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さればこそ無敵のルーメン  作者: 宗園やや
第三十一話
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8

大陸各地に散ってそれぞれの活動をしていたテルラ一行は、久しぶりにカミナミアの拠点に集合する事となった。

日頃から魔法通信によって活動報告をしていたので、連絡は漏れる事無くスムーズに行えた。


「おかえりなさい、グレイさん。少し背が伸びましたね」


薄い桃色の鎧の女性騎士ベリリムが豪邸の玄関を警護していた。

黒コートに黒眼帯の少女に一礼してから玄関ドアを開ける。


「二年以上ぶりだから、そりゃな。それより、来るのがちょっと早かったかな」


「そうですね、グレイさんが一番です。レインボー姫とテルラ様、プリシゥアさんはお立場も有って約束の時間ぴったりにいらっしゃる予定です」


「そうか。――部屋の整理をしろって話だったな。じゃ、部屋に居るから」


「はい」


昼を大幅に過ぎた頃にカレンが到着し、夕方に使用人数名を連れたテルラとレイ、プリシゥアが到着した。

レイの声がうるさいので、到着はすぐに分かった。

直後、グレイの部屋のドアがノックされる。


「グレイ、居るっスか?」


「居るぞ」


荷物の整理が終わってベッドで寝転んでいたグレイは、普段の癖で無意味に気配を消してドア脇に立つ。


「解散式を始めるそうなんで、キッチンに集合するっス」


「了解だ」


グレイが廊下に出てドアを閉めると、全然格好が変わっていないプリシゥアはカレンの部屋の方に行った。

ドアをノックしている僧兵を残してキッチンに行くと、テーブルに豪華な料理が並んでいた。


「久しぶりだな。二人共、元気そうでなによりだ」


上座には司祭みたいな服を着ている金髪のテルラが座っていて、次席に座っている王女のドレスを着た銀髪のレイと雑談していた。


「グレイもお元気そうで。少し日焼けしましたね」


「そうか? 気を使ってはいるんだがな」


テルラと簡単な挨拶をしながら末席に座るグレイ。

すぐにカレンとプリシゥアが来て自分の席に座った。

カレンも相変わらずおでこを出している。


「みなさん揃いましたね。では、パーティの解散式を始めます」


料理を用意してくれた老婆、ゾエ・モレルがテーブルのロウソクに火を灯した。

それを見届けてから、おもむろに口を開くテルラ。


「まずはゾエさんにお礼を。この屋敷に居る間、僕達の食事の世話をしていただき、本当にありがとうございました。お陰で旅の疲れが癒せました」


「そんな……私の方も楽しかったですよ。王女様やテルラくん、それに他の皆さんやゲストの方との触れ合いは、とても良い経験でした。こちらこそありがとうございました」


他のパーティメンバーもゾエに向けて礼を言った。


「では、冷める前に頂きましょう」


「いただきます」


若者達の食事が始まると、老婆は目頭を押さえながら奥に行った。


「さて。僕達の結果報告と今後に付いての確認をしましょう。まずは表の話し合いからです」


食べながら難しい話を始めるテルラ。


「魔法通信を使った話し合いでは、未だに着地点を見付けられていません」


続いて、レイ。


「エルカノートとランドビークの様に、大陸南側もふたつかみっつの大国になれば、戦争が終わらずとも、少なくとも戦闘は常態化しなくなるでしょう。そうなるための戦闘停止は、グラシラドの様な強国は条件付きで飲みそうなんですが、ルーメンを始めとした小国のみなさんは納得しませんでした」


グレイが訳知った顔で頷く。


「納得しなかったからこその魔物出現だしな」


「今後も根気強く話し合いは続くでしょうが、ここ以外では口が裂けても言えませんが、正直これ以上の展開は望めませんわね」


レイが肩を竦めると、カレンが苦笑する。


「みんなが予想した通りになったね。だからこそ裏で私とグレイが動いたんだけど」


「裏の方はどうですの? カレン」


「雷神様に確認したところ、ドラゴンを復活させて力の循環を元通りするのは問題無し。女神様が放置してたのは、人の歴史の一部だったから成り行きを見守っていたからだとか。だから、人の手によって歴史が動くなら何もしないだろうってさ。で、グレイ」


続いてグレイが報告する。


「俺が担当したドラゴンとの交渉結果だが、東のゴールドドラゴンはずっと祀られていたから人に対して協力的。北のシルクドラゴンはポツリに対応して貰ったが、異常気象騒動のせいで非協力的。西のシードラゴンは変わらず無反応。南のフォレストドラゴンは、ルーメンとオペレッタに探って貰ったが、やっぱり死んでるそうだ」


「裏の方としては、私とテルラが神になって南と中央のドラゴンの代わりをするのが一番話が早いんだけど――」


言いながらレイを見るカレン。

銀髪の王女は顔を引き攣らせていた。


「まぁ、テルラは大聖堂のお偉いさんになった方が後々役に立つだろうから、ドラゴンの代わりは両方共私がやるよ」


「どうやって、ですの?」


レイが訊くと、カレンは小さい魔法結晶をポケットから取り出した。


「この魔法結晶を人工的に作って賢者の石の代わりにして、ルーメンのお父さんが研究して成功させていたホムンクルスを作る。それをドラゴンの代わりとする予定。魔物問題と戦争問題を同時に解決出来るから、結局はこの反則で行くだろうね」


難しい顔をするテルラ。


「国同士の話し合いが膠着していますしねぇ。でも、大陸の守護者であるドラゴンのホムンクルス作成は神罰が下ってもおかしくない程の反則なんですよね? 大丈夫なんですか?」


「もしかすると私は神と化すかも知れないけど、ルーメンや雷神様とかと相談しながらなんとかするよ。成功すれば魔法の天才も父親が原料の魔物も生まれなくなるから、ルーメンもニッコリだし」

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