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さればこそ無敵のルーメン  作者: 宗園やや
第三十一話
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2

「さて。まだ私と敵対しますか? テルラくん。カレンさん。私は貴方達をここに閉じ込める事も出来るんですが」


「脅しですか」


ルーメンに真顔で返すテルラ。

常識外の状況に居ても落ち着き払っている様子に少々面食らったルーメンだったが、冷静な姿勢は崩さない。


「そう受け取って貰っても結構です。時には卑怯と思われる手段も必要ですから」


「否定はしません。政治には必要でしょう。ですが、僕は宗教者です。どちらかが有利になる様な交渉はしません」


テルラは淡々と続ける。


「ルーメン。貴女は自分の周りの事しか考えていません。真の解決を望むなら、僕が神になったところで何も解決しません。神は公平ですから、この状況ではリビラーナだけを贔屓しません」


「魔物を生み出し、世界に迷惑を掛けているから贔屓出来ないと?」


「僕はそう判断します。――そうですね。少なくとも周辺国、出来れば南の国のほとんどを巻き込んだ話し合いをして戦争を終わらせたら、その功績を組むかも知れませんね」


「それが無理だから逃げようと新世界を作ったんです。この世界の作り方を教える事も出来ますよ。テルラくんなら地面や空を作り出せるかも知れません」


「新世界作成は無理だと雷神様は仰いました。僕はその言葉に従います」


キッパリと断るテルラ。


「同じ無理でも達成可能な無理からは逃げてはいけません。人の世の問題は人の手によって解決すべきです。どうすれば良いか。現時点では力で他を押さえ付けるか、話し合いで協力し合うかしか手段が有りません。もちろん押さえ付けは論外ですので、話し合いすべきと言っているんです」


ルーメンはオレンジ髪を揺らして首を横に振る。


「話し合いで戦争問題が解決すると本気で思っているんですか?」


「普通は無理だから、グラシラド国等は戦力増強で他を押さえ付けようとしているんですよね。国としてはそれが正解なんでしょう。しかし、リビラーナも同じ事をしたら、どちらかが倒れない限り戦争は終わりません」


「あ、終わらないから何百年も戦争してるのかぁ」


のんきに気付きを口にしたカレンに頷くテルラ。


「でも、今の僕には女神から頂いた潜在能力が有ります。鏡に映った僕を左目で見たら、ガーネットの左目とは別の潜在能力が有りました」


自分の頭の上を指差すテルラ。

この世界に生まれた人間なら例外無く、そこには潜在能力を表す文字が浮かんでいる。


「僕の潜在能力は『女神の特別扱い。多少のルール違反なら見逃される。ただし、常に女神の監視を受けるので過ぎたルール違反は即座に神罰を受ける』と言う物です」


「多少のルール違反なら見逃される? 具体的にはどう言う事でしょうか」


「検証しないと詳しくは分かりませんが、この潜在能力が利用出来れば、話し合いでの解決も可能だと思っています」


カレンが話に入って来る。


「私も話し合いが良いと思うなぁ。気付いてる? この気配」


テルラ達は最初から気付いていたが、必死で視野が狭まっていたルーメンはここでやっと気付く。


「この包み込むような優しい気配……まさか女神様? この世界の……姉女神」


「女神様は見ていらっしゃいます。きっと大丈夫です」


テルラはお祈りのポーズを取る。

カレンは「暴言をお許しください女神様」と苦笑いする。


「本人が聞いてるだろうけど、あえて言うね。女神様は助けてくれないよ。私達は特別な潜在能力を貰ったけど、それってつまり人間の手で解決しろって事だろうし」


カレンは顎を上げ、真っ白な空を見る。


「だって、今回の旅で出会った神様は何人か居たけど、手助けするだけで実際に動くのは人間達だったし。もしも私が神と化しても、多分同じ様にただ見てるだけって態度を取らないといけないんじゃないかな」


ルーメンも真っ白な空を見上げ、眉間に皺を寄せて思考した。

数分後、溜息と共に肩を落とす。


「分かりました。話し合いの努力を致しましょう。ただし、リビラーナ王国が残るのが絶対条件ですが。それでもお手伝いして頂けますか?」


ついに折れたルーメンに頷くテルラ。


「もちろんです」

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