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ルーメンの星読みに従ってオアシスの街を渡り歩く一行。
本日到着したこの街はみっつめだが、ここでもテルラ組とルーメン組に分かれて行動する。
「……はぁ、あっつい」
商店の軒下に入って日陰で一息吐いたカレンは、買い物をしているテルラ達を眺めた。
砂漠も深くなって来たせいか、旅人向けの食料品は全く売っていなかった。
「砂漠で暮らしている人って、普段何を食べてるんだろう」
「宿屋の食事で出て来るのは果物みたいな物ばっかりっスから、それじゃないっスかね」
「家畜じゃない動物が居ないから、そうなっちゃうかぁ。お肉無しの生活は辛いだろうねぇ」
カレンは、護衛らしく商店の入り口付近で店内を監視しているプリシゥアと会話しながら通りを歩いている街の人に視線を移した。
昼間は日差しが痛いので出歩かないそうだが、用事や仕事が有る住人が居るので人通りは普通に有る。
その人達はインクを被ったのかと思うくらい肌が黒く、髪も黒い。
「人間は住んでいる地域に合わせて身体を変化させる、か。こんなところで命懸けで世代を重ねるより、さっさと暮らし易いところに引っ越せば良いのに」
錬金術の本で得た知識を呟くカレン。
それに応える者は居ない。
そうこうしている内に得る物が無い買い物が終わり、宿を探した。
「そろそろ砂漠の中心が近い様です」
テルラ達が宿に入るとすぐに日が傾き、続いて宿に入ったルーメンがそう言った。
「そこに街は無いそうですが、遺跡みたいな廃墟が有るらしいです。盗賊やら遺跡荒らしやらで何も残っていないそうですが、盗賊が根城にしている可能性が有ります。準備を怠らずに向かいましょう」
砂漠の旅の疲れでダレていた一行は、その言葉で気を引き締めた。
キビキビと部屋を取っているルーメンを見たカレンは、夕方になって人通りが多くなって行く通りの方も見て溜息を吐いた。
「故郷を守るにも新世界に行くにも、色々やらないとで面倒だって事か。そう言う意味では、テルラも故郷を守る旅をしている訳か。うーん……」
カレンは、知識が増えた事で一々細かい事が気になる様になってしまった。
しかし元々考える事が苦手だったので考えが纏まらず、一人内心でイライラしていた。