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さればこそ無敵のルーメン  作者: 宗園やや
第二十三話
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8

軍の編成や街の防衛と言った組織立った行動はエルカ家に任せ、テルラ達はハンターとして今すぐ魔物を追う事にした。

この街に駐在していたハンターが居なかったので、勇者の三人だけが準備が整い次第追い掛けて来る。

話が纏まったのを聞いて安心したのか、ゴールドドラゴンは割れた山の方に飛んで行った。

本来なら伝説の竜神の登場に街の人達が浮足立つところだが、収まらない地震と無限に沸くミミズでそれどころではない。


「あの巨体に剣がどれくらい通じるか分かりませんが、なんとか頑張りましょう、ミマルン!」


「分かりました、レイ!」


銀髪の美女と黒髪をポニーテールにしている褐色肌の女が頷き合う。


「あのミミズを追い掛けるのかぁ。今日は走りっ放しだなぁ」


嫌そうな顔で肩を落としているカレンから自分のリュックを返して貰うテルラ。


「ミミズが相手では、プリシゥアの体術は効果が薄いでしょう。今回の魔物は不死の魔物だけ倒せば良い訳ではなさそうですので、足が遅い僕達は置いて、レイとミマルンは先行して魔物の足止めを。決して無理をしないでください」


「了解ですわ!」


レイとミマルンは一旦下町に出てから南へと向かった。

下町もミミズだらけで、ハンターになる前の普通のお姫様だった頃なら、気持ち悪い風景に目を覆っていただろう。

足の踏み場も無いので、仕方なくミミズを踏み付けて走る。

踏んだ拍子に滑って転ばない様に気を付けなければならないので、全力は出せない。


「思ったより巨大ミミズは足が遅いですね。容易に追い付けそうです」


ミミズも樹木が無く平らな方が進み易いのか、山を下りて平原でうねっている。

街を出ると小ミミズが居なくなったので、ミマルンは愛用の曲刀を抜いて走りながら精神統一をする。


「はあぁああぁッ」


飛び上がったミマルンは、直径が人間の身長の二倍か三倍くらい有りそうなミミズを切り付けた。

その一振りでミミズが真っ二つになった。


「ミマルンが本気を出すと途轍もないですわね。魔法を使えないとおっしゃっていましたが、刃渡り以上の距離を切っていますので、何らかの力は持っていそうですわ」


バスタードソードを抜いたレイは、切られて断末魔の痙攣をしているミミズを踏み台にして二匹目のミミズに飛び掛かった。


「わたくしは地道に切るしかありませんけどねッ」


舞う様なジャンプを繰り返しながら何度も何度も切り付けるレイ。

体内に金塊が有って、それに刃が当たって手が痺れるのも倒すのに時間が掛かる要因になっている。

体液が全く無いから刃が滑らず、服が汚れないのは助かる。


「おっとっと。ミミズでも痛みが有るのか、結構暴れますわね。知能が無いのか、こちらを攻撃して来ないのが救いですわ」


「レイ! 無理をなさらずに!」


少し離れた位置に居る三匹目に飛び掛かるミマルン。

ゴールドドラゴンが空から降りて来て、四匹目を踏み付けた。

鋭い牙でミミズに噛み付き、持ち上げては思いっきり地面に叩き付ける。


「自分で倒せるならテルラを誘拐せずにさっさと倒せば宜しいのに」


やっとミミズを倒したレイがドラゴンの方を見る。

ゴールドドラゴンはミミズの身体を短い腕で切り裂き、出て来た金塊を食べた。

そうやっていくつかの金塊を食べた後、また金山の方に飛んで行った。


「あのドラゴンは神様です。私達人間には理解出来ない、何らかの事情が御有りなのかも知れません」


肩で息をしているミマルンがゴールドドラゴンを見送っている。

朝から走り詰めだったので、レイもミマルンもさすがに体力が尽きた。


「ミミズは後二匹ですか。足も遅いですし、残りは勇者と街の兵隊に任せましょう」


ミマルンは、自分が切ったミミズの死体の上に座った。

激しい運動をしたせいで汗が滴り落ちている。


「そうですわね。ここの四匹が生き返る様子は伺えませんので、不死の魔物ではありません。テルラの到着を待ちましょう」


真っ二つになってもしぶとく動いているミミズに剣を刺し、それにもたれ掛かるレイ。

その目には、下町からこちらに向かって来るテルラ達三人が映っていた。


「はぁ、はぁ……テルラが無事で、本当に良かったですわ……」

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