第一章 二話 勇者召喚
想像以上に書くのに時間がかかってしまいました。表現がわからず調べるのにも時間がかかってしまうのですね。
突然、元いた場所から景色が変わったため、世名(せな)は驚き周囲を見渡した。
目の前には大きな宮殿と周辺には、その宮殿の庭園と思われる広い平地があった。
庭園はなぜか草も木もなく、ただの広場のようになっていた。美しい宮殿の庭園としては相応しくないように思えた。
また、変なことが起きてる……本格的にバグを踏んでしまったみたいだ。
困った…… とても困ったことになっている……意味がわからない…… なんでこんなことになったんだ。と世名(せな)は困惑した。
ただし、先程の誰もいない街とは異なり、世名(せな)の近くには複数の人間がいたのだった。
世名(せな)の近くに若い日本人と思われる容姿の男性が五人と、同じく日本人と思われる女性が三人倒れていた。
そして、かなり離れた場所ではあるが、庭園を取り囲むように十人の人間がいた。遠いため顔や性別は判断できそうにない。
世名(せな)はとりあえず、周囲に倒れている男女八人に声をかけることにした。
「あの……大丈夫ですか? 」と世名(せな)は一番近くに倒れていた二十代くらいの男性に声をかけた。
「う~ん……ん? あれ? ここどこ? 」と男性は目を覚まし、周囲を確認していた。
「あ、僕にもここがどこなのかはわからなくて……気がついたらここにいて……」と世名(せな)は男性を起こしながら言った。
「うわっ! 目が覚めたら目の前に美少女とかどういうこと!? てゆうか、日本語うまいですね」と男性は世名(せな)を見て驚きながらそう言った。
「あはは……ゲームのアバターですからね」と世名(せな)は苦笑した。
世名(せな)が男性と会話していると、周囲から
「ん~」
「なに……ここはどこ……」
「あれ? 俺何してたんだっけ? 」
と世名(せな)と男性の会話により倒れていた他の七人も徐々に起き始めていた。
――そのころ、庭園の周囲を取り囲んでいた人影も徐々に世名(せな)たちに近づいて来ていた。
「なんで、僕たちはこんなところにいるんでしょうか? 」と見た目中学生の男の子が言った。
「私もわからないわ……さっきまで学校にいたと思ったのに……」と高校生くらいの女性も言った。
あとから起きた数人は、状況を把握しようとしているものと、なにか考えを巡らせているもの、
軽いパニックになりそうなものと別れていた。
「みんな、一旦落ち着いてくれ」と一番はじめに世名(せな)が起こした二十代くらいの男性が言った。
「俺の名前は、一守 朝陽(いちもり あさひ)。二十二歳の大学生で日本人だ。俺もこの状況はよくわかっていないし、慌てる気持ちもわかるけどこんなときこそ冷静に行こう」と男性――一守 朝陽(いちもり あさひ)が言った。
みんなは朝陽(あさひ)に注目している。
「とりあえず、一番状況がわかってそうな……名前聞いてないけど、君なにかわかるかな? 」と朝陽(あさひ)は世名(せな)に訪ねた。
みんなの視線が一気に世名(せな)に向かう。
「あっ……えっと……僕もよくわからなくて、気がついたらここにいました……」と世名(せな)は小さな声で言った。
世名(せな)は注目を浴びることは苦手であった。
「この状況でなかったら、リアルボクっ娘金髪碧眼美少女って、テンション上げてたところなんだけどな」と朝陽(あさひ)は言った。
リアル? 何を言ってるんだろう? と世名(せな)は思った。
「あの、皆さんはプレイヤーですよね? 僕ログアウトできなくなっていて皆さんはログアウトできますか? 」と世名(せな)は他の八人に聞いた。
周囲の反応は世名(せな)の想定していたものとは異なっていた。
「ログアウトって何? 」と朝陽(あさひ)は少し困った顔で言った。
「プレイヤーってゲームの? ちょっとよくわからないです……あ、僕は五味 颯一郎(ごみ そういちろう)と言います。中学三年生です」と中学生くらいの男の子――五味 颯一郎(ごみ そういちろう)が言った。
他の人たちもみな、世名(せな)の発言を理解できたものはいないようであった。
どういうことだ? みんな『World Of Twilight』のプレイヤーじゃない? NPCなのか? と世名(せな)は困惑していた。
