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さればこそ無敵のルーメン  作者: 宗園やや
第三十一話
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そこは真っ白な空間だった。

目の焦点を合わせられる物体がひとつもないので、平衡感覚が狂いそうだ。

金髪の少年テルラは何度か瞬きした後、自分の手を見た。

手にはちゃんと色が有った。

気配を感じて横を見ると、ヘアバンドで黒髪を留めておでこを出しているカレンが口を半開きにしてテルラを見詰めていた。

きっとテルラと同じ様に色が見えるかの確認しているのだろう、数秒の凝視の後に口を閉じて安堵の溜息を吐いた。


「ここは新世界作成実験の跡地です。私達が生まれた世界の外側に有る、村くらいの広さの空間です」


背後で綺麗な声がしたので振り向くと、オレンジ髪のルーメンが居た。

真っ白な空間に慣れているのか、落ち着いて話を続ける。


「例えて言うなら、宙に浮くシャボン玉にくっ付いたごくごく小さな泡みたいな、そんな場所です。ご覧の通り何も無い空間です」


「新世界作成実験……そんな事もなさっていたんですか。活用されていないと言う事は、実験は失敗だったと?」


テルラに頷くルーメン。


「空気と光以外、何も作れませんでした。神になれない人の身では、生きて行ける空間は作れても、生活出来る世界は作れませんでした」


ポケットからハンカチを取り出すルーメン。

それを落とすと、地面と思われる足の高さに到達した途端かき消えた。


「元の世界から物質を持ち込めませんでした。落としたハンカチは私の部屋に戻っています。つまり、材料を持ち込めないため、家どころか家具も作れません。当然、土もダメなので作物も作れません」


「ところで、他のみんなは?」


終始落ち着かない様子で辺りを見渡していたカレンが訊く。


「他のお三方は元の世界に残したままです。ただし、あの場に残すと父王に悪さをするかも知れませんから、それぞれの故郷に飛ばしました。転移魔法で」


表情に少しの暗い影を落として続けるルーメン。


「私の転移魔法は精度が低くて多少のずれが有りますが、多分大丈夫でしょう。空の上とか水の中とかに出る事はまず無いので安心してください。――さて、安心したところで本題に入りましょうか」

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