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さればこそ無敵のルーメン  作者: 宗園やや
第三話
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テルラをリーダーとするパーティは、街の出口で一旦止まった。

旅の荷物の大半は教会に預けてあるため、テルラとカレンが背負っている小さなリュックには必要最低限の道具と食料しか入っていない。


「では、これから我がパーティは初のクエストに挑戦します。内容的には危険は少なく、野宿の予定も有りません。しかし、何が起こるか分からないので、決して気を抜かないでください」


テルラの言葉に頷く仲間の少女達。


「隊列ですが、基本的には先日と同じです。グレイが加わりましたので、彼女にはプリシゥアと同じ後方を護って貰いましょう」


テルラの指示に従い、1、2、2の隊列を組む。

先頭のレイは、振り向いて後ろの4人を見る。


「もしも背後から魔物に襲われた場合、わたくしもそちらの応援に行った方が宜しいのでしょうか。先日、グレイに狙われた時、何も気にせずに隊列を崩してしまいましたけど」


「よほどのピンチにならない限り、隊列は崩さない方が良いらしいです。ただ、グレイの戦い方は狙撃なので、彼女だけは臨機応変に動いた方が良いかも知れませんね。どうですか? グレイ」


「陸の戦いは分からん。正々堂々と正面から襲ってくれる相手ばかりなら隊列を保った方が良いだろうが、相手は魔物だからなぁ」


「そうですね。変に知恵が有る魔物とかも居るらしいので、不意打ちとか挟み撃ちとかを警戒した方が良いと思いますね」


「なら俺だけは臨機応変に動く。状況や地形によっては一人で物陰に隠れるかも知れん。だからいきなり居なくなっても、どこかで銃を構えていると思ってくれ」


「分かりました。――確認です。ほどのピンチにならない限り、隊列は崩しません。グレイだけは臨機応変に動いて貰います。訂正が必要でしょうか?」


全員が首を横に振る。


「では出発しましょう」


話が纏まったので、パーティは街を護る門から外に出た。

1、2、2の隊列を組み、一昨日通った道を戻る。

そして第一の目的地点である分かれ道に着いた。


「ここからグレイが潜んでいた方に進めば良いのかしら?」


先頭のレイが訊くと、カレンが頷いた。


「うん。方向的には正しいはず。洞窟って言うくらいだから、それなりの高さが有る丘じゃないかな」


「井戸みたいな縦穴の洞窟も有るがな。それだったら見付けるのは相当難しいぞ」


グレイの一言に全員が驚く。


「え? そんなのも有るの?」


振り向いて訊くカレンに頷いて見せるグレイ。


「カレンの話によると、目的地を見付けるのは難しくないんだろう? なら、洞窟の規模は小さいだろう。多分大丈夫だ。たらればだが、大規模な鍾乳洞とかだと縦方向の入り口も有る。草むらの中の縦穴は、さながら天然のトラップだ。下手をすれば落ちて死ぬ」


「陸の洞窟にお詳しいのね。海賊なのに」


レイが正面を警戒しながら皮肉ると、反骨心を刺激されたグレイは口角を上げた。


「知らんのか? 海賊は洞窟等に財宝を隠すから、洞窟の事情に詳しいんだぞ? 元々は略奪の為に陸へ上がった時の一時的な隠れ家に洞窟が利用し易いってところから来ているんだがな。海賊の規模にもよるが、仕事で動く時は大人数になるからな」


「分かりました。では、足元にも気を付けて進みましょう」


テルラが気を引き締め、改めて一行は丘を目指した。

グレイが潜んでいた辺りは緩い坂と背の高い草しかなかったが、その奥には崖と呼んでもおかしくないくらいの裂け目が有った。


「ここを下るのかしら。命綱とか用意した方が宜しいのではなくて?」


崖を覗き込んで言うレイ。

高い所が苦手なのか、腰が引けていてかなり慎重なポーズになっている。


「ロープなんか持って来てないっスよね?」


プリシゥアに訊かれた荷物係の二人は、揃って首を捻った。


「僕のリュックにテント用のロープが入っていますが、人一人の体重を支えられるかどうか」


「そうっスね。テルラなら荷物を下ろせば大丈夫っスけど、レイは完全アウトっすね。私とカレンもギリギリっスかね」


「まぁ。それだとわたくしが一番重いみたいではありませんか」


「完全に一番重いっスよ。剣と鎧を装備しているんスから。テルラとグレイの二人なら降りられそうっスけど、二人だけなのは危ないから許可出来ないっス」


「グレイとテルラの二人だけ? ダメですわ! 絶対ダメですわ!」


「だから許可出来ないって言ってるじゃないっスか。どうするっスか? ロープを買いに街に戻るっスか?」


「学校の先生が行けたんだから、そんな難しい場所には無いと思うけどなぁ。――あ、あっちに降りられる坂が有るよ」


カレンが指差す方に坂が有った。

草に隠れていたので、パッと見では分からなかった。

幅が一メートルほどしかない坂を降りる。

左手側は岩の壁で、右手側は深い崖なので、歩くスピードは意識しなくても慎重になる。


「なに? あの地面の色」


すぐに異変に気付いたカレンが驚く。

上は草ぼうぼうなのに、坂には一本の草も生えていなかった。

それに、虹が地面に落ちたみたいにカラフルな色になっている。


「なるほど。魔法学校の先生がこんな所に来たのは不自然じゃなかった訳ですね。取り敢えず、罠の可能性は少なくなったと思います」


「これが何か分かるんですの?」


気持ち悪くて進めないレイが、納得しているテルラに訊く。


「これは魔法溜まりです。自然界に存在する魔力が結晶になる自然現象です。この結晶のカケラを持っていれば使った魔力の回復が早くなるらしいので、生徒、もしくは自分の為に取りに来たのではないでしょうか」

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