「自己紹介とかもいいけど、ここでのんびりしていていいのか? 遠くにいた奴らが近づいて来てるぞ」と体格のいい男性が言った。
言われて、みな周囲を確認した。世名(せな)も周囲を確認すると、杖? のようなものを持った男たちが世名(せな)たちに近づいて来ているところだった。
「彼らが危ない連中なのかはわからないけど、今の状況を知ってる人もいるかも知れないから話しをしてみよう」と朝陽(あさひ)は言った。
みんなは朝陽(あさひ)の意見に賛成して、杖を持った男たちが近づいてくるのを待った。
――
男たちは、服装が統一されており白いローブのような司祭服のようなものを着て、同じ装飾の杖をもっていた。
人数は十人で最初は取り囲むような状態から全員が宮殿側に近づいていき、宮殿を背にして世名(せな)たちの向かって整列した。
表情は無感情な者、蔑んでいるような者、顔面蒼白になっている者など様々であった。敵意ではないが不快感を与えるものが多かった。
そして、全員日本人らしからぬ見た目をしていた。
「……あの、ここはどこですか? あなた方は、なにか知っているんですか? そもそも日本語通じます? 」と朝陽(あさひ)が男たちに訪ねた。
すると、真ん中にいる一番老いた男性が話し始めた。
「ようこそ、『キトワ王国』へ。異界の勇者たちよ。」と老いた男性は日本語で言った。
世名(せな)たちは困惑した。
キトワ王国ってどこだ?『World Of Twilight』にそんな国あったかな? なにかの矯正イベントかな? と世名(せな)は思った。
「ちょっと、キトワ王国なんて国知らないわよ! 変な冗談はやめてよね! 」と高校生くらいの女性が言った。
「お前らは何なんだよ! 俺たちをどうしようっていうんだ! 」と大学生くらいの男性が言った。
何かがわかると期待していたため、みな不満と怒りが混じった反応をしていた。
そこに老いた男性が軽く手を上げた。
「静粛に、私にはその説明をする権限は無い。召喚した勇者を案内することまでが役目なのだ。」と老いた男性は言った。
全員が黙ってしまった。召喚や勇者などおおよそ普通に生きていたら目の前にいる老人から発せられるとは思ってもいなかったからだ。理解が追いつかずに混乱していた。
これは何かの強制イベントかな? と世名(せな)だけは場違いな想像をしていたが、このときの世名(せな)は今起きていることを全く理解していなかった。
全員が黙ったので、老いた男性は話しを続けた。
「では、私について来てもらおう。国王陛下に拝謁願おう」と老いた男性は言った。
老いた男性の言葉を合図に男たちは振り返り宮殿に向かって歩き出した。
ここにいても仕方ないと考えたのか、朝陽(あさひ)たちは男たちについて行こうとした。
その時突然、ローブ姿の杖を持った男たちの中で一番若そうな男性が口元を抑え、しゃがみ込んだ。――そして嘔吐した。
世名(せな)たちと向かい合ったときに顔面蒼白になっていた男の一人だった。
「アルフレッド何をしている! 」とローブの男性の一人が言った。
「申し訳ございません……耐えられなくて……本当にこんな……」と男性――アルフレッドが答えた。
朝陽(あさひ)たちは突然嘔吐した男性に驚きを隠せないでいた。
「あの、大丈夫ですか? 」と朝陽(あさひ)が声をかけたが、
「異界の勇者たちよ、彼のことはよい。他のものが介抱する。」と老いた男性が遮った。
老いた男性の言う通りに、他のローブの男がアルフレッドと呼ばれた男を連れてこの場を離れようとしていた。
どうやったのか、他の男が杖をふると何も無い綺麗な状態になっていた。
何なんだよ、このイベント。普通いきなりNPCが吐くようなシナリオいれるか? と世名(せな)は思っていた。
世名(せな)たちは理解ができないことが立て続けに起きたためとりあえず、ローブの男たちについていくことにした。
移動中には誰も何も話さなかったが、みんな不安を隠しきれないでいた。
こんなおかしな状況でなければ、王宮の中に飾られた美しい絵画や絨毯、装飾品にも気づいたであろうがみんな男たちについていくのに必死だった。
世名(せな)だけは、すごくリアルに作り込まれているな~吐くのは意味分かんないけど。と場違いな感慨を抱いていたのだが……