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さればこそ無敵のルーメン  作者: 宗園やや
第二十六話
230/277

8

「しかし、なんで300年なんだろうな」


オープンカフェで休憩と言うサボリをしていると、グレイがパフェを見詰めながら呟いた。

チョコとウエハースがふんだんに使われた、かなり美味しそうな奴だった。


「なにが?」


カレンは、自分の分のパフェを見ながら聞き返した。

苺と生クリームの、こちらも美味しそうな奴だった。

想像していたよりも1.5倍くらいのサイズで、少々面食らっている。

何百年も戦争している地域だが、王都民の生活はエルカノートよりも豊かな様だ。


「お前達と旅をして一年くらいだが、そろそろ魔物の本拠地だろ? 300年ものタイムリミットは要らない、と考えるのは早計なんだろうか。神は色々知ってて期間を設定したんだろうから、それくらい必要なはずなんだが」


「あー、確かにそうだねぇ。うーん……」


「ここに居ましたか。ただいま」


王城で一泊したテルラ達が、カレン達と合流した。


「おかえりー、この国の王様はどうだった? なんかプリシゥアが怒ってるみたいだけど」


「男尊女卑って聞いてたんで覚悟はしていたんスが、想像より酷かったんスよ。腐ってもレイはウチの国の王女様なんすから、もうちょっと対等に扱っても罰は当たらないと思うんスよ」


「わたくしは腐っておりませんけれども。とにかく、甘い物でも食べて落ち着きなさいな、プリシゥア。テルラも座りましょう」


プリプリしているプリシゥアと、平然としているレイと、少し暗い表情のテルラが同席した。

三人分の注文をしてから、レイが上品に銀色の髪を払って口を開く。


「この国だけではなく、南側の国の多くは女神様から御言葉を頂いた大昔の聖人を信仰する聖人教なので、女神から直接ガーネットの左目を頂いたテルラは現代の聖人扱いされました」


「聖人扱いは良いんスよ。私みたいな護衛と王女を同じ下座に座らせるのがおかしいんス。ハンターとして活動している今はテルラがリーダーだって先触れで伝えていたとしても――」


プリシゥアの声が興奮で大きくなって来たので、テルラが遮る様に落ち着いた声を出す。


「それもおかしいですが、ミマルンの三人部隊の扱いもおかしかったですね。ミマルンは王女、他の二人も貴族令嬢なのですが、王と直接会う事すら許されていませんでしたね」


一心不乱に甘味を楽しんでいたグレイは、空の器にスプーンを放った。

ガラスと金属がぶつかった高い音が鳴る。

旅の間は嗜好品を口にする機会が極端に少ないため、食べ終わっても口の中に残った美味しさで唾液が溢れそうになる。


「こっちにはこっちの常識が有る。細かい事は気にするな。で、どうなった?」


「グラシラド国内でのハンター活動は許可されました。国王直筆の許可証も頂きましたので、国内と国境付近の移動は自由です。準備が整い次第、リビラーナ王国に向けて出発します」


テルラの荷物は宿に置いたままなので、後で取りに行かなければならない。


「そちらの情報収集の成果はどうですの?」


レイが訊くと、カレンが溜息と共に肩を竦めた。


「全然ダメ。王都内以外の情報は無し。戦時中だからか、商人やハンターの移動が少ないせいっぽい。魔物も北のより狂暴な感じだし、ミマルン達がやたらと警戒していたのも納得かなって」


「港町以外のルートを商売のタネにしている商人から聞いた話では、大事な物以外の運搬は奴隷を使ったキャラバンがメインらしい。野盗に襲われても、奴隷なら殺されても被害が少ないから、だそうだ」


黒コートの下で足を組み替えたグレイがつまらなそうに続ける。


「町や村への移動でなんらかの情報を得易いのは奴隷だって事だな。奴隷はオーナーの持ち物だから、話を聞くならまずオーナーの許可を得て、って面倒な手続きが必要になる。だから、情報が表に流れない。適当に聞き回っても無駄だろうな」


「って理由で、これ以上の情報収取は奴隷相手になるかな。どうする? テルラ」


注文した三人分の甘味がテーブルに並べられた。

それを一口食べるテルラ。

普段は責任感でキッチリしている彼だが、一瞬だけ少年らしく目を細めた。


「現地であるグラシラドの王都で情報が得難いのなら、エルカノートまで届かないのは当然でしょう。だからこそ僕達は海を渡って来たのです。リビラーナ王国の国境付近まで行って、僕達の目で状況を確認しましょう」

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