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災難勇者の帰還計画(仮)  作者: 九十九神
第一章 日常から非日常へ
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第一章 一話 ハジマリは突然に

初投稿です。できるだけ小まめに投稿していきたいと思います。


困った…… とても困ったことになっている……。

意味がわからない…… なんでこんなことになったんだ。と少女は困惑していた。


――少女にとって不可解な出来事が立て続けに起きていたからだ。


 少女の容姿はとても整っていた。亜麻色の長い髪をツインテールにしており、透き通るような白い肌をしていた。

日本人らしからぬ容姿をしているが、少女はれっきとした日本生まれ日本育ちの日本人である。


 少女の佇む場所は目の前にヨーロッパのお城のような美しい宮殿があり、その宮殿の庭園と思われる広場だった。

もちろん、少女はヨーロッパ旅行に来ているわけではない。突然この場所に移動してしまったのだ。


 ある点を除けば、そこに佇んでいる様子は絵になっているのだが、本人はそのようなことを知る由もなかった。



 少女……もとい――九条 世名(くじょう せな)は、日本人でほんの少し前まで日本にある自室で

仮想現実大規模多人数オンラインゲーム|(Virtual Reality Massively Multiplayer Online)である『World Of Twilight』をプレイしていたのである。


さらに正確に言うと、ほんの数分前まで九条 世名は日本人らしい黒髪で18歳の男子高校生であった。






――


 九条 世名(くじょう せな)は、普通の偏差値の高校に通う割とどこにでもいそうな男子高校生であった。部活動も夏で引退し進学する大学も早々と決まっていた。

そう、誰にも文句を言われることなく好きなゲームを楽しむことができるのであった。


 

彼には二つ年の離れた妹がおり、その妹もプレイしているVRMMO『World Of Twilight』を新しく始めていた。世名(せな)もゲーム好きであり様々なゲームをプレイしていたが

妹は『World Of Twilight』の廃ゲーマーで参加するイベントでは上位に必ずいるというほどであった。


世名(せな)は『World Of Twilight』を始めて、日は浅いが初心者装備を抜け出しレベルも順調に上がり楽しい時期であった。


 『World Of Twilight』は、約一年前にとある大手のゲームメーカーが発売したフルダイブ型の仮想現実大規模多人数オンラインゲーム(VRMMO)である。


 プレイヤーは専用の端末から広大な『World Of Twilight』の世界に入り、自由に好きなことができる。剣と魔法を駆使し大冒険をするも良し、多種多様なアイテム素材から装備、装飾、はては建築まで何でもできる。


 ゲームをプレイするアバターも自分で細かく作ることができる。

動きなれている自分の身体をベースに作成もできるし、一から作り上げることも可能だ。

あまりにも自分の身体とかけ離れたアバターの場合、ゲームの操作上問題が起きる場合もあるが、補助システムによりゲーム内では目立った問題は起きていない。


 また、ゲーム内では時間の進み方が現実世界とは異なる速度になっており、現実世界の十分が『World Of Twilight』では約1日


……その仕様のため、リリース初期には長時間ゲーム内にいた場合、アバターとの体格差によるギャップに苦しむことや時間の感覚がズレて姉妹時差ボケのようなことも報告されていた。


 それも最近のアップデートによりログアウト前に、一度自身の身体をベースにしたアバターで調整できる待機ルーム機能も追加されているので最近は特に問題になっていない。


 


