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さればこそ無敵のルーメン  作者: 宗園やや
第七話
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テルラパーティは、今日も朝食を終えると同時に全員で役所に赴く。

掲示板に張られているクエストを確認し、今日も肩を落とす。


「やっぱり、いつ出発するか分からない状態だと受けられるクエストは無いね」


黒い前髪を全て上げてスカーフで止めているカレンが溜息交じりに言う。

不死の魔物の情報が入り次第退治に向かう予定なので、時間が掛からないクエストしか受けられない。

しかし、そんな都合の良い仕事はなかなか無い。

ハンターではない一般人でもクリア出来て、しかも報酬が子供の小遣い程度の物しかないのが現実だ。

お金が欲しい人は個人で受けても良いと伝えてあるのでグレイは積極的に仕事をしているが、今日は誰も受けようとしなかった。


「今日も各自自由行動でしょうか。もしそうなら、砥石を買って帰りたいのですが」


銀髪美女のレイが、パーティリーダーである10歳のテルラにお伺いを立てた。

少年は穏やかに金色の頭を縦に振る。


「勿論良いですよ。剣でも研ぐんですか?」


「将来的には自分で研げたら良いなと思って、家の包丁で練習をしようとかなと。

武具店に研ぎを頼むと結構高い上に数日帰って来ないので」


レイに続いて亜麻色の髪のプリシゥアもリーダーに許可を求める。


「私も買い物に行くっス。旅の道具の買い足しをしたいっスから。レイとは別行動になるっスが、良いっスか?」


「そちらも許可しましょう。僕は先日倒した不死の魔物の後処理を纏めた報告書を書かないといけないので、このまま真っ直ぐ帰ります。カレンとグレイも買い物に行きますか?」


赤髪にバイコーンの帽子を乗せているグレイは首を横に振ったが、カレンは数秒考えた。


「遊びで出掛けるのはダメ?」


「ダメではありませんが、旅が始まると体力もお金も使います。必要の無い出費は、今はなるべく控えた方が良いでしょう」


「それもそっか。じゃ、帰る」


「カレン。グレイ。私の代わりに、家に帰るまでのテルラの護衛を頼むっス」


「オッケー。この街は平和だから、そんなに気を付けなくても良いでしょ。大丈夫大丈夫」


プリシゥアに臨時の役目を頼まれたカレンは、気軽に返事をして請け負った。


「では買い物に行って参りますが、砥石はどこで買えるのでしょうか。どなたかご存知でしょうか」


レイの疑問に応えるのはグレイ。


「俺が弾丸を買った武具店なら、剣用の砥石が売っていると思うぞ。役所を出てあっちに行けばすぐ見付かる。ただ、包丁が研げるかは知らん。詳しくは店の人に聞け」


「あっちですね。ありがとう、グレイ」


礼を言ったレイは、王族らしい優雅な足取りで役所を出て行った。

鎧を着ていないと高貴な雰囲気を出すのがクセになっている様だ。


「私は生地屋に行くっス。買うのは全員分の雨具っスから、後から共用の財布で補って欲しいっス。まぁ、リトンの街は雨が少ない地方っスから、急いで買う必要は無いんスけどね」


プリシゥアの言葉に疑問を抱くテルラ。


「雨具ですか? 確か、僕のリュックの中に人数分入っているはずですが。それじゃダメなんですか?」


「この辺りは大陸の中央付近なんで雨が降ってもすぐに上がるっスが、山越えとかをする場合は丸一日雨が降り続ける日も有るそうなんスよ。そうなると、本格的な雨具が無いと身体に悪いどころか命に係わるそうなんス。だから念の為っス」


「それは誰から聞いた話ですか? プリシゥアは雨の多い地域の出身じゃないですよね?」


「この間この街に来た商人っス。油を沁み込ませるタイプの雨具を何十枚も買ってたっスから、不思議に思って訊いてみたんス。高価っスからね。そしたら、これから山越えをするからって教えて貰ったんス。大事な商品を守るために、荷物は特に念入りに何枚も重ねるそうなんス」


「いつの間に。しかし、それもプリシゥアの潜在能力の力なんでしょうかね」


プリシゥアの潜在能力は『猫の盾』と言う物で、手が届く範囲なら警護対象を完璧に守る事が出来る。

雨具の情報を得られたのも、きっとテルラの身を守るためだろう。


「分かりました。五人分となるとそれなりの値段になるでしょうから、領収書をちゃんと貰って来たら許可しましょう」


「了解っス。テルラとカレンのリュックを包む雨具も必要っスから、プラス二枚になるっス。じゃ、行って来るっス」


プリシゥアは、雑貨屋や服屋が有る大通りの方に向かって歩いて行った。


「僕達も帰りましょう」


テルラ達三人も、役人しか居なくて静かな役所を後にした。

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