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さればこそ無敵のルーメン  作者: 宗園やや
第三十一話
276/277

9

食事を終えると日が完全に沈み、世界は夜に包まれた。

レイが連れて来た使用人が空になった皿を全て片付けると、ゾエが食後のデザートを持って来た。

カラメルソースが掛かったプリンと、ナッツクッキーと、果物のブレンドジュースだった。


「では、魔物問題と戦争問題の解決への道筋がハッキリとした後の話をしましょう」


ロウソクの明かりを受けているテルラが言う。


「不死の魔物の残りは少ないので、ハンターギルドを設立し、大陸中のハンターに退治を任せましょう。大人数で事に当たらなければ時間が掛かりますからね。それで48種類全ての魔物が消滅したら、女神様からのお願いは達成です。世界は300年後の消滅を免れるでしょう」


「カレンの錬金術によるドラゴン復活の進展を見ながらのギルド設立になりますので、何年後になりますでしょうか。大丈夫ですか? カレン」


レイに訊かれたカレンは、プリンをつつきながら頷いた。


「私には帰る場所も約束された将来も無いからね。砂漠の中心でフォレストドラゴンのまねごとをするって役目を貰えたんだから、命を懸けて頑張るよ」


「あら? カレンって、帰る場所が有りませんの?」


レイが初耳だと驚く。


「あれ? 知らなかったの? 身辺調査とかしなかったの?」


「王城の者はしていたかも知れませんが、わたくしの耳には入っていませんでしたわ」


レイの視線を受けたテルラは首を横に振る。


「僕も知りませんでした」


「そっか。私は、本来ならゴールドドラゴンが祀られていた街に行くべき子供だったんじゃないかな。でもあの街の事は知らずに村長宅の下働きで育った。なんでそうだったのかはもうどうでもいいや。これからの事を話そう」


「……そうか。だからカレンは王族との旅をチャンスととらえて魔法を覚えようとしたり海賊になろうとしたり……」


一人呟いているグレイにテルラが話を振る。


「グレイの方はどうですか? 砂漠の東西にある無政府地域の平定は可能でしょうか。魔法が使えなくなれば単純な武力が脅威になりますので、先手を打っておかなければならないのですが」


「オペレッタはノリノリだったよ。あいつの潜在能力は善人の協力がないと発揮されないからな。リビラーナの私掠免状が貰えれば、堂々と、しかも正義の海賊出来ると喜んでいた」


「グレイはどうですか?」


「エルカノートの金で船と船員が貰えるメリットが有るから、やるだけはやるよ。他にやりたい事も無いしな。だが、無政府地域の平定は俺の世代じゃ無理だと、数十年後に諦めて裏切る可能性も否定出来ないがな」


「信頼してますよ、グレイ」


テルラの笑顔に無言で肩を竦めるグレイ。


「一番の問題は、やはりカレンですね。砂漠の中心でフォレストドラゴンのまねごとは出来るんでしょうか」


テルラに聞かれたカレンは分からないと首を傾げる。


「ルーメンからストレージって言うギフトを貰うから、砂漠の旅は大丈夫だよ。中心に着いて家を作ったら、錬金術で水や食料を作って生活しよう計画してる。ドラゴンの代わりが作れるならその程度余裕でしょ」


プリンを食べ終わったカレンはテルラを指差す。


「テルラとレイの方も心配だよ。もしもドラゴンのまねごとが出来なかったら、二人の外交で戦争を終わらせないといけないんだよ?」


「裏の計画の成否に関わらず、それは僕とレイが上手くやらなければならない仕事です。お気遣い無用です」


「その通りですわ」


金髪の少年と銀髪の美女は微笑むが、おでこを出している黒髪少女は溜息を吐く。


「ドラゴンのまねごとが上手く行って、5ドラゴンが魔力の流れを正常に戻して魔法が使えなくなった後も心配。ドラゴンの役割を隠して、砂漠の真ん中に魔法が使えなくなった原因が有ると言いふらすんでしょ? 大勢の人を騙すのって大丈夫なのかな」


「ギルド設立は王室と大聖堂両方が後援します。大勢の人を騙す為の支援ですから、絶対に成功するでしょう。そう言う事情から設立者は僕になりますが、初代ギルド長はプリシゥアに務めて貰います。不満を言うハンターを屈服させる腕っぷしも必要みたいですから」


「実務は副ギルド長に丸投げしても良いって話っスから、私はみんなより責任は重くないから気楽っスよ」


すでに全部食べ終わっているプリシゥアが気楽に笑った。


「全てが上手く軌道に乗れば、この世界は救われます。僕達の旅はこれで終わりですが、今後もやらなければならない事は山積みです。頑張りましょう」


テルラパーティの5人は、飲み掛けのジュースグラスを掲げて乾杯した。

そして、それをもってパーティ解散式の閉会となった。

第三十一話・完

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