 その日も、世名(せな)は学校からの帰宅後、すぐに自室の専用端末から『World Of Twilight』にログインすることにしていた。


「ただいま~」と世名(せな)は自宅の玄関を開けて言った。


 両親は共働きのため、部活動の無い世名(せな)の帰宅する時間には誰もいないのであるが、挨拶は基本という九条家の仕来りを守っていた。


 かんたんな片付けをしてから自室に向かい端末で『World Of Twilight』を起動しながら、 


今日は、新しいダンジョンでレベリングしようかな……いや、今ある素材で新しい装備作るのもいいな~。と世名(せな)は考えていた。




――『World Of Twilight』はログイン時には登録している街からはじまる。

いきなりダンジョンや町の外のマップからは始まらない仕様である。

例外として高難易度のダンジョンのセーフティエリアで途中から復帰することは可能だ。


世名(せな)は自身の登録していた街から始まることを想定していたが、想定していた街とは異なる場所から始まったことに気づいた。

あれ? 昨日途中で落ちちゃったんだっけ? 登録してた街と違うな……。と世名(せな)思った。


 しかし、原因は他にあった。世名(せな)今ログインしているキャラクターが世名(せな)のものではなく、廃プレイヤー妹のキャラクターだったのである。


「あー! 美零(みお)のやつ! 勝手に僕のキャラとすり替えたな! 」と世名(せな)は驚愕した。


声に出してしまったため、妹のキャラクターの可愛らしい声が周囲に響いた。


全く、僕のキャラ育ててくれるのはいいんだけど代わりに自分のをおいていくのはやめてくれないかな……と世名(せな)はため息をついた。


「お兄ちゃんのキャラも私が育ててあげるよ~! 代わりに私の『セナ』で遊んでいいからね! ね! 」

『World Of Twilight』を始めたと妹の美零(みお)に話した際に、そう言われたが丁重に断っていたのである。


すぐにログアウトして、自分のキャラクター『NULL』(ヌル)を取り戻しそうと考えた。

……彼は少し男の子的心をくすぐられるものが好きであった。若干の中二病である。


大体、僕がこんなかわいいキャラ恥ずかしくて使えるわけ無いだろ…… それになんで兄の名前と同じ名前を女の子キャラにつけるんだよ……世名(せな)はまた、ため息をついた。


イベント上位プレイヤーの美零(みお)のキャラクター『セナ』がゲーム内の記事に取り上げられているのを見て当初は自分と同じ名前のキャラが上位にいるのを少しうれしく思っていたが、妹のキャラであると知ってからは恥ずかしい思いをしていた。


「ログアぅ……」と世名(せな)がログアウトをしようとしたとき、


「あっ! あの! セナさんですよね!? 前回イベント一位の! 」

「えっ! ほんとだ! セナさんだ! すごい! アバターめちゃかわい~! 」


と数人のプレイヤーに見つかってしまった。おそらく美零(みお)の『セナ』のファンなのだろう。


「セナさんのアバターすごいですよね! どうやったらそんなに可愛く作れるんですか!?」

「いや、どうやったらセナさんみたいに強くなれますか!?というか今レベルどのくらいですか!?」


「いや、あの……」世名(せな)はグイグイ来るタイプの人が苦手であった。


「僕、『セナ』じゃないんです! ごめんなさい! 」と世名(せな)は人のいない方向へ走り出した。


――少し走り、人の少ない場所まで移動することができた。


はぁ、ようやく落ち着いてログアウトできるな……と世名(せな)は、また、ため息をつきながら思った。


「ログアウト」と世名(せな)は『World Of Twilight』からログアウトしようとした。


しかし、しばらく待ってもログアウトはできなかった。


あれ、バグかな? と世名(せな)は考え、再度「ログアウト」と音声コマンドを言った。

だが、やはり何も反応が無い。


そこでサポートに問い合わせをしよう『World Of Twilight』の機能であるメニュー画面を開こうととしたが、

「あれ……メニュー画面が開かない、」


普段メニュー画面を開くことのできる操作も、音声コマンドも何も反応しなくなっていた。


 そこで世名(せな)は仕方なく周囲の人を頼ろうとあたりを見回したが、周囲には誰もいなくなっていた。

確かに人通りの少ない場所に逃げてきたが、それでもちらほらとプレイヤーはいたはずだった。


しかし、今は周囲には誰もいない。NPCさえもいなかった。


「何がどうなってるんだ……もしかしてとんでもないバグを踏んでしまったんじゃ……」と世名(せな)は少し怖い想像をしていた。


とりあえず、なにかログアウトする方法を探す必要があると考え、顔を上げまばたきをした瞬間――



――先程いた『World Of Twilight』の街と違う場所……広い広い庭園にいたのだった。

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