい……エネルギーの循環が悪すぎる……」
ちょっと近づいてリーダー格っぽい男の体を眺めてみたら案の定だ……
「あの……俺に何かついてますか?」
しまった! 気になってつい近づきすぎてしまった。
「すみません! ちょっと話している内容が気になって……思わずエネルギーを調べさせてもらっちゃいました……」
いきなりすぎて不審だったよな……素直に誤ったけど、怒らせちゃったかな……
「エネルギー? 調べるって……? 今何かやったんですか?」
はじめてそんなところ食いつかれた……前のギルドでも説明してたけどみんな流して相手にしてくれなかったのに。
「何かしたって言うか、チラッと体に流れるエネルギーを確認しただけで……」
「そんなもの聞いたことない……」
「見ただけでエネルギーがわかる? そんなバカな」
「ねぇ……アルト、早く行こうよ……」
あっ……なんか不審者だと思われてる……
エネルギーが見えるっていうのはそんなにおかしなことだったのかな……
他の二人は俺のこと警戒してるけど、アルトって呼ばれてるリーダー格の男だけは俺に興味ありげに質問してきた。
「本当にエネルギーなんていうのが見えるのなら教えてください、俺には一体何が足りないのかを」
必死な表情で俺に問いかけてきた、本気なんだ……
それなら正直に言ってやった方がいいよな。
「ちょっと見ただけだけど、ほとんど全てのエネルギーが滞ってて流れてません」
「んん? よくわからないけど、そのエネルギーっていうのが流れてないとどうなるんですか?」
「力が全く発揮できなくなります、今の状態じゃどこにでもいる子供にすら負けるほどです」
「だから俺は……でもどうすればエネルギーを流れさせれることができるんだ……」
本当は日々の訓練で地道にエネルギーの流れをよくしていく方がいいんだろうけど、この人思い詰めてるみたいだし、言うよりも実際やってやった方が伝わりそうだな。
「ちょっとごめんなさい」
アルトの背中にスッと周りこんで背中に手を触れた。
「えっ! ちょっと何を!」
「よしここだ、このコリを押せば……」
肩甲骨の間にあるコリを親指でグイっと押し込んだ。
「おいお前! アルトに何をしやがった!」
「アルト! 大丈夫!?」
一緒にいるこの二人、心配性だな……普通にコリをほぐしただけなのに……
手応えはあった、すぐに変化はあるはずなんだけど……
アルトは自分の手足を何度も繰り返し確認し始めた。
「体が……なんだこれ。力がどんどん溢れて来る……」
「面白かった!」
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